12.ダンス…なんて嫌い
…助けてください!
私は心の奥底から、本気で願った。こんな下手な踊り、見ないでよ!
…という願いは、神様の目の前で弾かれたのか、たくさんの人間の視線が突き刺さる。
それもそのはず。アンドリューは、たくさんの女子の誘いを断って、私と踊っているのだ。目の敵にするのはしょうがない。しかも、私は変なマジックに参加しちゃったんだ。街のほとんどの人が、私の顔とバカなのはわかっている。
そこで、ダンスが上手かったらよかっただろう。
下手だ。私は、ド下手なんだ!
というか、ダンス自体、よくわかっていない。これは、女子としてどうなのか…?
さっき、かっこつけて、アンドリューの誘いを受けた私が恥ずかしい…
「サラ。肩の力抜いて。恥ずかしいかもしれないけど、俺がいるから大丈夫」
…ほら。彼は完全に誤解している。
これは、緊張のせいじゃない。本当に踊れないのよ…
「右。左。ターン。わかるでしょ?」
「…わからない」
「え?」
「私、踊れないの!なのに…」
私が真っ赤になって話すと、アンドリューがさっと腰に手を回した。
「え?ちょっ…」
「大丈夫。音楽を聴いて。あとは、俺の動きに合わせて」
そんな無茶な…と思ったが、アンドリューは私を上手にリードする。私は必死に音楽を聴いて、必死に彼に合わせた。
「う、うまくいってる?」
「ああ。ちょっと、失礼」
「え?」
すると、アンドリューが急に私を持ち上げ、くるりと一回転する。思わず、声にならない声を出してしまった。
「ちょっと!やめてよ!」
「すまない」
その瞬間の彼の笑顔に、私はハッとした。キラキラしていて、何かわからない美しい風が吹いて…
一瞬。たった一瞬だけ、世界が春になったような気持ちになった。全てが美しくなり、全てが…新しくなったような。
やったことのないダンスなのに、とても楽しい。彼の魔法に、かかっちゃったみたいで。
でも、なんだかアンドリューに負けたような気分になってしまい、少しふてくされてみる。
「そんな顔して。せっかくのダンスが台無しだぜ?」
「お世辞はよしてよ…」
「はいはい。もう、終わりだから、許してくれ」
彼が頭を下げると、私も一瞬で周りがスカートを持ち上げているのを理解して、同じようなポーズをとった。
「サラ。手」
…犬じゃないわ。とふてくされながら、私は彼の手のひらにお手をした。
「アンドリューって、変な人。急に紳士ぶって、逆に怖いわ」
「そうか?まあ、俺も女性をダンスに誘ったの、初めてだからさ。どういう風に声をかけたらいいか、わかんなくて」
「その割には、上手だったわよ。」
「嫌味?」
「そうだけど?」
私の即答が面白かったのか、彼は全然嫌味を言われた人のような顔をしなかった。
「なあ、サラ。ロザリーさんって…」
「あれ?どこにいるのかな?」
そう呟いた瞬間、彼は私の腕を強引に引っ張った。彼は私の耳に顔を近づけた。
「お詫びの品、渡したいんだ」
小さな声で彼が言うと、クスリと耳元で笑った。
「また、ロザリーさんを巻かない?」




