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禁術使いの魔法剣士  作者: 柊 タクト
第2章 平和国ファランクス
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第5話 動揺に動揺

桜が舞い散る中、俺達第15小隊は学校へと向かう。

基本は徒歩通学な為、いろんな生徒と出会う事もある。

「新谷~、お前も候大に出るんだって?実はさ、この俺も出場するんだわ~」

候大というのは、全国軍隊候補生向上大会の略だそうだ。

今、俺に話しかけてくる金髪男は、俺の同じクラスの榊 祐也だ。ちなみにこの国の王子らしい。

という事は必然的にあの結衣菜お姫様の兄という訳なので、多少面倒くさくても相手をしているのだ。

「ああ、訳あって出る事になったんだ。校内選抜ではお手柔らかに頼むよ」

と、こんな感じで良い人ぶってるって事よ。

「なんだ新谷。入校早々友達ができたのか」

「あ、はい隊長。一応隣の席なんで仲良くしてもらってます」

なんで俺がこんなに下手にでなきゃならんのだ。仲良くしてやってるのは俺の方だぞ!まあ、これは全て結衣菜姫の為だ。

「お前らもしかして軍の所属か?」

おっとまずいな…。これはバレたらダメなやつか?

俺はチラッと宮城隊長の方を見る。

宮城隊長は笑顔で軽く頷いた。バレていいんですかね?

「ああ、そうだよ。訳ありでな、見習いでやってるんだ」

「へぇ~、じゃあ俺達と同じだな!俺ぐらいの実力にもなれば軍の見習いで戦場にも出られるんだ。この前もウィルネスの方へ言ったぜ」

そう言えば結衣菜姫もあの時いたな。こいつも相当の実力の持ち主なんだろう。

「けど、お前の名前は聞いた事ないなー。軍に入れるほどの実力ならば、俺も知ってるはずなんだがな~」

忘れていた。こいつは俺がウィルネス出身だって事を知らないんだった。知ってるのは正規軍と国王、そして結衣菜姫だけか。

国王直々に在住許可は得たしバレても大丈夫なんだろうけど、結衣菜姫はともかくこいつに知られたら厄介な事になりそうだ。

「もしかしてお前がウィルネスの…」

「おっと、そろそろ学校に到着するなー。じゃあな瑞希!宮城隊長もまた放課後に!神崎ー、教室に行くぞー」

少しばかり大袈裟だったが、まあ大丈夫だろう。

「唯せんぱーい、また後で~」

「しっかり勉強しろよ、新谷」

「あなたと一緒に行きたくないんですけど…」

俺はスタスタと校門に向かって歩き出した。競歩でな。

「お、おう…、まあいいか」

良かった、榊もそんなに深くは考えていないようだ


そして、俺達は本日の日課を終え、候大に向けての訓練の為に借りた、校内にある訓練場に集結した。

校内には20近くの訓練場が配備されており、全てドーム状になっている。広さは野球場と同じくらいだ。

この訓練場には俺達以外にもいて、トレーニングや戦術などの訓練を行っている。

「では、今から候大に向けての訓練を始めるぞ」

「まず1ついいですか?」

「なんだ?新谷」

「俺は一度も大会に出たいと言ってませよ。後、存在すら知りませんでしたよ」

まあこの人の事だ。どうせ笑って誤魔化すだろう。

「これも国王からの指令だよ、新谷」

誤魔化してはなかったが笑ってやがる。

「だが、何も言わなかったのは謝る。神崎、一ノ宮」

俺は?

「いえ、これも必要な事だと隊長が判断したなら構いません」

「私も面白そうなので別にいいですよ~」

俺、こういうチームワークなスポーツ嫌なんだよー。

「じゃ、試しに2対2の模擬戦をしてみようか」


俺達がチーム分けで揉めた結果、俺と瑞希が組む事になった。流石に俺と宮城隊長が組むのは紳士的ではない。

「せーんぱいっ!頑張りましょうね♪」

くそ、たまにこいつ可愛い時があるよな…。調子狂う。

「相手は元生徒会長と副会長だぞ…。それに比べてこっちは最弱と新米…」

「大丈夫です!私には闇属性魔法がありますから!」

「俺だって魔剣が…」

使えねーーー!そういや武器禁止だった!

やばい、ほんとにやばい。俺、何もできねー!

「じゃあ始めるぞー!試合開始!」

は、始まった。

「瑞希ぃ!後方であいつらに闇属性魔法をぶっぱなせ!俺が前衛で止めておく」

「了解です!暗黒(ダークネス) 疾風(ウィンド)!」

俺の後方から黒い風が吹き荒れる。

そして風がおさまる頃。

「やりましたか!?」

あ、それフラグね。

「甘いよ、新谷。雷撃(サンダー)!」

くっ…、雷属性の基本技。俺のただの魔法(マジック) 障壁(シールド)で防げるのか?

全魔力を使ってでもこの魔法を止めてやる!

魔法(マジック) 障壁(シールド)ォォォ!!!」

パリン…。

俺の渾身の魔法(マジック) 障壁(シールド)が、プレパラートと顕微鏡に挟まれて割れるガラスカバーみたいに粉砕する…。

「後は…、任せた。瑞希…。ぐは…」

体が魔法によって痺れて力が入らないまま、俺の意識は薄れていった…。


「ん…、あれ?ここは俺の部屋か」

そういや、俺は宮城隊長の雷撃(サンダー)をくらったんだっけ。

あの後、瑞希はどうなったんだろうか。まあ結果は目に見えている。

俺は寝返ろうと思った為、ベットの上で向きを変えた。

「え?」

そこには俺の布団に入った瑞希の顔があった。

「先輩、体調はどうですか?」

何やってんの!?顔近い近い!

「あれ?先輩顔が赤いですよ?熱があるかも」

そう言って俺の額に瑞希の額を合わせてきた。そう、唇と唇も合わさりそうになるほどに。

「だ、大丈夫!大丈夫だから。とりあえず布団から出てくれ」

そうやって俺は起き上がりおもむろに外を見た。

もうすっかり暗くなっていた。恐らく長い事、瑞希は俺の看病をしてくれいたのだろう。

「あ、あのさ…」

「なんですか?先輩。告白ですかぁ~」

む、ムカつくけど何も言い返せない…。

「それは違うが…、その、今日はありがとな、看病してくれて」

恥ずかしいが瑞希に世話になったのは事実だ。例を言うのは当然だ。

「あ、違うんですね…。いえいえ、気にしないでください!後輩として当然の事をしたまでです!」

あれ、一瞬顔が曇ったような…。

「ま、本当は私が………………、ですけどね」

え、今なんて言った?

「い、今なんて?」

瑞希は珍しく頬をぼっと赤らめた。

「べ、別に何も言ってないです!」

ここまで動揺する瑞希を見るのは初めてだ。

「あ、私部屋に戻りますね!」

瑞希はガチャリとドアノブを捻り、チラッと顔をこっちに向ける。

「今日の模擬戦、勝ちましたよ!」

は?嘘だろ…。

その一言だけ言って瑞希は去っていった。


あの時、瑞希が言った言葉は俺の聞き間違いだったのだろうか。

いや、確か瑞希はこう言っていた。


「ま、本当は私が唯先輩の事が好きだから、ですけどね」





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