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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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受け入れてもらえない感情

アドナキエルが自分達よりも早くにヴァルハラ城で待ち構えていた。

アムブリエルは予想していた為に対して驚いてはいないが、バルビエルは顔を歪ませた。

「おい。何だってアドナキエルがいる?」

「僕達の目的を知って、先回りしていたんだよ」

「はぁ?おい、おかしいだろが。ここは天声讃(クアルテット)がねえと入れねんだろうが?」

「一部はなくても入れるってことだよ。モルティアナだってそうだろうし、アドナキエルも同じでおかしくないはずだ。だって、僕の一部じゃないんだからね」

この2人なら主から認められて、自由に出入りしておかしくないとアムブリエルは言う。


そもそも今のアムブリエルは、自身の分体の居場所を把握出来るだけでなく、動きを操る事まで力を取り戻している。

だが、分体でない天族の動きをアムブリエルは把握することが出来ない。何より、最も警戒をしていたのがアドナキエルである。

現在の天体体制になってから、アドナキエルは一度も森羅万象(ユニバース)を使っておらず、天術を用いる戦いも数える程度でしかない。

つまり、異名だけが分かっていながらも実力は未知数。よくも少し前までその事を気にしなかったものだと恐怖が募る。

「差詰め、アドナキエルは僕達を監視、拘束していたってことだよ。だから、それを命じた主と聞き従っていたアドナキエルが憎い!」

感情を爆発させて本心を暴露するアムブリエル。その感情は一瞬、他者を叩きのめすことを疎まないバルビエルに恐れを抱かせた程である。


それまで、アムブリエルの様子を静かに伺っていたアドナキエルは、スッと片腕を上げて、一気に下した。

瞬間、大量の光弾(ライトバレット)がアムブリエルとバルビエルに襲い掛かかり、2人は直撃する直前で間一髪回避する。

「くっ!」

「くそっ!アドナキエル!」

「私を恨むのは構わないが、主を侮辱することはやめてもらおう」

冷静に切り捨てたアドナキエルは、一瞬にして次発の光弾(ライトバレット)を生み出すと素早く放った。

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!」

バルビエルは叫ぶと、アドナキエルが放った光弾(ライトバレット)を、自分の純粋な力を弾にした物で正面からぶつけて打ち消した。

「テメェのそのツラ、透かした様に何でも見透かした顔が気に入らねぇ!」

アドナキエルの冷静な態度、無表情の素顔がバルビエルに点っていた炎の威力を上げる。

元々、バルビエルはアドナキエルを心底嫌っていた。一応、自分が天体で、アドナキエルが天体を纏めているからと従っていただけであり、律儀に従ってはいない。それどころか、いつか本気で叩きのめそうとまで思っていたほどだ。

何故こんな危険な天族が天体におり、よくも今まで問題にならなかったのか。恐らく、アドナキエルが知っていながらも気にしていなかったからであろう。

「ならば、何だと言う?」

それを肯定する様にアドナキエルは取り合わずに流す。


自分の気持ちが全く伝わらないことに、バルビエルの炎が更に上がる。

「アドナキエルゥゥゥゥゥ!!」

「待つんだバルビエル!」

アムブリエルが止めるのも虚しく、バルビエルは力で出来た見えない弾をアドナキエルに放ってしまう。

それを感じてアドナキエルは、バルビエルが放った弾と同じ数の光弾(ライトバレット)を放ち全てを打ち消す。

が、直後に巨大な力の塊が弾となって迫っていた。最初に放った弾は、光弾(ライトバレット)を放たせて次弾を見えなくさせる為のカモフラージュだったのだ。

そして、迫り来る巨大な弾を、アドナキエルは横に避けて回避して、バルビエルが目前にいるのを目にする。

巨大な弾すらもカモフラージュであり、本命はバルビエルが自分の手でアドナキエルの息の根を止めることであったのだ。

「死ねぇぇぇぇ!!」

突き出された掌から放たれるゼロ距離からの力の弾。

明らかに回避不可とも言えるそれを、アドナキエルは掌よりも奥、バルビエルの懐に潜り込んで回避してしまう。

普通では行わない、あり得ない方法に驚愕するバルビエルを一瞬の隙を付いてアドナキエルは投げ飛ばしてしまった。

「がっ!?」

「だから言ったのに……」

自分の元に戻って来たバルビエルにアムブリエルは呆れた表情を浮かばせる。

(本当にどうしようか?)

しかし、アムブリエルもアドナキエルとはどうやって戦えばいいのか分からないでいた。

アドナキエルはアムブリエルだけでなく、全ての天体の力を知っている。対して、アムブリエルはアドナキエルの力を把握していない。

力押しで数任せもいいが、何故かそれは危険と警告を鳴らしている。

「本当に、このタイミングで最大の関門がアドナキエルってのは、嫌なものだ」

嫌だと本音を漏らすアムブリエルだが、言葉はどことなく軽口である。危険と警告が鳴っている一方で、本能では、この場を切り抜ければ目的地がすぐそこであると訴えているのだ。

それが天族であるからか、主である神によって作られた母胎回帰的かは分からない。だが、そうであると信じて疑わないのだ。


「バルビエル、足止めをお願いしてもいいかな?」

「はぁ?何言ってやがる。そんなもん、自分で作れやがれ!」

「あぁ、やっぱりそう言うか」

今のバルビエルの気持ちを考えると、足止めよりも、やりあっている隙に抜けた方がいいのだが、それでは不安がある。

「でも、僕が先に行けば、バルビエルの目的も達成したとも言えるよ」

だから、少しは協力してほしいと訴えると、バルビエルは少し間を置いて、面白くないと顔を歪ませた。

「ケッ、足引っ張んじゃねえぞ!」

「なるべく頑張るよ」

協力を取り付けたことで、2人はアドナキエルを前にして構えた。

今まで戦った天族の中でも強敵に値するアドナキエル。天体同士の戦いが幕を上げた。

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