第2話 禁術使い現る
「なら話が早い。3人で迎え撃つぞ」
その言葉を聞いた時、俺は正直この生徒会長はバカだと思った。
いや、バカでもこんな考え方にはならないと思う。
「この…、3人でですか?私達はともかく、ここには世界最弱がいるのですよ?」
あ、また世界最弱って言ったな。学年最弱だっての。
「それは分からないぞ、神崎」
「どういう事ですか?」
「君も聞いた事があるだろう。『魔法剣士』」
やはり俺の正体を知っていたか。俺が田舎の魔法中学に通っていた頃、今持っている俺自身の魔力を埋めて作り上げた剣、その名も魔剣で戦闘していたため、ちょっぴり有名だった。
「まさか、それが新谷君だと?」
「ああ、そうだよ。魔法は最弱だが、戦闘となれば最強なんだよ」
これで少しは俺の事を見直すはずだ。
「信じられない…!」
やっぱこの人ひどい。俺をなんだと思ってるんだ。
「そろそろ国軍が押し寄せてきてもおかしくない。俺達も戦闘体勢に入ろう」
「はい、分かりました。フォーメーションなどはどうしましょう?」
「俺は剣と無属性魔法で壁を作る事ぐらいしかできませんよ」
「なら新谷は前衛。中間に俺が入り新谷の援護。神崎は後衛で新谷の道を開け」
「了解」
「分かりました」
まあ、俺が必然的に前衛だよな。剣から斬撃飛ばせるって言えばよかった。
「じゃあ、外に出ようか」
俺達は反乱軍としてグラウンドに立った。軍と呼べるほどの人数はいないけどな。
先程グラウンドに出ていった生徒達は既に軍に引き取られたのか、グラウンドには誰もいない。
本当に勝てるのだろうか。今更不安になってきた俺である。
「あの大軍そうじゃないかしら?」
神崎がスコープを通してそう告げる。
「数は?」
宮城生徒会長は慌てることもなく冷静に対処しようとする。
「およそ…、100万ぐらい?」
おいおい冗談はよしてくれよ。俺がその中に突っ込むんだろ?
「そうか、新谷、先手必勝だ。突っ込むぞ。神崎は突破口を開け」
「お気を付けて」
神崎はそう言い、あらかじめ溜めておいた魔力を開放する。
「ではいきますよ」
神崎の周りは冷気に包まれていく。氷属性の魔法か。
「氷塊隕石!!!」
突如空にとてつもなく巨大な氷塊が出現し、敵軍の前衛に落下する。
「よくやった。今だ、新谷!」
「分かってます!」
俺は全速力で敵陣へと向う。そうするとすぐさま俺に向けて無数の攻撃魔法が飛んでくる。
「魔法障壁!」
それに対応して俺もすぐさま無属性魔法を発動する。
「それではもたないわ!」
神崎の言う通り、普通の魔法障壁では炎や氷属性などの有属性魔法に敵わない。
でも、俺の使う無属性魔法は一味違う…。
「ま、まさか…、新谷の魔法は…」
そのまさかだ。俺の魔法はこの魔剣により威力が増幅し、無属性魔法でも有属性魔法に対抗できる。それどころか勝るのだ。
「会長!援護を頼みます。俺が指揮をとる者を討ちます」
「ああ、任せろ。雷衝撃!」
宮城生徒会長の右手から雷属性の衝撃波が飛び、前方の敵が行動不能となった。
でも、衝撃波って確か無属性魔法に部類されてなかったっけ?
「俺は無属性魔法に属性を付ける事ができるんだ。驚いたか?」
「はは、そりゃ驚きますよ…」
普通はそんな事出来ねーよ。てか、最弱校でこのレベルかよ…。
「後は任せたぞ」
「了解」
俺はこの軍のリーダーと思われる人物を発見し、接近する。
そして俺は赤髪の少年の前に立つ。
「俺があんたを殺す事になるなんてな…」
なんだこいつ、俺を知ってんのか?まあ、現に宮城生徒会長には知られていたしな。こいつもそうなのだろう。
「はっ、笑わせるな。誰だか知らんが、この俺に…!?」
なぜ、この少年は泣いている?訳分かんねーぞ!
「あんたは何も覚えていないようだな…」
何言ってんだよ。俺が何も覚えてない?知るかよそんなの。
「何言ってるか分かんねーが、これで終わりだ!」
俺がそう言って一歩踏み出した時。
「俺に力を貸せ!ベリアル!!!」
少年がそう言うと、足元に魔法陣が出現し少年の体に炎が纏わりついた。
これは、まさかな…。
「俺の名は神道 明。ウィルネスの王子にて禁術使いだ」
俺は聞いた事がある。神道家に生まれた者の一部は禁術と呼ばれる魔法とは比にならないほどの威力がある術を使えると。もちろん、禁術と呼ばれるからには術者にはリスクがあると。
さらにもう1つ。これは噂だが、禁術をみた者は後世にその禁術を伝える事が出来ないと…。