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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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久し振りの帰宅

 お菓子を買ってミクとユリシアと共に久々に家に戻ったディオス。

 途中でミクとユリシアが気になった店に突撃したことで時刻はあっという間に夕方になってしまった。

「ただいま」

「おじゃましまーす」

 家に入るとミクとユリシアが元気よく入って行った。

 その様子を見届けながらディオスは外から家の中を見た。

 玄関はまだゆとりがないから物は少ないがそれでも掃除がなされており綺麗である。

「お兄ちゃん早く!」

「はいはい」

 リビングから覗くように顔を出してせかしているユリシアにディオスは呆れながら家に上がった。

「母さんは?」

「今日はお仕事だよ。もう少ししたら戻ってくるよ」

 家に入ってから気が付いたことではあるが母親であるシンシアの姿が見えずユリシアから話を聞いたディオスはテーブルに菓子が入った袋を置くと、すかさずミクが袋から菓子を取り出すとユリシアが準備した皿に乗せた。

「二人共、あまり食べ過ぎないように。夕ご飯が食べられなくなるから」

「は~い」

 ディオスの忠告に元気よく返事をするミクとユリシアは先程まで見て回った店の話で盛り上がりながら菓子を食べ始めた。

 そんな様子にディオスは本当に分かっているのかと疑問に思いながら改めて部屋の中を見回した。

 玄関からでは気づかなかったがキッチンとリビングには僅かではあるが日用品が増えていた。

 借金を返す必要がなくなりこれまで必要最小限の物しかなかった部屋には置物や家財道具が置かれている。

 見た目的には安物ではあるが今はこれが精一杯であることを理解している。

 それに、自分が少しでも働いて楽になってくれればいいと思っている。

「ねえ、部屋に来ない?」

「どうして?」

「部屋にね、かわいいのがいっぱいあるの。見ない?」

「見る!」

 そんな物思いにふけっているとユリシアが菓子が入った皿を持ちミクを連れて寝室へと連れて行こうとしていた。

「あ、行くなら少しだけ置いて行って」

 それに気が付いたディオスは急いで呼び止めるも気づかなかったのか、それとも気づかないふりをしたのか、二人はそのまま寝室へと入り、扉を閉めた。

 扉が閉まったのを見届けることとなったディオスは僅かにため息をつくと自室の扉を開けた。

 今はもう住人がいない、いや、こうして今戻って来ている住人の部屋は出た時と変わりない様子で掃除が隅々までなされていた。

「あの時のままか」

 あまりの代わり映えのない自室に思ったことが口からこぼれてしまう。それ程に変わっていない。

 屋敷を出た時に持って来た物はものすごく少ない。それに、金に換金できる物は全て売ってしまったからさらに少なくなっているし、葬儀屋フネーラに引っ越す際には調度品以外全てを持って行った。

 だから何もない自室をユリシアがこっそり使っていてもおかしくないと思っていただけに変わりない様子に驚いていた。

 そんな時、耳にガチャリと扉が開いた音が聞こえた。

 誰かと思う暇もなく次いで慌ただしい足音が響き、止まった。

「ディオ?」

 落ち着いた声にディオスは振り返り声をかけてきた人物を見た。

 ディオスの母親であるシンシアが驚いた表情で立っていた。

 どちらも何も言わない沈黙が流れて間が生まれた。その間は思ったよりも長かった。

 そして、その間が破られた。

「お久し振りです。突然の帰宅をお許しください。ただいま帰りました。母さん」

「お帰りなさい。ディオ」

 恥ずかしそうに帰宅を言ったディオスにシンシアが温かく、微笑みを浮かべて迎えたのだった。

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