第4話 運命だと割り切って
俺達がウィルネス国で神道家の連中と戦闘し、逃亡してファランクス国へ入国してから1週間。俺達、前衛防衛隊第15小隊は軍隊志望者が通う学校である、軍隊候補学校に入校する事になった。
その為、ここ数日は学校へ通う準備をしていた。
で、今日が候補学校の入校日で現地へと徒歩で向かっている。
「俺達って、学年はどうなんですかね隊長。1年生ですか?」
「いや、俺達は3年生だ。1年授業を受ければ卒業できる」
宮城隊長と同学年なのはなぜか嫌だな。
「クラスも一緒ですか?」
「クラスは分からない、3クラスあるらしいな。あ、ちなみに言っておくと、俺達が通う学校は全国で5つある候補学校の中でトップらしいぞ」
うわぁ…エリート様のお集まりか…。やりずれーな。
それにしてもだ。俺達は早くあのウィルネス国を止めなくてはならないのに1年も待たなくちゃならないのは痛いな。
そもそも俺はともかく、宮城隊長や、神崎に瑞希、あいつらは防衛隊の中でもトップクラスの実力を持ってるはずなんだがな…。
「はぁ…、新谷君とは一緒のクラスにはなりたくないわね」
本当に嫌そうだなこのお方は。
「あーそうですか、俺だってお前みたいな奴と一緒になりたくねーよ」
「あー、新谷。そう言えば、あの榊家のお姫様も通ってると聞いたが…」
な、にぃ???
お姫様ってあのお姫様ですよね?あの超天使の結衣菜様ですか?
「み、宮城隊長?ちなみにそのお姫様の学年は…いくつで?」
「2年だそうだ」
「え~、今回3年A組に入校してきた者がいる。入ってくれ」
声の感じでは強面の男性体育教師って感じだが、思ったより優しそうだ。
ちなみに俺は今、どこにいると思う?
お姫様が居ないくそつまんねー教室ですよ…。
そして俺達は教室のドアを開き、3年A組へと入る。
なぜ俺達なのかって?俺の隣に神崎様がいらっしゃるからだよ。
「自己紹介を頼む」
うむ、俺の予想通り強面の男性だった。体育教師なのかは知らないがな。
「私は神崎 玲奈。よろしく」
パチパチと拍手される。
「俺は新谷…」
ま、まずい!この事をすっかり忘れていた。
「新谷だ。よろしく」
シーン…。
あれ、おかしいな…。俺に拍手は?特に女子。
チキショウ。何だ神崎のその見下した笑みは。ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ。
「では、新谷と神崎。席に着け」
どうやら俺は1番後ろの席だそうだ。
ちなみに神崎は真ん中ぐらいか。
まあ、とにかく平穏に1年が終わってくれればいいんだ。
今日は授業という授業が無かったため昼で放課となる。
さてと、放課後は宮城隊長の所に集合がかかっている。さっさと行くか。
俺は席を立ち、教室のドアに手を掛ける。
「おい、お前、ウィルネス出身だって?」
人の事をいきなりお前って呼ぶか普通?常識知らずにも程があるだろう。
「そうだが?それが何か?君は確か俺の隣の席の…」
ムカつくができるだけ穏便に済まそう。
「俺は榊家王子の榊 祐也だ!」
こいつー、王子だったか…。道理で常識知らずな訳だ。
関わると面倒そうだし、適当に終わらそう。
「王子でしたか~、これは失礼。改めまして、俺は新谷。よろしくお願いします。では急いでるのでこれで…」
「ウィルネスって魔法大国って呼ばれてんだろ?お前強いのか?」
こいつ、話を聞かないタイプだ。
「いえいえ、俺は最弱と呼ばれてた男ですよ」
これ、本当だからね?ウィルネスにいた時は散々言われたから。
「そっか、また手合わせ頼むな!」
ちょっと同情してくれたのか。思ったよりいい奴なのかもな。
「新谷君、早く行くわよ」
グッドタイミングだ神崎!
「では、これで」
「またな、新谷!」
いきなり呼び捨てか。まあいいけどな。あいつの方が1つ年上なんだし。
そして俺達は先程、宮城隊長が集合をかけた為、本校の食堂へと向かったのだが、テーブルで座っているのは瑞希だけだった。
「なんだ、瑞希だけか。宮城隊長は珍しく遅いんだな」
ちなみに宮城隊長がC組で、瑞希がB組だそうだ。
「隊長さんは来ないですよ~」
はぁ?
「なんか、手続きみたいなのがあるらしいです」
「一ノ宮さん、それはどういう事かしら」
「隊長さんが言うには、私達は学生の大会に出るらしいです!そのエントリーにいってるらしいですよ~。今日が締切だそうです」
なんすか大会って?
「その大会なんですけどー、資料を貰ってます」
えーなになに?
1チーム5人まで校内でチームを組み、模擬小隊戦を行う。
まずは校内で選抜戦を行い代表チームを決めて、各校リーグ戦で試合を行い勝利数が多いチームが優勝。
相手に重症を負わせた場合は即退場で敗北。
武器は禁止。
「後~、隊長さんから伝言でー…」
瑞希はコホンと咳をしてこう言った。
「『俺達はこれに出場するから~』だそうです♪」
俺はこの時確信した事がある。
俺の未来の道は全て修羅場だと…。