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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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全ては計画通り

 セラフィナはアスモデルが裁きの光(ジャッチメント)で消滅したのを見届けると、部下に対応させているズリエルに向き直り、再び天術を放つ。

裁きの光(ジャッチメント)!」

 直後、太く輝く光の柱がズリエルに降り落ちる。

 セラフィナの天術の気配を感じていた部下達は落ちる直前に対応していた者全員が離脱したことで巻き込まれてはいない。

 そして、ズリエルはどうなったか。森羅万象(ユニバース)のアストライヤーを高らかに上げて裁きの光(ジャッチメント)を割いて防いでいた。

「この程度か」

 アストライヤーの力を使って防げる程度の天術に落胆し、調整の力を発動。自身とセラフィナを含む天族の力を均等にする。


 しかし、それがセラフィナの狙いでもあった。

「勘違いをしてはおりませんか?」

 そう言って戦輪、天声讃歌(クアルテット)のスダルシャを手にすると、ズリエルの上空へと投げる。

 その更に上にはもう一本の裁きの光(ジャッチメント)の光。

 セラフィナは全ての力を使い裁きの光(ジャッチメント)を二本、時間差で発動する様にしており、まさにもう一本が放たれようとしていた。

 そして、力を使い果たしたセラフィナにズリエルは周りの部下たちをも巻き込んで調整を行った。力がカラであったセラフィナに力を与え、周りの力が少ない天族に騙されてズリエルは逆に力を減少させてしまった。

最高審判の輝き(ジャッチメント・レイ)!」

 スダルシャによって増幅、さらには空いた穴を通った裁きの光(ジャッチメント)最高審判の輝き(ジャッチメント・レイ)へと昇格したことで、今のズリエルでは防げない破壊力を持って消滅させた。



 ようやくズリエルとアスモデルを倒したセラフィナは一息入れる間もなく部下に指示を飛ばす。

「怪我をした者はすぐに治してください。動ける者は周囲を……」

 瞬間、セラフィナが何かに弾かれる様にして吹き飛ばされて地面を転がる。

 あまりな展開に部下達が唖然とするが、さらに拍車を掛けたのが……

「勘違いをしているのはセラフィナ、お前だ」

 倒されたアスモデルがセラフィナを不意討ちで背後から吹き飛ばしたのだ。

「な、何故、アスモデルが……」

 信じられないとセラフィナは消えそうな声を出しながらでアスモデルを見る。

「それは簡単。僕がいるからだよ」

 追い打ちをかけるように森からアムブリエルが現れて真実を言う。

「僕がいる限り、アムブリエルやズリエルを倒しても何度も復活する。何故なら、彼らは僕の力の一部、真の分体だからね。それはセラフィナ、君だって分かっていただろう?」

 予想はしていたが事実であったことを最悪の展開で突き付けられたセラフィナ。声に出してその事を言いたかったが声を上げることは出来なかった。

 何故なら、アスモデルの一撃でセラフィナは重症を負ってしまい、次第に意識が朦朧となっていたからだ。

 アスモデルの時に使った瞬間治癒は2発の裁きの光(ジャッチメント)を使ったことで、力が残っておらず発動出来ない。

 治癒だけなら部下の誰かがセラフィナにかければいいのだが、間にアムブリエルとアスモデルがさえぎる様にいる為に出来ない。もしも、治癒されたとしても、力を使い果たしたセラフィナが敵うはずがない。

 2人を倒すにはそれしかなく、その結果としてこの様な展開となって無力さを抱く横で、アムブリエルがセラフィナの手から離れ落ちたスダルシャを拾う。

「これは預かっておくよ」

 その言葉を聞いた瞬間、セラフィナは意識を失った。





「何が起きたというのじゃ!?」

 スペルヘイムを委せていた部下が全員倒されている上にヴァルハラ城を守るために張っていた結界が今まさに消えたことにフレイアは驚く。

 ハナエルを倒す短い間に、しかも、自分が気付くことなく戦闘特化の部下が全滅していることはあり得ない。

「そんなの簡単だよ。ここにいたのがハナエルだけじゃないってことだよ」

 軽快に教える声の主はスペルヘイムの入口から現れた。

「ガムビエルか。なるほどのう。お主の力で部下に化けたのか」

「変心だよ。化けたって言い方は酷いよ。だけど、少し違うよ」

「なんじゃと?」

 睨むフレイアに微笑み返すガムビエル。だが、その姿はハナエルとなり、フレイアの体を動けなくする。

「なっ、何をした!!」

「簡単だよ。ハナエルの力を使ってフレイアの動きを封じたんだよ」

 ガムビエルは変心した相手に力があれば使うことが出来る。ただし、死神や神に変心出来ても、その力を使うことは出来ない。

「ここにいる部下が倒れているのはね、ハナエルの力を使って眠らせたからだよ」

「馬鹿な!あの時は不覚を負ったがその後は……」

「見ていなかったよ。フレイアが退治するハナエルには」

「まさか!?」

 ここまで来てフレイアは仕組みに理解した。

「そう。フレイアがここに来る前に前もってボクはここにいた。ハナエルが同士討ちをさせたのはフレイアの目を部下から、部下の意識をハナエルから離す為。だから、誰も味方の中にハナエルがいることに気が付かなかったよ。そして、今度はフレイアが目を離してくれなかったからやり易かったよ」

