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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
30/97

30.走れ!

「…」

 ロザリーが、全然喋らない。オレンジの服をアンドリューに買ってもらってから、ずっと…

 そんなに、センスないかしら?結構、似合うと思うんだけどなあ…

「クレイグ。ロザリーの服、変だと思う?頑張って選んだんだけど…」

「…かわいいよ?すっごく、かわいい…」

 クレイグが口元を緩めながら、口ごもる。お熱みたいね。


「サラ。お前、馬乗れるか?」

「アンドリュー…私、幽閉されていたんだけど?」

「ああ。そうだった…」

 そう呟きながら、彼が馬を私の方に連れてきた。そういえば、彼は馬借屋やってるんだっけ。


「じゃあ、無理してでも、乗れるようになれ」

「え…!?」

「当たり前だ。俺がサラを乗せて行ってもいいが、そんなに速く走れない。下手したら、落とすかもしれない」

「…」

「一人一頭で乗ってもらう。逃げ切るための術だ。…しょうがない」

 私は、そっと馬に手を差し伸べた。急にブルブルと唸り、私はすぐに手を引く。嫌われてるの…?

「ウォルって言うんだ。人見知りするが、結構お前と似ていると思うぜ?」

 アンドリューがキラキラとした笑顔を、私に向ける。馬と似てるって…どういうことよ。


「ウォルくん。ごめんね。ちょっと重いかも…」

「ウォルは、女だぞ?」

「…」

 ブルブル!

 …今、絶対怒られた。無茶苦茶怒られた!


「ウォル。お前は賢いんだろ?だから、こんな天然お嬢様ぐらい、簡単に乗せられるよな?」

 アンドリューのイケメンフェイスのおかげか、ウォルさんはすぐに機嫌を直す。…もしかして、私、ライバル化しちゃった?

「ウォ、ウォル…さん」

 ブルブル!

 きゃ、きゃあぁぁぁ!!



 ゆらゆら揺れながら、私達は都に向かう。

 ロザリーも初めての乗馬のはずなのに…クレイグとケンカしながら行けるぐらい、余裕があるみたい。本気で、裏切られた気がするわ。

 そして、ウォルさん。わざと腰を振って、落ちたらいいのに…と思っているような態度。アンドリューが私に声をかけたら、もっと腰を振るし…喋らせないようにしているわ。


「おい、クレイグ。どっちの道に行くか?」

「んー。左の方は早いけど、道が細い。そして、右は遠いが、大きな道…」

「なのに、矢印は左だけ…どういうことだ?」

「さあね」

 アンドリューとクレイグが、馬から降りた。クレイグの地図と、目の前の道を見比べる。


「これ、いつの地図?」

「あのバックから出てきた時点で、察してくれ…」

「…」

 アンドリューが頭を抱える。そりゃそうよね。クレイグは宿場経営をしているもん。今は彼の家族に任せているらしいが、宿場をしている人は、めったに旅に出ない。


「もういい。こっちに行くぞ」

 アンドリューが選んだのは、ちょうど馬三頭通りそうな道。なんとなく、安全そうに見える道。

 その道を、私達は歩いていく。



「…わかるか?」

 アンドリューの声に、一瞬で空気が凍る。

「ああ。しかも、人間じゃねえ。多分、バンパイアでも…」

 クレイグが、小さく舌打ちをする。人でも、バンパイアでもない…?じゃあ、何に?


「逃げるぞ!」

「え!?ちょ、ちょっと待って!」

 すると、アンドリュー達が急に走り出した。でも、ウォルさんは、全然走ってくれない!

「お、お願い!早く走って!」

 しかし、彼女はすねて走ってくれない。

「お願い!あなたの身も危ないのよ!」

 …無視。ばかなの!?この子!?


 …ぞわり。

 な、何!?

 私は、恐る恐る振り返る。


「大きな…黒い犬?」

 そう呟いた瞬間、ウォルが暴れ出した。私は、手綱を放しそうになる。

「ばか!そいつは、狼だ!」

 狼…!?

 私は、ウォルさんから落とされてしまった。い、痛い!

 すると、ウォルさんが、私のことをじっと見た。何よ…いい気味なの!?

 と思ったが、そうじゃないみたいだ。ずっと、その場から動かない。ウォルは、私が乗るのを待っているみたいだ。

 しかし、狼は、私を狙っている。彼女を逃がさなきゃ…!


「ウォル。早く逃げて!」

 私は、近くの木の棒を持って振ってみるが、全く意味がない。

 ジリジリと近づいて…ガブ!

 嚙みつこうとしたところを、間一髪で避ける。

 …大変。これ、私死んじゃうかも…


 ブロロロロ!


 後ろから何か聞こえたかと思うと、ウォルが私に向かって突進してきた。ウォル!?

 すると、ウォルは急に頭を低くし、私の身体を首一本でふわっと浮かす。

 ヒヒーン!

 私が綱を持つ暇もなく、ウォルは走り出した。私は、落ちそうになるのを、必死に抑える。


「ウォル!早く来い!」

 アンドリューの叫びに、ウォルも答える。

 ちょっと待ってよ。この状況を見ても、その言葉を言いますか!?

 …気絶しそう。

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