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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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廻天のアスクレピオス

再開です。今までお休みしていて申し訳ございません。

これからは、無理ない程度でやっていきます。

「貴方は!?」

 セラフィナは驚きの声を上げた。何故ならそこには、アスクレピオス。そして、行方不明となっていたファズマがいたからだ。

「ファズ!」

 ミクはファズマを見ると、駆け出して抱き付いた。

「ファズ、無事だった!……よかった!よかったよぉ……」

 行方不明と聞かされ、今の今まで会うことがなかっただけに不安が知らない内に積み重なっていたミクは、ファズマと再会したことで涙を流していた。

「心配かけたみてえだな。わりい」

 そんなミクをファズマは頭を撫でて慰める。

 ファズマとて、ミクの事が心配でなかったわけではない。1人で逃げ回り、四大天族に保護されたと聞かされても、心の中では不安であったのだ。

 しかし、こうして再会して、1人でよく頑張ったと労いたい。……と、思ったのだが、

「あと、服変わってる」

「うるせえ。ミクもだろ」

 その言葉で、いつものミクであったと僅かに呆れる。

 ちなみに、ファズマの格好は服がボロボロになってしまった為にアスクレピオスから与えられたもの。ミクの服装まで変わっているのは、何日も着続けていたのを気にしたセラフィナが部下に命じて着替えを与えたからだ。

 四大天族のお母さん担当は気配りが出来ていた。


 ファズマとミクの再会をよそに、四大天族を含めた天族はアスクレピオスを警戒していた。

「そんなに睨まないで下さい。私のことは、モルティアナ様から聞いておられるはずです」

 けして自分は敵ではなく味方と言うアスクレピオス。

 実際にその通りであるのだが、アスクレピオスと呼ばれる天族の存在を知らないセラフィナの部下達は警戒を解かず、セラフィナとフレイアも半信半疑なのか、動きを注意深く見ている。

「何故、貴方がここに?」

「決まっています。アムブリエルを止める為に。そして、あなた達を助ける為にです」

「助ける、じゃと?」

 セラフィナの質問に答えたアスクレピオスにフレイアが問い返す。

「必要ありません」

 しかし、セラフィナはアスクレピオスの助けを許否する。

 モルテから事情を聞いてはいるが、アスクレピオスは天体に所属し、その監視役という複雑な立場にいる。全てを信じていない訳ではない。だが、アスクレピオスとは長く会っておらず、今更現れた本心が分からない。

 この拒絶はアスクレピオスの本心と目的の確認。ハッタリである。

「本当にそうですか?」

 セラフィナの本心に気付いているのか気付いていないのか、アスクレピオスは問い返す。

「今の貴女方は満身創痍のはず。力を使うことはおろか、怪我を治すことも出来ないはずです」

 そう言われて、セラフィナは図星であると顔を歪ませる。フレイアは力は残っていても、治癒は専門でない。

 このままでは部下の治癒、これから出切るであろう怪我の治癒が出来ないどころか、モルテの足手まといになることは見えていた。

「だからこそ、私が来たのです。私の力がどういったものかは、分かっているはずだ」

 アスクレピオスはそう言うと、前もって貯めておき、いつでも放てるようにしていた天術を解き放つ。

治癒の輝(ヒールピュアラ)!」

 アスクレピオスの頭上に光が上昇したかと思うと砕け散り、砕けた光が怪我をした天族に降り注ぐと、あっという間に傷を癒してしまった。

「これは……」

「すごいな……」

 その光景にヴァビルカ前教皇は驚きで開いた口が塞がらず、ハイエントは呆然とする。

 治癒されたセラフィナの部下達は、一つの術で一瞬にしてやってのけたアスクレピオスに驚き戸惑いを向けている。

 一方で、セラフィナとフレイアは、やれやれとアスクレピオスを見る。

「……廻天の名は衰えておらぬと言うことか」

「こんなものを見せられれば、凹んでしまいますね」

 最古の天族にして、廻天のアスクレピオスの異名と実力を目の辺りにして、2人はこの手の域には達することが出来ないと、改めて理解した。


 この場の騒然を他所にアスクレピオスは口を開いた。

「さて、信用を得られたようですし、本題に入りましょう」

 その言葉に全員がアスクレピオスを凝視する。

 本題と言うよりは目的は治癒では無いのかというのが全員の総意であるが、どうやらアスクレピオスの目的は違っているようだ。

「どういうことじゃ?アスクレピオスの目的は何じゃ?」

「先程申した通りです。しかし、このままではどうすることも出来ない。特に、四大天族であるセラフィナは」

 その言葉は痛いところを突いていた。現在のセラフィナは力を使い果たしている。

「セラフィナ、契約をしている2人の天眷者との契約を解きなさい」

「えっ?」

 アスクレピオスの大胆な申し出にセラフィナの声がこぼれる。

「待て!そうすれば、こいつは天眷術を使えなくなるぞ!」

 天族には術で劣るが腕は確かであるヴァビルカ前教皇が天眷術を使えなくなるのは困るとハイエントが反発する。

 セラフィナが契約している天眷者はヴァビルカ前教皇と、エクレシア大聖堂にいるアロイライン教皇のみ。しかも、天眷者として実力が相当のものである為に、突然天眷術が使えなくなれば問題である。

「私が代わりに契約を行えば天眷術は使えます。そして、セラフィナは力の回復に勤めるべきです」

「……確かにそうですね」

 アスクレピオスの申し出はセラフィナにとって有難いものであった。

「よいのか?」

「今はそれしかありません」

 確認を取るフレイアにセラフィナは決めたことだからと頷いて、ヴァビルカ前教皇を見る。

「よろしいでしょうか?」

「セラフィナ様が決めた通りに」

 ヴァビルカ前教皇も異議はないと頷く。

 これにより、セラフィナは現在契約している2人の天眷者との契約を一時的に解除。アスクレピオスがヴァビルカ前教皇と仮契約を済ませてしまう。


「なんかあっさり」

「つうか、お前ってそんな面倒見良かったか?」

「ファズマは私を何だと思っているのですか?」

 ミクの感想に釣られてアスクレピオスがやったことにファズマが毒を吐く。これにはさすがに、聞き捨てならないとアスクレピオスが突っ込みを入れた。

 手始めに助けに訪れたはずが、何とも言えない纏まり方をするのであった。

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