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黒から私は色を作る  作者: 西川 涼
最後のクリスマス
12/97

12.ダンス…なんて嫌い

 …助けてください!

 私は心の奥底から、本気で願った。こんな下手な踊り、見ないでよ!

 …という願いは、神様の目の前で弾かれたのか、たくさんの人間の視線が突き刺さる。


 それもそのはず。アンドリューは、たくさんの女子の誘いを断って、私と踊っているのだ。目の敵にするのはしょうがない。しかも、私は変なマジックに参加しちゃったんだ。街のほとんどの人が、私の顔とバカなのはわかっている。

 そこで、ダンスが上手かったらよかっただろう。

 下手だ。私は、ド下手なんだ!

 というか、ダンス自体、よくわかっていない。これは、女子としてどうなのか…?

 さっき、かっこつけて、アンドリューの誘いを受けた私が恥ずかしい…


「サラ。肩の力抜いて。恥ずかしいかもしれないけど、俺がいるから大丈夫」

 …ほら。彼は完全に誤解している。

 これは、緊張のせいじゃない。本当に踊れないのよ…


「右。左。ターン。わかるでしょ?」

「…わからない」

「え?」

「私、踊れないの!なのに…」

 私が真っ赤になって話すと、アンドリューがさっと腰に手を回した。

「え?ちょっ…」

「大丈夫。音楽を聴いて。あとは、俺の動きに合わせて」

 そんな無茶な…と思ったが、アンドリューは私を上手にリードする。私は必死に音楽を聴いて、必死に彼に合わせた。


「う、うまくいってる?」

「ああ。ちょっと、失礼」

「え?」

 すると、アンドリューが急に私を持ち上げ、くるりと一回転する。思わず、声にならない声を出してしまった。

「ちょっと!やめてよ!」

「すまない」

 その瞬間の彼の笑顔に、私はハッとした。キラキラしていて、何かわからない美しい風が吹いて…

 一瞬。たった一瞬だけ、世界が春になったような気持ちになった。全てが美しくなり、全てが…新しくなったような。

 やったことのないダンスなのに、とても楽しい。彼の魔法に、かかっちゃったみたいで。

 でも、なんだかアンドリューに負けたような気分になってしまい、少しふてくされてみる。


「そんな顔して。せっかくのダンスが台無しだぜ?」

「お世辞はよしてよ…」

「はいはい。もう、終わりだから、許してくれ」

 彼が頭を下げると、私も一瞬で周りがスカートを持ち上げているのを理解して、同じようなポーズをとった。


「サラ。手」

 …犬じゃないわ。とふてくされながら、私は彼の手のひらにお手をした。

「アンドリューって、変な人。急に紳士ぶって、逆に怖いわ」

「そうか?まあ、俺も女性をダンスに誘ったの、初めてだからさ。どういう風に声をかけたらいいか、わかんなくて」

「その割には、上手だったわよ。」

「嫌味?」

「そうだけど?」

 私の即答が面白かったのか、彼は全然嫌味を言われた人のような顔をしなかった。


「なあ、サラ。ロザリーさんって…」

「あれ?どこにいるのかな?」

 そう呟いた瞬間、彼は私の腕を強引に引っ張った。彼は私の耳に顔を近づけた。

「お詫びの品、渡したいんだ」

 小さな声で彼が言うと、クスリと耳元で笑った。

「また、ロザリーさんを巻かない?」

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