赤ちゃんから転生もの(乳児的おっぱい連呼注意)
とても心地いい夢を見ていたんです。暖かくて、安心する音楽が流れ、誰かが優しい会話をしているのを時折聞きながら、私は漂っている、そんな夢。
いつまでもそれを感じていたかったけど夢はいつかは覚めるもので、嫌だ嫌だと駄々を捏ねてみたけど、激痛が体に走り、痛いと叫び、いや、痛いって叫んだはずなのに、周りに響く音はおんぎゃー! だった。 やばい、これはやばい。なんかとてつもなく、ヤバイ。
私の輝く誕生初の思考はこれです。
困惑と不安一色に染まった私はその感情のままに、ここどこ!? どうなってるの!? と叫んだ言葉はことごとく、あんぎゃー! うんぎゃー! に変換された。終いには本泣きした。ギャン泣きしても仕方ないと思う。
混乱まっただ中の私ではありましたが、その時、誰かに抱っこされました。不思議な事にそうされたらすっごく落ち着くんですよ。そしたらまあ、なんていうか、どうでもよくなりました。泣き疲れたのもあってそのまま寝ちゃいました。眠りに落ちながら心の中で思ったのは。
あ……(察し)
_______
私、生まれました。
よく見えない、体が思う様に動かない、話せない、言語はあんぎゃー! の叫び一択。
そりゃ察するだろ! てかこれ以外にどう察すればいいんだよ!!
口になんか含まさせられれば反射で問答無用にすっちゃうしさ! おっぱいうめえええええ!! のそれしか考えられないしさ!!
そんな感じで、私、生まれました。
生まれる前の事はぼんやり覚えてます。名前はとかどこそこに住んでて~とかは分かりません。私と言う自我が経験した事だけを覚えてる感じです。
でも、そんなことどうでもいいです。ええ、どうでもいいんです。
精神は大人、身体は赤ちゃんで天才乳児?
私が経験した事をフル活用して世界に羽ばたくぜ?
親に迷惑かけない大人なアタクシ乳児?
そんなもんクソくらえ!!
私の望みはただ一つ!!
お母さん抱きしめて! 抱っこ!! 抱っこ!! お母さーーーーーーん!!
そう泣き叫ぶ毎日がとても幸せです
________________
寝返りが出来るようになりました。
生まれてからどれ位経ったなんか知りません。でも身体はけっこう肉がつきました。
私は、おっぱいが、出なくなるまで、吸うのを、やめない!!
そんな生活をしていたので、けっこう肉がついてます。抱っこする人達が喜んでるっぽいのがなんとなくわかるのでそれでいいんです。抱っこされてないと寂しいのでもっと私を抱きなさい、もっとだ! もっと抱けよ!!
おっぱい、抱っこ、という素晴らしいエンドレス生活だったんですが、ママンが最近やたらと私を転がすんです。転がってなるものかと全力で元の仰向けに戻るんですが、ママンも私を転がすのをやめないんで、そういう遊びかと総力をもって迎え撃ってたんです。
しかし! しかしだ!! 私は気付いた!! ママンは私に寝返りをさせたいんじゃないか、と!
この私にかかれば寝返りなど朝飯前である! さあ、しかと見よ!! これが私の寝返りだ!!
ごろんと転がりうつ伏せになった私にママンは大喜びだ! 私はとっても孝行娘なのさ、ふっ。
ママンは私の素晴らしい寝返りをパパンにも伝えるべく部屋を飛び出していった。いや、行かないでママン! このうつ伏せ辛っ! かなり辛っ!! しかも戻れねえええええええ!!
五秒後、私は泣き喚いた。
___________
屈辱のうつ伏せ事件から随分経った。あのあとすぐママンとパパンが駆けつけてきて事なきを得た。
赤ん坊から目を離すの、ダメ、絶対。
仕返しとばかりにそれから数日ご機嫌斜めと言わんばかりにぐずってやった。ベビーベットらしきとこでなんか寝てやんねえぜ、私を抱きしめて眠れよ。私は柔らかくて気持ちいいだろ? な?
パパンが何度もママンから引き離してベビーベットらしきとこに私を連れていくが全力で泣いてやったぜ。あんまりにもしつこかったから終いにはパパンが私に触ったら泣くという拒否っぷりを発揮した。数日発動したらパパンが泣いた。
……泣くなよ。
そんな事があったもんだからママンは私を転がすのをやめた。唯一の運動が無くなったもんだから私はますます肉をつけた。肉をかき分けて顎の下を洗われるたび、私はなんとも言えない気持ちになるが。
ママンはギリぽっちゃりと言える体型なので、もしかしたらと、こんな時だけは自慢の察しが的中しない事を、私はおっぱいを全力で飲み干しながら祈った。
ママンのおっぱいうめえええええええ!!
あ、離乳食なんかいりません。まだいいです。おっぱいが正義で(この先の文字は滲んでよく読めない)
滲んだ文字の解明は遅々として進まず、判明するかは依然として不明なままである。