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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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人食鬼

 屋根から覗くと言ったファズマの行動は早かった。

 ろうそくを持っていない手でディオスの手を握り仕事場へと引くと既に梯子がかけられていた。

 そこから器用に上り倉庫、屋根へと出た。

「早く来い!」

 屋根から叫ぶファズマの言葉に問いたい気持ちを堪えて何も言わずに梯子を上るディオス。

 その後をミクが登り、三人が屋根へと出た。

「それで、一体何が見られるの?」

 期待と言うよりも疑問の眼差しをろうそくの火を消すファズマに向けたディオス。

 屋根から下を覗くと今でも葬儀屋リナシータの前ではまだあの三人が何かを言い争って慌てているように見える。

「死神が人の遺体に関わらなければどうなるかだ」

「は?」

 いまいちピンと来ていないディオスは呆けた声を出した。

「見てれば分かる」

 更なる説明を追求したそうなディオスの目を無視してファズマはディオスの肩を握った。

 すると、ディオスの夜目に慣れた目の視界が僅かだが明るくなった。

 それはモルテがディオスに死神と思われる力を使って真夜中の中でも視界をよくしたものと同じものであった。

 視界の良さは完全にモルテが上回っているが。

「これが俺の精一杯だ」

 申し訳なさそうに言うファズマにディオスが慌てて言い返した。

「いや、十分だよ。それに、ファズマも出来るんだ」

「店長の弟子だからな。ミク程見えねえがこれがねえと夜はよく見えねんだ」

「……え?」

 出来ることにも驚いているのにファズマの言葉を聞いたディオスはミクに振り向いた。

 当のミクは首を傾げどの様に言えばいいのか分からず言葉が詰まっているディオスを見た。

 ファズマの話を聞いたディオスはまだ妹のユリシアと同い年の女の子がファズマ以上と捉えられる言葉を聞いてどうゆうことかと思っていた。

「お、ようやくか」

 思考に入ってしまったディオスにファズマが現実に帰すように言うと葬儀屋リナシータの前にいる三人に指さした。より正確には葬儀屋リナシータの扉。

 ファズマの声に我に返ったディオスはそのまま指が指されている扉を見た。そして、扉が前振りもなく乱暴な音を上げて開かれた。

「ヒッ!」

「ひ、開い……た」

「く、来るな!」

 開かれた扉を見た三人が何かに恐怖するように後ずさりした。

 そして、扉の奥からそれが現れた。

「あれは?」

 それを見たディオスはファズマに顔を向けた。

 現れたもの。それは人であった。

 顔が青白く見えるも現れたのが人であるのに何故葬儀屋リナシータの三人が見て分かるほど恐怖を抱き叫んでいるのか分からない。

「どうして人が?」

「あれは元人間だ」

「え?」

 ファズマが発した言葉の意味が分からないディオスは呆けた声を上げた。直後。

「ぎゃああああああ!」

 再び悲鳴が響いた。

「噛みつきやがった!」

「何なんだ一体!」

 扉から出て来た顔が青白い人が三人いる内の一人の腕に噛みついたのである。

 噛みつかれた者は力任せに顔が青白い人を振り払った。だが、噛みつかれた腕からは血が流れていた。

「な、な、な、な……」

 突然の出来事に驚いて声が出ないディオス。

 そんなディオスを含めた三人の背後から声がかけられた。

「ほう。人食鬼グールか」

「店長!」

 いつの間にいたのか。三人の背後からモルテが話に割って入り、振り返った三人はモルテの登場に驚いた。

「店長、いつからそこに?」

「今だ。またすぐにエノテカーナに戻る」

 ファズマの尋ねにモルテは再びエノテカーナに戻ることをいいながら下で起きている出来事を静かに見始めた。

「お帰りなさい師匠~!」

「お帰りと言われてもまた出るのだ。その言葉に対する返答は改めて言おう」

「そう言えば店長、チーズは?」

「エノテカーナに置いてきている。数が数でな。食べきれんから分けている途中だ」

「そうですか。あ、明日の朝食はチーズ尽くしでいいですか?」

「うむ。構わん」

 下では大変なことが起きているはずなのに慣れているのかファズマとミクがいつも通りの様子でモルテと会話を初めてしまった。

 しかも、朝食のメニューまで決めてしまった。

 この状況でこれはないだろうとディオスは突っ込みたい気持ちを堪えて、その気持ちの強さを大声に出した。

「そんなことよりもあれ何ですか!」

 顔が青白い人が下の三人に襲い掛かっている様子はどういうことかとディオスは迫った。

「まだ分からんのか?」

 必死に尋ねるディオスにモルテが腕を組んで呆れたように言った。

「あれは遺体だ」

「遺体……!?」

「既に死んでいるのだ」

 モルテが発した言葉が信じられずディオスは未だに三人に襲い掛かっている顔が青白い人を見た。


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