第3話 与えられし力
王族である神道家の王子、神道 明は禁術と呼ばれる内の憑依術で悪魔ベリアルを自身に憑依させ、体に炎が纏わりついた。
「これを見ても俺に勝てるとでも?」
思う訳ないだろ。魔法が一切効かないんだぞ?
そもそも俺、魔法使えねーしな…。
俺の剣で直接奴に物理ダメージを与えられれば問題ないんだが、あの纏わりつく炎に邪魔されるだろう。
だが、勝算はある。
「ああ、勝てるね。かかって来いよ」
「じゃあ遠慮なくいくぜ!悪魔の息吹!」
神道は右手をかざし、一直線に炎が吹き出る。
ブレスっつったんだったら、口から吐き出せよと俺は思った。
俺はギリギリ回避し、魔剣を構える。
「今のをかわすなんて、なかなかやるじゃん」
「それはどうも」
俺の思った通りだ、僅かに神道の息が荒れている。このまま回避し続ければ禁術が解けるはずだ。
「会長、俺に力を貸してください。炎属性で二重の魔法障壁を作ります」
「了解だ!」
宮城会長はすぐさま俺の元に駆けつけ、魔法の展開を開始する。
「神崎は周りの敵を頼む!」
「あなたに命令されたくないし、それともう始めてるわ!」
神崎はぽんぽんと氷属性魔法を撃ちまくってた。
「持つのか?この障壁」
「魔力を注ぎ続ければ、恐らく大丈夫です」
俺達は今、神道の禁術による攻撃を受け続けている。
2人の全力でもこの程度の事しかできない。
「はぁ…はぁ…、まだまだいくぜーーー!!!」
くそっ、こいつ意外とタフだな。このままじゃ…、ヤバイ!
「これで、終わりだっ!!!」
俺達の魔法障壁が破られる。神道はとどめの攻撃態勢にはいる。
「結局あんたは何も出来ないんだよ!だから捨てられたんだ!」
捨てられる?なんなんだよ。こいつは俺の何を知ってんだ。
「神道家の落ちこぼれで禁術が使えないし、ロクに魔法も使えねー!だからあの時、あんなくそ田舎に捨てられたんだよ!」
俺が神道家の人間?ふざけるなよ。俺はあの場所で育った。俺の記憶には神道なんてどこにもないんだよ。
「なあ、お前よ。いい加減にしろ。適当な事ベラベラと喋ってんじゃねーよ!!!俺が神道だぁ?ふざけんな!!」
「ま、いいじゃん。もう死ぬんだし、バイバイ兄貴」
明の手から吹き出す炎が迫り来る。ああ…、俺は死ぬんだな。
こんな時に限って何もかも遅く見える。死ぬ寸前って事がよく分かる…。
いや、待てよ。俺の心臓が正常に動いている?
本当に何もかも遅くなっている?
俺は宮城会長の手を掴み、攻撃を回避する。
「な!?」
回避が成功した!?まだ周りの全てが遅く見える。これはどうなってんだ。
「新谷、お前、今ものすごいスピードで動いたぞ!」
声も遅く聞こえる。………………………っ。声が出ない!どうしてだ!
「まさか…、こいつ、禁術を使いやがったのか?」
これが禁術?だとしたら俺は、神道の人間なのか…。
これは俺が速く動けるのか。動きだけではない、心臓も筋肉も血液も視覚も脳もこのスピードについていっている。恐らく、5倍くらいのスピードだろう。
この現実を受け入れよう。俺が神道の人間だという事も。
今はこの与えられた力で、皆を救おう。
それが修羅の道であろうとも…。