29.リスタート
ひづめの音が変わった。疲れ切って眠っていた私は、ぼんやりとしながら顔を上げた。
眩しい…!すこし目を閉じて、またゆっくりと前を向いた。
…久しぶり。私の好きな、喧騒。
「サラ様は、相変わらずばかですね」
「…」
クレイグの宿場につき、一息した瞬間にこの言葉。
さて、問題です。今のセリフは、誰が言ったでしょうか?様が付いている時点でわかると思うけど、違うと信じたいよね?でも…残念でした。
私は、ロザリーのセリフに、開いた口が閉まりません。
「ばかってのは、言い過ぎだろ?」
「いいえ。というか、アンドリューさんもばかですよね?」
「…」
彼は拳を震わせながら、ロザリーを思いっきりにらみつける。
ああ…犬猿の仲としか言えないわね…
すると、クレイグがカバンの中に色々入れだした。
「でも、ロザリーの言う通りだよ。あちらは、太陽が登っている間、行動できない。だから、さっさとここから逃げるべきだ」
「でも、もう…」
「来ないとは限らないだろ?」
…なんだか、クレイグに言われるのは、ちょっと不服だわ。真剣な顔して。
でも、正論は正論。従うべきだわ。
「わかった。すぐに、ここから逃げましょう」
私が、いい?というようにアンドリューを見ると、彼はため息まじりに、頷いた。
「じゃあ、都に行こう。そこなら、人も多いし、隠れやすい。…しかも、銃士隊がいる。俺とクレイグでも、サタンをちょっと気絶させる程度しか力がなかった。銃士隊に入って、もっと強くなれば…サタンを倒せるかもしれない」
「おいおい。それって、俺もなのか?」
「そりゃそうだ」
「マジシャ…」
「センスない。やめとけ」
アンドリューは、あまりにもバッサリと彼の意見を切った。クレイグのダメージが酷そう…
「さあ。支度だ」
…彼は、クレイグのことを、一切気にしない。
簡単に身支度を整え、私達は宿場から出発した。が…
チリンチリン。
可愛らしい音が、店内に響いていく。
都に行く前に、私達は服屋に寄った。目の前に広がるたくさんの色達に、私は圧倒される。
「サラ。可愛い服、買ってやるよ」
「でも…」
「勘違いするな。ただ、そのままの服じゃ、まずいと思っただけだ。」
そんな風にアンドリューが言うけど、その表情は危機が迫っているような重々しい顔ではなく、もっと優しい顔だった。…甘えても、いいかな?
「私、これがいい」
ずっと着たことがなかった。憧れていた、水色の服を指さした。アリスみたいな…かわいい服。
「了解」
アンドリューが買っている横で、ロザリーが…違う意味で駄々をこねている。
「いやです!私はこれ以外着たくありません!」
「ロ、ロザリー…メイド服で都に行きたいのかい?」
「はい!だって私は、サラ様の…」
「結婚式にトマト祭り乱入した時点で、もう解雇だ!」
…始まった。クレイグVSロザリー。だめだこりゃ。
歯ぎしりしながらにらみ合っている二人を無視して、アンドリューが二着分のお金を出した。
「あの子の分も、適当に選んで」
彼は優しいんだか、そうじゃないのか…?
私は、もう一度、服を探しに行った。




