16.再会
「オディール様。晩餐…」
「食べたくない!」
私がヒステリックに叫ぶと、マリオンは大きくため息を吐いた。
「オディール様…!これで三日目ですよ!そろそろちゃんと食べないと、餓死してしまいます!」
「…それはそれでいいんじゃない?」
「オディール様!」
私がそっぽを向いて、膨れていると、マリオンがそよ風のように出て行った。
一応だけど、私は三日もずーっと食べてない訳ではない。ロザリーが、パンなりサラダなり、一応ちゃんと持ってきてくれる。
そんなことより、考えなきゃ…
私は、伯爵により、必ず辛い目に遭う。でも、これは、私だけの問題じゃないんじゃないのか?糖分がまわってない、干からびた脳で必死に考えた。
そもそも私に選択肢は、いくつあるのか…
一つは、事実を受け入れ、バンパイアと結婚する。でも、その場合、私は拷問される可能性が高い。他の魔術なら問題ないが、拷問されちゃったら…アンドリューの名前を出してしまうかもしれない。
二つは、マリオンがさりげなく促している、ここから逃げること。でも、その場合、召使いのみんなはどうなるの?ロザリーは、私のために、一緒に逃げてくれるかもしれない。でも…マリオンは、きっとここに残る。時間稼ぎと、私達を守るために…
どちらでも、私じゃなく、誰かが傷つくことが決まっている。
もう…どうすればいいのよ。
「オディール様?」
キーっと音を立てながら、ロザリーが部屋に入ってきた。両手で皿が乗ったトレーを、持っている。
「ありがとう。ロザリー」
皿を机に乗せた後、ロザリーは私に駆け寄った。
「オディール様。大丈夫ですか?」
ロザリーの優しい声に、私はなぜか何かがぷつりと切れてしまった。
「大丈夫な訳ない!どうしたらいいのよ!こんな、こんな…」
涙を流してしまう私は、ロザリーを視界の隅で見つけ、ハッとした。
困った顔で…彼女は私を見つめる。
そんな風に見られている自分が、心からみじめに見えて、怒りが増幅した。
「出て行って…出て行って…!」
「オ、オディール様!?」
私は彼女の背中を押し、部屋から無理矢理追い出した。
「う、う…うわぁーー!…ああ!」
私はドアを叩きながら、ずるずると服を擦り、座り込んだ。
泣き止むと、私はフラフラと歩きながら、八割ほど眠った頭で窓へ歩き出した。今日は、月が出ていない。新月なのだろう。
ふわふわしながら、何かに取り憑かれたかのように、窓をゆっくりと開けた。錆びた音が部屋に響き渡る。
クリスマスぶりね。と思いながらフィルター無しで見る空は、とても真っ暗なおかげで、星がとっても綺麗だった。
「流れ…星?」
すっと流れていった星は、もう落ちてしまったのに、私は思わず両手を握り締めた。
「神様…お願い。私に、みんなが幸せになれる方法を…教えて!」
ふらりと私の重心が崩れた。
空と地面が逆さになって、重力に私は引かれていく。
「アンドリュー…!」
意識が暗闇とともに消えていく。
「おい。サラ。起きろよ。まさか、死んじまったのか?」
彼の声に私は答えたくても、答えられない。
「息はあるな…おい。しっかりしろ」
私は、冷たい何かが頬に当たった。次に反対の頰。そして、おでこがヒヤリと冷たくなる。
私の頭が少し持ち上がり、彼のカバンの上に乗せられると、これは夢じゃないの?と、彼の顔を見た。
「アンドリュー…?」
アンドリューの緊張が、やっと解けた。
「…ばーか」