 これではまるで全てが計画。それも、ハナエルが倒されることも含めて。いや、ハナエルはこうなることを承知の上で倒されたのだ。そして、先程言った妙な言葉。今のガムビエル現状を読み取ると、全ての行いが布石であったのだ。


火炎槍(フレイムランス)!」

「おっと!」

 動けないフレイアは炎の槍を放つが、ハナエルの未来視で分かっていたのか簡単に避けてしまう。

「やっぱり、力が余っているよ」

 ハナエルとの戦いにフレイアは力をそれほど使っていない。

「動けなければ勝てるとでも思っていたか?」

「ううん。フレイアがこうするんじゃないかってことは分かってたよ。だから、戦わない」

 そう宣言したガムビエルに、フレイアは怒りを現す。

 だからこそ、フレイアは気付けることに気づけなかった。今のガムビエルの姿がハナエルであることに。

「眠って」

「しまった!」

 ハナエルは目を通して相手に暗示をかける。そして、フレイアはガムビエルを見ていることで条件を満たしてしまったのだ。

 それに気が付くも遅く、フレイアは逃れられない眠りへと落ちた。

「……ふぅ。さすが鮮血のフレイア。眠りに落としても、ここまで抵抗されるなんてね」

 元の姿に戻ったガムビエルは額に浮かんだ汗を拭い、覚める気配がないフレイアに近づくと、持っていたレーヴァテインを奪った。





 鈍い音が二つ同時に響いた。

 一つは盾を叩き付けたことで首が落ちる音。もう一つは胴体を貫いた音だ。

「ぐっ……」

 アイギスの隙間を掻い潜ったスヴェルに左肩と右胸を貫かれたダグザは呻く。

 バキエルの森羅万象(ユニバース)のスヴェルは守りだけでなく攻撃にも転換する。

 幸い、バキエルはアイギスで首を叩き落とすことで倒したが、ほぼ同士討ちの様なものだ。

「がはっ」

 ダグザは口から血を吐き、アイギスから手を離して仰向けに倒れる。

「ダグザ様!」

 慌てて駆け寄る部下を見ながらダグザは思う。

(ああ、しくじった。それにうるさい。自分で治せるってのに……)

 大袈裟な、と続けようとした直後、駆け寄っていた部下が、あらぬ方向へと吹っ飛ばされる。

「なっ!?」

 これには慌ててダグザは体を起こす。

 その間にも部下達は反撃も防ぐ暇もないまま、見えない攻撃であらぬ方向へと飛ばされ、気を失ったり死んでしまう者が続出し、最終的には全員がどちらかになる形で倒された。

「ったく、俺は暴れじまいかよ!」

 苛立ちを隠すことなく、しかも、今さっき暴れたにも関わらず数に入っていないのか現状に不満を抱く存在が姿を現す。

「おいおい、バルビエル、かよ……」

 最も相手をしたくない存在に嫌な表情を浮かべ、ダグザは左肩と右胸に治癒をかけ、アイギスを持ちながら立ち上がる。

「ああ?何だその様は?フラフラじゃねえか」

 誰の目から見てもダグザは足元がしっかりしているとは言えなかった。

 何故なら、治癒したとはいえ完治していない。ウェルキエルとバキエルの2人を相手にかなり力を使い、そこに治癒だ。バルビエル相手にする力を残そうとすれば、残念ながら完治は無理だ。


「しかも、力も残ってねえじゃねえか。そんなんで勝てると思ってんのか?ああ?」

 四大天族最弱に舐められたものだと嫌悪感を抱いたバルビエルは容赦なくダグザを痛め付け始めた。

 元々、バルビエルはダグザの相手などしたくなかった。弱いからだ。やるならフレイアかクレメンスであったが、アムブリエルの消去法によってダグザへと回された。

 最弱へ回された腹いせがバルビエルの怒りの燃料となり、アイギスを構え、途中で弾き上げられて防ぐ手段がなくなったダグザを容赦なく叩きのめす。

「ストーーップ!バルビエルやり過ぎ!死ぬから止め止め!」

 様子見の為にアムブリエルが訪れなければダグザは死んでいただろう。


「ああ?何でだ?やるなら殺すだろ?」

 止められたことに不機嫌を隠さず文句を言うバルビエルに、何を言っているんだとアムブリエルが慌てる。

「いや、話したよ!四大天族は殺さないって!話し聞いてよ!」

「知るか。つうか、何で殺さねえ?」

「それも話したよ!殺したら天声讃歌(クアルテット)が消滅するからって!僕達には結界を解いてヴァルハラ城に入る必要があるけど、天声讃歌(クアルテット)は目的の為に必要だから四大天族は殺さないって!」

 話を聞けと文句を言いたいが、バルビエルに何度いっても実行に移さない。移す時は戦い以外であるから、それ以外で云っても効果がないことに溜め息が漏れる。

「そういうことだからアイギスは回収だ」

「他はどうだ?」

「全部終わったよ」

「チッ!」

 アイギスを持って質問に答えたアムブリエルに、バルビエルは舌打ちをする。

 むしろ、どれだけ戦えることを期待していたんだと突っ込みたいところだ。

「これで全部揃った。それじゃ、ヴァルハラ城に潜入しようか」

 結界がなくなり自由に入れるようになったヴァルハラ城にアムブリエル達は目的の為にと向かった。

アムブリエル達の目的は結界の消滅だけでなく、四大天族の天声讃歌(クアルテット)の回収も含まれてました。

何故必要としているのかはこれからの話で。

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