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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
都へ
29/97

29.リスタート

 ひづめの音が変わった。疲れ切って眠っていた私は、ぼんやりとしながら顔を上げた。

 眩しい…!すこし目を閉じて、またゆっくりと前を向いた。

 …久しぶり。私の好きな、喧騒。



「サラ様は、相変わらずばかですね」

「…」

 クレイグの宿場につき、一息した瞬間にこの言葉。

 さて、問題です。今のセリフは、誰が言ったでしょうか?様が付いている時点でわかると思うけど、違うと信じたいよね?でも…残念でした。

 私は、ロザリーのセリフに、開いた口が閉まりません。


「ばかってのは、言い過ぎだろ?」

「いいえ。というか、アンドリューさんもばかですよね?」

「…」

 彼は拳を震わせながら、ロザリーを思いっきりにらみつける。

 ああ…犬猿の仲としか言えないわね…

 すると、クレイグがカバンの中に色々入れだした。


「でも、ロザリーの言う通りだよ。あちらは、太陽が登っている間、行動できない。だから、さっさとここから逃げるべきだ」

「でも、もう…」

「来ないとは限らないだろ?」

 …なんだか、クレイグに言われるのは、ちょっと不服だわ。真剣な顔して。

 でも、正論は正論。従うべきだわ。


「わかった。すぐに、ここから逃げましょう」

 私が、いい?というようにアンドリューを見ると、彼はため息まじりに、頷いた。

「じゃあ、都に行こう。そこなら、人も多いし、隠れやすい。…しかも、銃士隊がいる。俺とクレイグでも、サタンをちょっと気絶させる程度しか力がなかった。銃士隊に入って、もっと強くなれば…サタンを倒せるかもしれない」

「おいおい。それって、俺もなのか?」

「そりゃそうだ」

「マジシャ…」

「センスない。やめとけ」

 アンドリューは、あまりにもバッサリと彼の意見を切った。クレイグのダメージが酷そう…


「さあ。支度だ」

 …彼は、クレイグのことを、一切気にしない。



 簡単に身支度を整え、私達は宿場から出発した。が…

 チリンチリン。

 可愛らしい音が、店内に響いていく。

 都に行く前に、私達は服屋に寄った。目の前に広がるたくさんの色達に、私は圧倒される。


「サラ。可愛い服、買ってやるよ」

「でも…」

「勘違いするな。ただ、そのままの服じゃ、まずいと思っただけだ。」

 そんな風にアンドリューが言うけど、その表情は危機が迫っているような重々しい顔ではなく、もっと優しい顔だった。…甘えても、いいかな?


「私、これがいい」

 ずっと着たことがなかった。憧れていた、水色の服を指さした。アリスみたいな…かわいい服。

「了解」

 アンドリューが買っている横で、ロザリーが…違う意味で駄々をこねている。


「いやです!私はこれ以外着たくありません!」

「ロ、ロザリー…メイド服で都に行きたいのかい?」

「はい!だって私は、サラ様の…」

「結婚式にトマト祭り乱入した時点で、もう解雇だ!」

 …始まった。クレイグVSロザリー。だめだこりゃ。

 歯ぎしりしながらにらみ合っている二人を無視して、アンドリューが二着分のお金を出した。


「あの子の分も、適当に選んで」

 彼は優しいんだか、そうじゃないのか…?

 私は、もう一度、服を探しに行った。

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