エヌマエリシュより 天地初判
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月の章
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上に天が無く、下に地も無かった時代、
水【アクア】(アプス)と塩【ソルト】(ティアマト)がムンム【マナ】(月)の力により一つに合わさることとなった。
その神の名はラフム(命の土)とラハム(種滴る縄)と呼ばれた。
ラフムとラハムはやがて強大な神、アン(太陽)【アンシャル】を産み、アンからはその息子キ(炎)【キシャル】が産まれた。
この神々はその大きすぎる力を持て余し、暴れ、アプスの力を奪い続けた。
アプスはついに耐えかねて、ムンムの知恵を借りて滅ぼそうと考えるが、その力は手に負えないくらいに強まっており逆にその力を奪われてしまったのだ。
やがてアン、キの二神は、アプスとティアマトの力を取り込むと、ァマルトゥ【マリン】(海)を産みだす。
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火の章
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しかし、ァマルトゥに閉じ込められたアプスとティアマトを救い出そうと、ラハムとラフムが立ち上がります。
ラハムは大蛇となってラフムに種を植え、ラフムからはたくさんのキングー(血)が産まれたのです。
ラハムとラフムはキングーをこの世界の支配者となるべく育て、アン、キ、ァマルトゥの強大な力に対抗しようとしました。
キングーとその一族はやがて世界に広まり、三神を圧倒していきます。
ァマルトゥはある日、「我が力を武器として使うことを許可していただければ奴らを一夜にして滅ぼしてみせます。」とアンとキに提案します。
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水の章
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ァマルトゥの力を武器とすることは自分たちをも巻き込みかねないほどの力でしたので、アン、キの二神はどうするかを相談してついにその実行を決断を下し許可を与えます。
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木の章
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二神の許可を得たァマルトゥは、その偉大な力を振るうとたちまちキングーの一族は滅ぼされてキングーはァマルトゥに捕えられました。
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金の章
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その後、ァマルトゥは新しい秩序を創りはじめます。
このとき、天と地は分かれ、アンは天の星々を治め、ァマルトゥは地上を支配します。
こうしてァマルトゥによって初めて世界が創られたのです。
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土の章
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地上の支配者となったァマルトゥはキングーの一族を自らに仕えさせ、勝利した神々を永遠に讃えさせることとしました。
キングーの一族の末裔とはわれわれ人間のことです。
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日の章
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そしてこの日以降、人々は神に祈りと貢物を捧げ、讃え畏れるようになったのです。
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あとがき
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エヌマエリシュと言う古代バビロニア王国の7枚の古い石板に刻まれた創世と建国の神話、日本書紀を調べるうちにたどり着き興味を持って調べるうちにこれを書きたくなりました。
神様の始まりは、自然の恵みと脅威から始まったのかもしれない。
そしてこの最古の伝説は、日本書紀も含め、各地に伝わる創世神話のオリジナルなのかもしれない。
内容は元々の話を大幅に変更し、結局、その初めはこういうことが言いたかったのではないかという考えのもとシンプルな物語(といえるほどの物ではありませんが)にしてみました。
元の石版の神話は勝利者である神がバビロニアを興し、国民(人)がその子孫の王に仕えるのは当然である、というようなことを示すため、創世神話を改変して創られたものなのかもしれません。
興味を持たれた方はぜひ原文に当たってみてください。
一人一人にきっと大きな物語のあらすじが産まれてくることでしょう。
了