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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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復元のマルキダエル

リズム戻すとか言った自分を殴りたい……

 悟られない様にと力の増幅を最小限にして存在を隠した天声讃歌(クアルテット)のトリアイナ。

 それをクレメンスは回転させながら自分の定位置に引き寄せて構えて、ふう、と一つ息を吐く。

(さすがに、これ以上は隠し通せんな)

 今まで悟られない様にと工夫していたが、球体結界(シーリング)からの脱出が決め手となってマルキダエルに悟られた。

 悟られたからには、もはや隠す必要はないと判断。トリアイナを見せるに至ったのだ。



「筋肉に騙された」

 嫌そうな顔をして毒舌するムリエル。

 筋肉イコール脳筋というイメージもなくはないが、クレメンスは四大天族だ。頂点に立つ天族がただの脳筋であるはずがない。

「その筋肉に騙されたムリエルが悪い」

「身内から言い返された!?」

 悪態を吐くムリエルにマルキダエルが、それは違うと反射して罵る。

 思っていない方向からののブーメランにムリエルはショックを受ける。

(そもそもがおかしかったんだ。ムリエルの球体結界(シーリング)に閉じ込められれば、四大天族といえど焦る。だが、クレメンスにはそれがなかった。予想してたのか、それとも……)

 クレメンスが考えていた可能性を分析するマルキダエルは、言い返されたことで苦痛の表情を浮かべるムリエルに静かに言う。

「ムリエル、クレメンスは俺が倒す。サポートを頼む」

 突然、自分から言い出したマルキダエルにムリエルが意味を理解しきれないでいると、表情に決意が浮かんでいたことに気が付く。


「ラビュリントス」

 マルキダエルの手に両刃斧の森羅万象(ユニバース)が握られた。

「こんな凶悪な物、エンケラドス相手してすぐに使いたくなかったが……さすがに、仕方ないよな!」

 言って瞬時にクレメンスに肉薄するまで接近したマルキダエルはラビュリントスを振り下げる。

 直後にトリアイナとラビュリントスがまじわる甲高い音が響いた。

大海原の渦潮(メイルシュトローム)!」

大海原の渦潮(メイルシュトローム)!」

 クレメンスが叫び、後にマルキダエルも同じ天術を叫ぶ。

 すると、本来は大きな渦を発生させる渦が小さく、海上で発生した竜巻の如く、向かい合う敵に向けて放ち、相殺される。

 相殺された反動を利用して、無理矢理ラビュリントスの握り手を変えて、拳を振り下ろす。

硬質(ハード)守の盾(シールド)!」

 順に唱えて拳を振り下ろすマルキダエルだが、クレメンス足払いをして体勢が崩れた僅かな時間を利用して、トリアイナをラビュリントスに深く絡め入ると、横へと放り投げる。

「くっ!」

 誘導されるがまま放り投げられたマルキダエルは、何を思ってかラビュリントスをクレメンスに向けて投げ付けた。

 元々、ラビュリントスの持ち手の柄は短く、投げやすく、振り回しやすい。反面、間合いを積める必要があり、武器同士が戦闘で絡み合えば呆気なく手放してしまうこともある。正直、長物を持つクレメンスとの戦いはやりにくいものなのだ。


 回転しながら迫るラビュリントスを、クレメンスはトリアイナで弾き飛ばす。

守りの盾(シーリンド)!」

 ラビュリントスの反対からムリエルが結界を突出させるが、クレメンスは前に出て回避してマルキダエルへと迫る。

大海原の渦潮(メイルシュトローム)!」

 マルキダエルは今度はと渦を発生させる。本来の形でたる渦はクレメンスの両足を飲み込む。

「戻って来い!」

 弾き飛ばされていたラビュリントスを手元に寄せて、第二投を投げる。

 一度防がれた攻撃が二度目で通るはずもなく、首をによって再び弾き飛ばされる。……が、直後に第三、第四とクレメンスに襲い掛かる。ラビュリントスが一つしかないにも関わらずだ。

氷刃(フローズンブレード)!」

 これを終わらせる為にクレメンスは氷の刃を地面から突き刺すように出現させる。それも、ラビュリントスの真下目掛けて、打ち上げて止める。

球体結界(シーリング)!」

迷いの霧(ミスティック)!」

 ムリエルの結界を、体を切り上にして回避。同時に足元の渦からも脱出。


「ムリエル、もう一度出来るか?」

「出来るけど、今度は転移(テレポート)で逃げられそうだから期待はな……」

「そうか」

 逃げ回れるのも、さすがは四大天族と称えるマルキダエル。

 だが、これ以上の戦いは望んでいないと、覚悟を入れる。

「構成は火。現象は熱。対象はここら一帯。具現するは灼熱!」

 瞬間、辺り一帯の地面から水が蒸発し始め、川を流れて湖に貯まる水が勢いよく量をなくせば、地面の草木からも水分が無くなり枯れて燃え出す。

 ヘルヘイム周辺は火の海と化した。

「うわっ!あっつぅぅぅ!」

 逃げ場がない灼熱地獄だが、ムリエルはすぐに結界を張って適度な温度にし、ついでに、流れている水を塞き止めて、少しでもクールダウンを押さえる

 そして、クレメンスにとっては、自分が戦いを有利に進めているものが無くなりつつあることに歯噛みする。

「クレメンスの強みは豊富な水だ。だから、場所の環境を変えた」

 そう言うマルキダエルの足元には、枯れた草木ではなく、砂であった。これでクレメンスが得意とする大技の使用を封じたこととなる。

(知っていたから復元したが、俺の力も今ので大分減ったからな……)

 慎重に、とは言い難い。これほどまでの自然環境を再現したのだ。何かしらの成果を作らなければ割りに合わない。それは、今までクレメンスの術をあえて真似るだけであったが、今度はそれを含めた大盤振る舞いだ。

「そろそろ決着付けようじゃないか、クレメンス」

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