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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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営業再開

 数日後、葬儀屋リナシータはモルテの言った通り本当に潰れた。


 あの後、人食鬼グールの恐怖に耐えきれなくなったノイザック達がどこかへ逃げた隙にファズマが肉体と魂の繋がりを切り人食鬼であった人間に本当の死を与えて動きを止めた。

 死を与えられた遺体をモルテは葬儀屋フネーラに入れるように指示を出した。

 モルテ曰く、

「こちらの都合でこのような目になったのだ。詫びとして預かる」

 そして、葬儀屋リナシータが遺体を遺棄したということを警察に伝えるとも言った。

 放置された遺体をそのままにせず寛大な対応をするモルテである。

 翌日にこのことは警察に伝わり、同時にファズマの頼みを聞いた聖ヴィターニリア教会の司祭クロスビーが葬儀屋リナシータにより運ばれた遺体について警察に知らせた。

 それを聞きつけた警察は預けた側ということもあり事情を聞く為にいなくなった葬儀屋リナシータのノイザック達を探し始めた。

 同時にモルテ達も警察から事情聴取を受けることとなった。

 これには同じ同業者が向かいにいる為に嫌がらせをしたのではという疑惑からであったが、全員にはそれをする暇がないと判明した。

 どうやらモルテが宣言した臨時休業は各々にそう言った意思がないことを証明する為のものだった。

 全員が程よく散り、事を起こす為の工作が出来ないこともあり警察は早々に葬儀屋フネーラの事情聴取から手を引いた。

「いわゆるアリバイ工作ってやつだ」

 警察が出て行ったのを見届けてファズマが事情聴取されて疲れた様子のディオスに言った。

 モルテが狙っていた今回の目的は手を出さずに内側から潰すことであった。

 聞こえはいいが結果は恐ろしいものであった。

 内側からの内部崩壊なら仲違いをさせるなどしてつぶし合えるが、相手は個人ではなく組織。それも手を組んだ残党である。脆そうに見えてで脆くない。

 情報で攪乱も出来るだろうがそれでは第二、第三と新たな残党組織が生まれて永遠といたちごっこを行うこととなる。

 その為にモルテは早期にまとめて潰す為にあらあらしいが何もしていない遺体を葬儀屋リナシータに入れて恐怖の植え付けと化けの皮を剥ぐことにしたのだ。

 これにより自分達は何もしておらず関わっていないという事実が出来上がる。

 この狙いにいち早く気づいたファズマはその事実を作る為にディオスとミクをアシュミストに連れ回し、葬儀屋リナシータには近づけたせず二人も何も出来ないという事実を作り上げた。

 残党組織が建てた葬儀屋リナシータの監視を行ないながらヒース達の情報収集を聞いてまとめた。

 そしてヒース達に葬儀屋リナシータから出て来る者の追跡を頼むように言い、残党組織が集まる場所の発覚にも協力をお願いした。

 結果は大成功。

 慌てて出ていたノイザック達はヒース達の存在に気づかずに残党の集会場の場所を教えることとなり警察に提供として送られ、聖ヴィターニリア教会に葬儀屋リナシータが運んだ遺体と聞いた警察が駆けつけ死因を調べると薬物による死因と判明。

 さらに調べるととある店の常連で行方不明になっていたことが発覚。

 警察の捜査により残党組織のメンバーは全員逮捕された。その際に遺体が動いたとわめき散らしていたが完全に無視され、同時に葬儀屋リナシータが潰れる事となったのである。


 そしてこの日、葬儀屋リナシータが潰れた為に葬儀屋フネーラの臨時休業は終わりを告げ久々に営業を再開することとなった。

「そう言えば、どうして人食鬼に襲われて叫んでいたのに誰も気づかなかったんだ?」

 店内の掃除をしながらディオスが初めて遺体が動いた様子を思い出して同じく店内にいたファズマに尋ねた。

「それはな、ここら辺で騒ぎが起きても気づかれねえ工夫がされているからだ」

「気づかれないって、気づいてない!?」

 まさかあんなに悲鳴が響いていたのに周りの誰もが気づいていないという事実に驚くディオス。

「俺らはそれが可能なことを領域ってんだ。その領域の中じゃ誰も気づかねえし死神とその弟子じゃねえと何が起きてっか見えねえ。しかも、周りに被害がでねえように時間も止まるからな」

 そう言うとファズマはドアベルに指さした。

「領域は死神が使えるんだが常に展開するのが疲れるみてぇでな。そこであんなもんに死神の力を付加して常に展開している。時間を止める以外の状態にな」

 だから誰も気づかなかったのかという納得と驚きを浮かべるディオス。

「時間を止めるって……もしかして、急に現れたりするのって……!?」

「ねえとは言えねえが殆どは俺らが気づいてねえだけだ」

 時間を止められるというのにも驚きだが時間を止めて近づいているのではというディオスの考えをファズマは否定した。

「ほう、何を話をしている?」

「て、店長!」

 そんな話をしていると噂をしていたモルテが現れた。

「い、いや、何も……」

 突然現れたモルテにファズマがしどろもどろに答えた。

 実際に悪いことを何一つ話してはいないが突然ということもあり上手く話せない。

「店長」

 そんなファズマを置いといてディオスがモルテに話し始めた。

「俺なりに死神について考えました」

 それはモルテから死神とはどの様な存在であり、死神が関わらなければ遺体がどうなるのか知らされた。そして、自分達が抱く死に関する常識が死神によるものであるとも理解をしている。

「俺は死神について誰かに教えるつもりはありません」

 これは確かに誰にも教えることが出来ない事である。知ったところで実際に不死者アンデッド生霊リッチと遭遇しても何も出来ないからだ。

「それに……」

 続きを言おうとしたがそれをモルテが手を出して止めた。

「それでいい。ここにいるもいないも、死神の弟子になるもならないもディオスの思い次第。お前は葬儀屋フネーラの従業員。それが今のディオスだ」

 言いたいことを全て理解されて全て言われ、それに対する返答を聞いてディオスは頭を下げた。

「ありがとうございます」

 そう、何も変わらない。例え死神とそれに関することを知ったとしてもそれで何かが変わるわけでもない。

 そして、それならまだ葬儀屋フネーラで働いて自分の目でしっかりと死神について見極めようと決めたディオスである。

「師匠~、お掃除終わったよ~」

 そんな時、ミクが店先の掃除を終えて店内へと入って来た。

「さて、営業を再開する」

 店内も綺麗に掃除がされたのを見たモルテは従業員に指示を出した。

別名葬儀屋の休日。

明日は閑話を何話か投稿をして4章は終わりです

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