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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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必中のバルビエル

お久し振りです。

長らくお休みしていましたが、再開です。

 アムブリエルは足を半歩下げ、身構えながらアドナキエルを見る。

 これはアドナキエルを警戒してではない。どの様なタイミングでも動けるようにだ。なにしろ、合図を出す相手は知らせるつもりがなければ、突然行う。待つだけ無駄なのだ。

 そう思い、構えてすぐに叫び声が上がった。

「吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

 バルビエルが巨大な力の弾をアドナキエルに向けて放った。

 手始めに、一先ずなど甘えなどない。本気で吹っ飛ばす気であり、威力が跡形もなく消し去る程の力が手加減であるはずもない。

 初弾としては一撃必殺を狙った弾であり、合図としては無駄に大きな花火である。

 迫り来る巨大な力の塊。それが放たれて迫り来るにも関わらず、アドナキエルは避ける仕草を全くしない。

「よし!」

 これを回避不能と見たアムブリエルがチャンスと見て駆け出そうとする。その時、アドナキエルが動き出した。

 アドナキエルはアムブリエルが今まさに踏み出そうとする足元目掛けて光弾(ライトバレット)を放つ。

「っつ!」

 まさかの攻撃にアムブリエルは足を出せずに、悔しく歯を噛み締める。

 そして、放った光弾(ライトバレット)がアムブリエルを止めたことを見届けてから、アドナキエルは回避ギリギリとなった距離から回避行動を取り、難なくやり遂げた。


 アムブリエルの阻止とバルビエルの攻撃回避が同時と捉えてもいい行動に、バルビエルの怒りを焚き付ける。

「くっそぉぉ!」

 避けるついで、もしくは阻止するついでと形容したくなるほど簡単にやってのけ、甘く見られたものだと、バルビエルは力の弾を数発放ち、アドナキエルが正面から光弾(ライトバレット)を放って相殺してしまった。

 本来、頭に血が上る程に怒れば的にはなかなか当たらないのだが、バルビエルの場合は逆で怒りや不機嫌であればある程に頭がスッキリする傾向があり、相手にどうすれば命中出来るのか自然と思い付いてしまう。

「これならどうだぁ!」

 バルビエルは先に放った力の弾と同数の弾を放つ。

 間髪放たれたそれを、アドナキエルは読んでいたのか、瞬時に光弾(ライトバレット)を放つ。

 力と光の弾がぶつかる直前、力の弾の軌道が動きだし、光弾(ライトバレット)を回避、そのままアドナキエルへと向い、タイミングをずらしながら全弾命中する。



 バルビエルが生み出す弾は、全て思い通りに動かすことが出来る。

 なにしろ、バルビエルはあらゆる物を弾丸にして射出、命中させるのを得意としている。それに操作をすることは容易いことである。

 これは、バルビエルに限ったことではなく四大天族と天体も操作することが出来るのだが、可能としているのは一部。しかも、その一部ですら操作出来る弾の種類が限られており、永遠と操ることは出来ない。

 例を上げるなら、先程バルビエルの弾が光弾(ライトバレット)を避けた際にアドナキエルも操作をすれば良かったのだがしなかった。そもそも、アドナキエルは光弾(ライトバレット)を含む弾の操作が出来ないのだ。天族でも強力な力を持つ存在とは言えど、全員が可能としている訳ではないことが分かる。

 だからこそ、全ての弾を繰り出すことが出来るバルビエルの腕は圧倒的に抜きん出ており、必ず狙った場所に当てることが出来る。

 それ故に、必中のバルビエルと呼ばれている。



「チッ!」

 しかし、攻撃が全弾命中したにも関わらず、バルビエルは舌打ちをした。

 何故なら、アドナキエルは守りの盾(シールド)で全てを防いでいたからだ。

 そんなアドナキエルの目はバルビエルではなくアムブリエルへと向けられていた。

 バルビエルの攻撃が全弾命中する直前、アムブリエルはアドナキエルから離れるようにして駆け出していたのだ。

 時間差攻撃に晒される中で、それすらも目の端で捉えていたアドナキエルは、流れ作業の様にアムブリエルの体を光弾(ライトバレット)で撃ち抜いた。

「あっ……」

 まさか気付かれていたとは思えず呆気ない声を出すアムブリエルは、この体は使えないと判断して新な体、分体を作り出して意識を移し、何事もない様にして駆け出す。

 いくら気付いて対処しようとも、アムブリエルの力の前では焼け石に水である。

「あれ?」

 だが、それを知っていたからこそ、アドナキエルは次発を既に放っており、行動不能にまで撃ち抜く。消滅ではない辺り、力の消費が無駄であることを理解しての対処である。

「くっ!」

 新しい分体を生み出すアムブリエルだが、意識を移す直前でアドナキエルの光弾(ライトバレット)に撃ち抜かれて妨害される。

「まさか、ね……」

 この出来事にアムブリエルは信じられないと笑う。


「よそ見すんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」

 アムブリエルの分体への意識移動を阻止したアドナキエルに向けて、バルビエルが叫びながら巨大な力の弾を数発放つ。

 防ぐのは無理と判断したアドナキエルは、瞬時に回避行動を取るが、バルビエルの操作によって、力の弾はアドナキエルを追う。

「よし!」

 アムブリエルは今がチャンスであると、素早く分体を生み出して意識を移してしまう。

 これで五体満足で動けると思った時、アドナキエルが目の前に現れた。

「なっ……」

 驚く暇なく、アドナキエルはアムブリエルを軽く押して、バルビエルが操作する力の弾にぶつけて難を逃れた。


 まさかの展開、予想しがたい対応にバルビエルは歯噛みし、

「ちょっ、痛いし何するんだよ!」

 せっかく新しい体に移れたのに、盾代わりに消滅させられ、危ういところで後方の見張りをさせていた分体に意識を移したアムブリエルが、扉を再び潜ってバルビエルの背後から文句を言う。

 だが、そんな悔しさたっぷりの2人の様子にアドナキエルは何も言わず、冷たい目線だけを向ける。

「ケッ、自分の相手じゃねえって言いやがって!」

「そうだろうね」

 格下相手と見下ろすアドナキエルに嫌みたっぷりに吐き捨てるバルビエル。その言葉にアムブリエルが同意する。

「本気で僕達を相手にする気はないみたいだよ、アドナキエルは」

 それは、バルビエルの同意ではなく、アドナキエルの本心を見抜いての言葉である。

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