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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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神がいる場所へ

ヴァルハラ城の廊下を歩きながら、アムブリエルは背後にいるバルビエルに話始めた。

「そもそも、おかしいと思わなかった?どうして、あの4人を殺さなかったのか?」

「面白くねかったな」

「バルビエルならそう言うか」

四大天族を殺さなかったことは、気に入らない存在や物を徹底的に打ちのめすバルビエルにとって、とても我慢出来る様なものではない。

「大体なぁ、ヴァルハラ城(ここ)に入るだけなら、塔の結界を壊すだけで十分じゃねえかよ。ついでに奴らもやっちまえば、残ったザコは手出ししてこねえだろ。まあ、手ぇ出そうが出すまいが、全部潰すがな」

聞いてもいないのに、バルビエルが言わなくてもいい本音を言う。さすがに、それは時間の無駄なのではないかと思ってしまうが、それで強敵がいようが増援が来ようが本人には関係ないことだ。

「確かに、結界の解除は塔の中に隠されていた装置を壊さなくても、四大天族の4人を殺せば簡単に解除されるよ」

ヴァルハラ城を守る結界は、各四大天族の塔に鎮座されている装置、神がそれっぽくしたいからと無駄に凝った巨大な宝玉と纏め役の力によって張られている。

しかし、無理矢理結界を解除するとなると、宝玉の破壊か纏め役を倒すしかない。

宝玉の破壊の場合、置かれている場所を把握しなければならず、更には、それを守る四大天族の猛攻を潜り抜けなければならない。

それなら纏め役を倒せばとなるが、四大天族を纏めている存在が簡単に殺られるはずがない。なにより、宝玉を守る最後の壁が纏め役であるのだが、宝玉を壊す方よりも場合によっては難しい。

だが、この一件で取った手は、四大天族の纏め役を誰1人と殺さず、気絶、戦闘不可、宝玉の破壊で結界を解除するという縛りでやり遂げた。

それ相応の犠牲もあったのだが、アムブリエルにして見れば、自身の力で新しく生み出せる為に痛手にならない。もしかしたら、殺さない縛りは問題ではなかったのかもしれない。


「結界だけならそれでいいんだよ。だけど、今回の場合は彼等には生きてもらわなければならなかったんだよ」

「後々面倒になる奴らをか?」

「そう。面倒だけど必要なことだからね」

そう言って、アムブリエルは四大天族から手に入れた四つの武器、天声讃歌(クアルテット)を宙に浮かばせる。

「この先、これが必要になるからね」

2人の目の前には、いつの間にか、固く閉ざされた巨大な扉が立ち塞がっていた。



* * *



モルテはヴァルハラ城の白亜の廊下を駆けていた。

「アムブリエルがフレイア達を殺さなかったのは、この先へ行く為だ」

「先ってことは、神様が居るところですか?」

「そうだ」

その後ろを追い掛けるディオスは先程質問した答えに驚いた表情を浮かべた。

「あの場所は今、固く閉ざされている。その先へ行くには鍵である天声讃歌(クアルテット)が必要となる」

「四大天族が扱う武器が鍵!?どうして?」

「簡単に言うならば、天声讃歌(クアルテット)がなければ入れないからだ」

神が控える場所に入る方法でよく知られているのが、神に呼ばれるか、四大天族の纏め役が持つ天声讃歌(クアルテット)の所持である。

「だが、天声讃歌(クアルテット)を持っていたとしても、それは四大天族の纏め役が所有者であり、与えられた特権だからだ。他の天族が持った所で意味はない」

「だけど、それじゃどうしてアムブリエルは天声讃歌(クアルテット)を奪ったんですか?」

四大天族が持って意味をなすのに、アムブリエルが持っても意味がない。


それを指摘するディオスだが、モルテは首を横に振る。

「あの場に入るもう1つの手が、天声讃歌(クアルテット)を全て集めることだ。四大天族が動けなくなった時、代わりの者が開けて危機を知らせる為の方法なのだが、今回はそれを逆手に取られた」

そして、精密に調べた上で行ったことであるとモルテは言う。

「アムブリエルは緻密に計画して奪っている。今のところ、計画に狂いはないだろう」

「何故、そう言えるんですか?」

アムブリエルの計画が良好と聞かされて、ディオスはその理由を問う。

「フレイア達を殺してはいないからだ。天声讃歌(クアルテット)森羅万象(ユニバース)は専用の武器であり、所有者が死ぬと無くなるからだ」

「つまり、この先に行くには天声讃歌(クアルテット)が必要。だけど、使う為には四大天族が生きていないといけない……それって、その為に見逃されたってことですか!?」

「そうだ」

衝撃の事実にディオスの顔が僅かに青くなる。

フレイアと合流した際、生きていて良かったと安堵したが、それは間違いであった。

フレイアが負けたと言うことは、あの場所に辿り着く前にフレイアは殺されておかしくない。いや、殺されていた。殺されていない理由を考えるべきであったのだ。


『だらしないな』

「っ……」

そう思っていると幻聴が改めて聞こえてきた。

だらしないなとまでは思わない。けれども、アムブリエルが何手も先を打っている。そして、こちらが得られている情報が少く、追い掛けているのがやっとの状態。

(いや、追いかけているけど追い付いてない)

むしろ、徐々に離されている気がして不安が募る。


アムブリエルが天声讃歌(クアルテット)を使って神が控える場所へ入るのが秒読みになっているんだのだろうと危機感を募らせるディオス。

そんなディオスにモルテが声をかける。

「だが、入るのに天声讃歌(クアルテット)を必要としない者もいる。私もその内の1人だ」

「えぇ!?」

先程、天声讃歌(クアルテット)は鍵であるのに鍵なしで入れるのはどう言うことかとディオスは叫ぶ。

「私は代理だ。あの場所に入れなければ代理としては務まらん。最も、代理らしいことはしてはいないがな」

「は……はぁ……」

そう言えば、モルテは神から代理を任されていたのだと気が付いて力が抜けていく。

天体を統括し、神から代理を任されているモルテは本当に何者なのかと疑問が募る。

「ん?その内の1人ってことは、まだいるんですか?」

「いる。誰よりも早くにあの場所にいるはずだ。私が信頼しているのだからな」

ディオスの疑問に答えたモルテ。その表情は笑ったものであった。



* * *



アムブリエルは巨大な扉の前でセラフィナ、フレイア、クレメンス、ダグザから奪った天声讃歌(クアルテット)を掲げた。

そして、天声讃歌(クアルテット)が輝き出し、巨大な扉は独りでに開かれた。

「あの襲撃から姿を見なくなったからどこに行ったのかと思ったけど、やっぱりここにいたんだね」

開かれた扉。その先を見てアムブリエルは予想通りであったと呟く。

「アドナキエル」

天体の纏め役にして最古の天族の1人、アドナキエルが開かれた扉の先で待伏せていた。

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