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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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不死者

 葬儀屋リナシータの三人は懸命に顔が青白い人、遺体から逃げていた。

「く、くんな!」

「こっちに来るんじゃねえ!」

「ひいぃぃぃぃ!」

 叫びながら噛みついてこようとする遺体から逃げ回る三人。

「くっそ!払ってもぶっ叩いてもきりがねえ!」

 何をしても意味がない遺体を見ながらタンバンが悔しそうに叫んだ。

 遺体が動き出しそこら辺にあった尺の長いもので払ったり叩いたりしたのに怯みもせずに襲い掛かってくるのだ。痛みくらいあってもいいはずなのに全くそれもない。

 内側からの怪物に恐怖を感じていた。

「どうしてこうなった!」

 吐き捨てるようにノイザックが苛立ちを露わにした。

 あの遺体は警察が運び入れた遺体。そんなものが何故突然に動きだしたのか分からないだけに苛立ちが募る。

「まさか……!」

 苛立ちが募る頭でノイザックは葬儀屋フネーラのことを思い出した。

 警察が遺体を運び入れたのは葬儀屋フネーラの従業員が紹介したからだ。紹介されなければこんな動き回る遺体に恐怖することはなかった。

「おのれ!」

 そう考えると再び葬儀屋フネーラ、モルテに怒りが湧く。

 どうやって遺体を動かしているかは知らないが復讐する。そう決意するのであった。


 葬儀屋フネーラの屋根の上でモルテはファズマに確かめるように尋ねた。

「奴らはあの遺体をどのようにして手に入れた?」

「俺が警察に教えて運び入れさせました」

「そうか」

 警察嫌いではあるが警察が絡んでいるとは好都合である。

 そして、遺体を早々に入れさせる口実を見つけたファズマを嬉しく思う。

 これで葬儀屋リナシータが警察から頼まれた遺体の管理を怠ったとしてた口実が出来上がった。

 二度と手出し出来ないようにもう少し恐怖を与える為にもう少しだけ高みの見物をする。

「それと、あの遺体の死因は餓死です」

「なるほど。だから人食鬼グールとなったのか」

 遺体の死因を聞いて何故人食鬼になったのか理解したモルテ。

「店長、どうして遺体が動いているんですか!それに、どうして襲っているんですか!」

 下の様子を見ていたディオスがファズマの話を耳にして大急ぎでモルテに尋ねた。

 ファズマが警察が頼み込んできた遺体を葬儀屋リナシータに入れたのは何故かと考えていたが、遺体が動くというのは予想外であった。

 未だに下では恐怖による悲鳴が響いている。そろそろ誰かが気づいてもいいはずなのに誰も気づいて出て来る様子を感じない。

「うむ。あれは不死者アンデッドだ」

「不死者って、あの?」

 不死者と聞いてディオスは怪訝そうな表情を浮かべた。

 ディオスが思い浮かべたアンデッドはいわゆる墓から出てきて徘徊する伝説や伝承の怪物である。

「不死者には種類がある。病原菌や毒をばら撒き歩く瘴気と言われる廃人ゾンビ。動く生き物を見るとそれを食べずにはいられない人食鬼。人混みに紛れ歩き回るだけの歩く死者(レブナント)。他にもあるが今はこれだけでいいだろう」

 不死者について短く説明をするモルテ。その説明にディオスが意見した。

「アンデッドってゾンビの同種じゃないんですか?」

「全く違う。アンデッドとゾンビが混合した知識は全くの間違い。ゾンビがアンデッドの上位と認識する者もいるがそれも違う」

 ディオスが思い浮かべていたアンデッドをモルテが真っ向から否定をしたそれであった。

「本来不死者とは動く死者達の総称。廃人や人食鬼、歩く死者達をひとまとめにした言い方だ」

 死神から見た不死者の常識を述べるモルテ。

 その説明にどうにも分からないディオスだがそういうものであると今は頷くことにする。

「不死者になるにはそれぞれの条件がある。あれは餓死で人食鬼となった。人食鬼となる条件は生前に飢えること。あの遺体はその条件を満たし人食鬼となったのだ。」

 モルテの説明を裏付けるように人食鬼がまだ三人を追い回していた。

「ふむ。そろそろ限界のようだな」

 懸命に逃げ回っている三人の様子を見てモルテが言った。

 よくよく見るとどこか足取りがおぼつかず、悲鳴も先程のようにあまり上げていないし小さく感じる。

「ファズマ、隙を見て切れ」

「了解です。ミク、扉の鍵開けといてくれ」

「は~い」

 モルテの指示にファズマはミクにも指示を出すと二人は急いで屋根から降りた。

「そもそも、どうしてあんなのがいるんですか?」

 ファズマとミクを見送ったディオスは改めて不死者について尋ねた。

「ふむ。怖いのか?ただ呻きながら永遠と追い回すだけの存在に」

「それ、十分に怖いと思うんですが」

 不死者が本能的に行う行動を全く怖いと思わないモルテの発言にディオスはたじたじになった。

「不死者の存在については死神の役割について話さねばならない」

「死神の役割ですか?」

 死神の役割と聞いてディオスは驚きとようやく知ることが出来ると安堵した。

「結論から言うと、人間は死なんのだ」

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