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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
チェンジ
25/97

25.トマト祭り

「あっれー?結婚式と聞いていたのだが、これじゃあ、まるで葬式だ。ひどいねえ」

 そう言いながら不敵に笑うと、クレイグは少しかびた燕尾服を翻した。

 私は、名前を呼ぶのを、間一髪で抑える。これって、もしかすると…ロザリーが何か知っているの?

「こんな黒ばかりなら、僕の服はもっと奇抜な色の方がよかったかな?」

 そして、上着を脱ぎ、闘牛士のように、両手でばさりと音を立たせた。持ち上げた服から覗く彼の目が、ダイヤモンドのようにキラリと光る。


「美しき花嫁へ。僕からのプレゼントを受け取ってくれるかい?」

「皆の者。やつは、わしの城に不法進入した男だ!とりおさえろ!」

 ルシフェル伯爵は、勘違いしている。この人は、クレイグよ!アンドリューではないわ!

 そう叫ぼうとした瞬間、クレイグの声に遮られた。


「レディース・アーンド・ジェントルマン!さあ。赤い血しぶきを!」

 な、なんでそんな不吉なことをっ!


 そう思った瞬間、彼の燕尾服から真っ赤なボールが、宙に舞う。あれって…と、トマト!?なんで、トマト!?なんで!?

 その赤の軍団達は、天井の近くまで飛んだあと、急にここが地球だったと思い出したかのように、私達の方に出撃してきた。

 悲鳴と歓喜が入り混ざる。落ちてきたトマトが痛そうだけど、赤い血に似た液体が頭にふっかかって、興奮しているのだろうか?

 この喧騒に乗じて、次々と召使い達が入って来る。片手には、熟したトマトをバスケットに入れて。


 そうして、トマト祭りが始まる。投げて、投げて、投げて。べちょん、ばちょん、けちょん!

 …全員、解雇決定ね。私は、片方の口角をピクピクさせる。

 しかし、隣にいるサタンが、急に私のことを守るように…いや、私が逃げないように、ぎゅっと抱きしめた。

「早く…!早く捕まえろ!オディールをとられるぞ!」

 血相を変えて、彼は叫ぶ。いくら大好きな赤色でも、こんなに無差別にやって来られたら、怒りを隠せないのだろう。

 サタンが少し爪を噛むと、私をちらりと見た。


「いっそのこと、今すぐお前を俺のものにしてやろうか?」

 大きな牙が、私の顔の色を変えていく。

「それは、無理さ。俺が…彼女のナイトがいるからね」

 …ない…と?

 そのときだ。光が差し込んだように見えたのは。

 そして、彼はローブをすっと外した。トレードマークの緑の服が覗く。ニア神父から現れたのは、私が最も会いたい人物だった。


「このアンドリューがいる限り、サラは絶対渡さねえ」


 サタンの首に、アンドリューの真っ直ぐな剣が、向けられる。

「…へえ。不法進入者って、お前のことか?」

「失礼なことを言うな。俺は道に迷っただけだ」

 …いや。不法進入者には、変わりないと思うが…


「黙ってサラから手を離せ」

「はっ!バカな。こいつは、俺の嫁だ。だいたい、この女の名は、オディールだ。間違えるな」

「間違えているのは、お前だっ!」

 その瞬間、アンドリューの手から、一つの赤い実が放り投げられた。ちょうど、彼の金髪の上に、赤が塗られていく。

 …彼のこめかみで、恐ろしいほど怒っていることがわかる。

 アンドリュー、彼はバンパイアなんだよ!そうそう簡単に、ケンカを売ってはいけないの!

 その心からの叫びは、かき消されてしまう。


「邪魔だっ…!」

 サタンの手が私から離され、アンドリューと対峙する。彼は牙を剥き出し、アンドリューが剣を構える。


「…なーんてね」

 アンドリューがふっと笑うと、私は誰かに背中から掴まれた。真っ赤な袖だけど、この服は…召使いの!?

「オディール様。行きますよ!」

「…!?」

 ロザリー!ロザリーなのね!

 そうホッとした瞬間、自分の身体が、すっとどこかに落ちた。お、落ちた!?

「きゃあーーーーーー………」

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