13.さよならの約束
アンドリューは、教会の近くにそびえる、塔の上に案内した。ちょうど、教会の鐘と同じぐらいの高さで、今更ながら、鐘のクオリティーの高さに圧倒される。
ただ単に古いのではなく、誰かが拭いたり、手入れした跡がよくわかる、温かみのある鐘だった。
「君は、本当にばかだね」
「…?」
不意に発された言葉が、まさかの「ばか」。今から詫びる人間なの!?この人!
でも、アンドリューの目は、悲哀に満ちた目で、そんな目を持っている彼からあのセリフが出できたとは、到底思えなかった。
「こんな夜に、こんな日に…知らない男に誘われても、ついて行っちゃダメじゃないか。君の伯爵さんから聞かされていなかったのか?」
「アンドリュー…?」
「ごめん。聞かなかったことに…」
「アンドリュー。どういう意味?」
「…」
アンドリューは何も答えないまま、しばらく空を眺めていた。何もない、暗い闇を。
すると、急に夜空が明るくなった。アンドリューが、「花火だ…」と、呟いた。
立て続けに起こる爆音に、私は思わず耳をふさぐ。
でも、景色は最高だった。いろんな色、いろんな形の花が空に咲く。
「…せに…れ」
「え?」
私が大声で聞き返すと、アンドリューが私の前に跪いた。
彼の目は、ほんのすこし、潤んでいた。
「俺、アンドリューは!君を助けられない!幸せのない結婚を止められない!」
アンドリューの叫び声が、教会の鐘と反響しているように聞こえた。
やっと、太鼓に似た音が止むと、アンドリューが肩で息をしながら立ち上がった。
「だけど、自分で頑張って、幸せを探して。俺、今日一日で、サラに幸せの探し方、なんとなくでもわかるように教えたつもりだから…」
そう言うと、彼のポケットから、小さな茶色の袋を取り出した。
「目を閉じて」
彼の言葉通りに目を閉じると、袋から何か取り出すような音がした。アンドリューが私の後ろに周り、そっと私の髪を持ち上げた。
アンドリューの香りに、一瞬ドキッとした。あれ?今の…何?
「はい。目を開けて」
目を開けると、私の首にネックレスがつけられていた。チャームに小さな花がついていて、シンプルでとても可愛らしかった。
「かわいい!ありがとう、アンドリュー!」
「だろ?そのネックレスをいつもつけていて。そして、それを見るたびに思い出して。街で出会った変な男が、『幸せを忘れんな』って言ってたことを」
彼がすこし口をゴモゴモさせながら、恥ずかしそうに言った。その姿が、なんとなく可愛くって、思わず笑ってしまう。
「さあ。もう、帰る時間だよ」
「ええ…」
「どうかした?」
私は、うじうじしながら、子供のように彼にお願いした。
「今日、私誕生日なの。だから…その…」
アンドリューが察したのか、笑顔で私の頭をポンポンと叩いた。
「お誕生日、おめでとう。サラ。そして、さよなら」
アンドリューが何かをこらえるように、唇を噛んだ。
「できれば。ううん。必ず会おう」
その瞬間、アンドリューの姿が、また重なった。でも、それはパパじゃない。
はっと、私の脳裏に、ある声がした。
『できれば。ううん。必ず会おう』
同じ言い回し。同じ抑揚のつけ方。聞いたことが…ある。そう私が頭を悩ませているのに、彼は満面の笑みで、私の手を引いた。
ねえ。君は…誰?
広場に戻った時、あたり前だが、ロザリーに過去に前例がないほど、怒られた。彼女、マリオンに似てきたかもしれない…と言ったら、私としばらく口を利いてくれないだろうから、私は沈黙&笑顔を貫いた。
また、アンドリューからもらったネックレスは、服の中に隠していた。見つかったら、ロザリーの雷が…とも思って、そちらも黙っている。
また行きと同じ方法で、私とロザリーは城に戻った。
部屋に戻ると、中に誰もいないからか、真っ暗だった。寝ちゃったのかしら…?
そう思ってライトをつけようとすると、急にろうそくの火がついた。みんなの顔の下から、火を照らす。季節外れのホラーに見えて、私の血がすーっと冷めていくのが感じられる。
「な、ななななな、なんなんですか!これは!?」
ロザリーが、壮大に腰を抜かした。あ、おろおろロザリーだ。お久しぶりです。
すると、またまた急に爆発音がした。花火よりは、小さい音だが。
「さあ、誕生日のしきり直しですよーオディールさまぁー!」
「…」
私とロザリーは、声を出さずに、意思疎通した。
…マリオンおばさん、お酒入ってる!
「オディールさまぁ。どぅーでしたか?初めての街わぁ」
「え、ええ。とても良かったわ。新しい友達もできて、とっても」
「そーでっすかぁー」
マリオン…キャラおかしい。
さっき、ほかの召使いに聞いたけど、マリオンはシャンパンを間違えてテキーラを飲んでしまったらしい。…あの人の言うこと、もう聞けないかもしれない。
「で?運命のひとぉーとかは?」
「運命?わけのわからないことを…」
「あらー。幽閉された少女。初めての街。恋のなぁーんにも起こらなかったんでーすかぁ?」
…え?恋?
「マリオンさん。やめてください。お嫁に行く女性に、好きな人ができたとなったら、大変ですよ」
ロザリーが、マリオンから私を引き離した。
そんなことより…私はマリオンのセリフが気になっていた。恋…ってなんだっけ。本で読んだことはあるが、それは、人の価値観において感じられた恋。私が感じる恋ではない。
じゃあ、恋って何?何…だっけ?
最後のクリスマス編、終了しました!
たくさんのアクセス数で、毎日嬉しかったです!
えー、いつかの活動報告あたりで、キャラ設定が薄い!と思ったので、ほーんの少ししか変わっていませんが、前回の書き足しをしました。
そして、読みやすくするため、行間を作ったりしたので、もしよければ見てください。
次回から、サラが伯爵に対抗しだします。
あまり書いていなかった、伯爵について、詳しくいきたいと思います!
では。
Bye, see you next story...




