第3話 そしてもう一度
俺達がこの国、ファランクスにやってきた夜。俺達が所属する事になる前衛防衛隊第15小隊の隊長は、宮城 俊介元生徒会長が就ぎ、副隊長には神崎 玲奈が就く事になった。
俺達はウィルネス国での戦績があるため、階級は飛び級で軍曹だそうだ。
ちなみに宮城隊長は隊長という重要な役目が与えられるため、特別に少尉になったそうだ。
そして翌日午前7時。
俺達は軍人としての訓練を行うため、前衛防衛隊基地内の訓練場へと向かうのだった。
「はぁー…、訓練か~。私やだなーキツイの」
ガタガタと音を立てながら走る乗り物に乗った俺達。ちなみに軍っぽく迷彩柄の戦車とかではない。イメージ的には黒塗りで大型バスの半分ぐらいの大きさの車だ。
ちなみに運転しているのは俺だ。なに、これしきの事はできる。
「一ノ宮さん、何なら今ここから逃げ出してくれても構わないのよ?」
「神崎せんぱーい、ひどいですぅ~」
相変わらず瑞希の野郎はとにかくゆるい。
「まあまあ、一ノ宮。初日だしそんなにハードな訓練はしないだろう」
いや、あの国王の事だ。初日からバリバリハードでくるだろ…。俺だってキツイのやだよ。
「あー、会長…あ、いえ隊長。訓練ってどんな事をするんですかね?防衛隊って言うぐらいだから、防御の訓練ですか?」
「まあ、それが妥当だな。本格的になってくれば小隊で模擬戦とかもするんじゃないか?」
チーム戦か…、この人達とうまくやれる気がしない。
特に神崎と瑞希だ。
「新谷、そこの交差点を右だ」
「了解…」
そして俺達は訓練場に到着し、隊員が集合する集会場と足を運んだ。
「諸君、今日から前衛防衛隊に第15小隊が加わる!第15小隊の者は前へ!」
この人はおそらく前衛防衛隊を統制する方だろう。
ちなみに国王はいらっしゃらないらしい。まあ当然だろう。
「はい」
代表とする宮城隊長に続き、俺達は段上へとあがる。
「彼らは前衛防衛隊第15小隊に所属し、さらに国王直属の精鋭部隊として活動してもらう!」
周りからは「マジかよ、国王直属だって」などとぼそぼそと声が聞こえてくる。
「私は前衛防衛隊第15小隊隊長の宮城 俊介と申します。我々はウィルネス国の反乱分子としてここへやってきました。まだまだ未熟ですが、ご指導の方よろしくお願いいたします」
辺りが静まり返る。そりゃそうだ。征服すると宣言してきた国から来たんだ。こうなるのも仕方あるまい。
「お前らすげーな!たった4人で国に歯向かうなんて、ただ者じゃねー!」
「俺らと一緒に頑張ろーぜ!」
おお…、意外な声が飛んでくるな…。
「君達、よろしく頼むぞ!私は小林 和也(コバヤシ 和也)大佐だ。この前衛防衛隊の総隊長に就いている」
大佐だってさ。トップ中のトップじゃん。
「こちらこそよろしくお願いいたします、小林大佐」
「では諸君。解散!」
隊員達はぞろぞろと集会場を去っていった。訓練へ向かったのだろう。
「ああ、宮城少尉。少し待ってくれ。話しておく事がある」
「隊長、俺達は下がっておきますね」
「ああ、君達にも聞いて欲しい。ここで話すのもなんだしな。場所を変えよう」
俺達は小林総隊長の招待で総隊長室へと連れられた。
「早速だが本題に入りたいと思う。君達には正規軍との訓練ではなく、候補生と共に訓練してもらう。つまり君達と同じ学生とだ」
俺達の実力が正規軍に劣っているとでも言いたいのか?
「お言葉ですが、小林大佐。私達は過酷な環境で育ってきました。ですのでこの軍の即戦力になれると思うのですが」
この人はよく上に向かってそんな口がきけるよな…。
「それは分かっている。だがそういう意味ではない。君達は過酷な環境で育ってきた、だから私としては…いや国王としても本当の学園生活を送って欲しいと思っている」
「では私達が今までに得られなかったものが得られる、と言う事ですね?」
そして小林総隊長はいと息つき、こう言った。
「ああ、それは間違いない。私が保証する」
堂々とこう言われれば従うしかなさそうだ。
「でしたら私達の道は1つです」
宮城隊長は目をそっと閉じた。
「君達、いいか。俺達、前衛防衛隊第15小隊4名は軍隊の候補学校へ入校する!」