第6話 因縁
模擬戦を行った次の日に朝、俺は先日の瑞希の言葉を忘れる事が出来なかった。
俺は部屋を出て1階の食卓へと向かった。
「おはよう、新谷。俺の電撃は抜け切ったかい?」
「いや、体中痛いです…」
そんな事はどうでもいい。
とにかく昨日の瑞希の件もあり、かなり気まずいのだ。
「そ、それより瑞希!隊長と神崎相手によく勝てたな!」
おお、なんか動揺してしまった。
「私の闇属性魔法は最強ですからね!」
あれ?瑞希自身はあまり気にしてない?
昨日のあの言葉は俺の聞き間違いだったのか?
うん、そういう事にしておこう。
「まさかあんな技を持っていたなんて、驚いたわ」
「いや~、これは瑞希がうちのエースになりそうだな」
え、そんなにすごかったの?
「何だよ、その隠し技的な」
俺がそう瑞希に問うと瑞希は軽く口に指を当てる。
「先輩には、内緒です♡」
いつも通りの瑞希のはずなのに、なぜかドキッとしてしまう。
「さぁ皆、早くご飯を食べて学校に行くぞ」
皆が家を出て学校に向かう中、俺は魔剣を置いてきた事に気付いた。
「うわ、やべ。魔剣忘れた。隊長、家に戻るんで鍵貸してください」
「この距離だと遅刻決定だな」
宮城隊長はそう言いながら俺の手に鍵を置く
「そのようですね…。神崎、遅れるって担任に伝えておいてくれ」
「寝坊で遅れると伝えておくわ」
ひどいな、おい。
まあ、遅れたからって何か罰がある訳でもないし、ぼちぼち行くか。
俺が家に着いた時、家の玄関の前に白い服を着てフードを被った人が立っていた。
俺はとりあえずその人に声を掛けることにした。
「あの、何か用ですか?」
白服の男は俺の方へ振り向く。
見覚えがある。いやこの服装は知っている。
「あんた、フィルネスの軍人だな?俺達に何の用だ」
男はすっとフードを降ろした。
「久しぶりですね。兄貴」
「その赤髪…、神道 明か!?」
なぜこいつがここにいる?俺達を抹殺しに来たのか?
「あなたを連れ戻しに来たんですよ」
あいつ、俺の魔剣を持ってやがる。まさか昨日のうちに俺の魔剣を盗んだのか?
とりあえず、宮城隊長に連絡しないと!
「そうはさせませんよ!火炎!」
「熱っ!!!」
くそ、俺の携帯がやられた。
「兄貴は神道の人間で禁術が使えます。ですから王家に戻るよう国王からのご命令です」
「俺がそうやすやすと戻ると思うか?神道 明」
「だったら力ずくでもあんたを連れ戻す!」
まずい、このままでは負ける。禁術を使うか?
いや、宮城隊長と約束しただろ!使う時は皆を守る時だけだって!
ここは潔く負けを認める…。だが!
「魔力完全解放!魔法 障壁!」
俺の渾身の魔法 障壁は神道 明の魔剣を持つ右手に向かって突き出す。
「何!?」
神道 明の右手から魔剣が弾け飛び、遥か彼方へと飛んでいった。
これで、俺の魔剣を隊長達が見つけてくれれば俺の無事を伝える事が出来る。
何故かって?
俺と魔剣は一心同体だからさ。
「俺を連れて行け、神道 明」
「ふっ、潔いですね」
そして俺はカチッと手錠をかけられ、この国から去っていくのだった。




