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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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球体結界

昨日、投稿出来ず申し訳ございません。

 ガコンっと、音を表現したくなる様に、結界がクレメンスを閉じ込めた。

 結界は大体、クレメンスを包み込む程度の大きさで、それ程大きくはない。

球体結界(シーリング)か!」

 ムリエルが得意とする結界手法がクレメンスに悟られることなく、見事成功する。


 球体結界(シーリング)は、球体の形にした結界の中に標的を封じ込める天術、もしくは全方位の攻撃から自分の身を守る術である。

 結界は本来、外敵からの攻撃を防ぐ為のものであるが、捕獲した標的を捕らえて閉じ込めるという、発想を逆転させたものである。


 ムリエルは球体結界(シーリング)をクレメンスに破られない様に強度を上げてから、勝ち誇った標的を浮かべる。

「そういう、ことだ!」

 腕を振るうと同時に、球体結界(シーリング)内側の結界部分の一部がクレメンス目掛けて突き出る。

「ぐっ!」

 狭い球体の中でクレメンスは一発目を掠りながら避ける。

 突き出て来た結界が狙った場所が胴体であるとは言え、それは回避可能な場所。ムリエルなら好きな場所から好きな所へ狙うことなど造作でない。つまりは様子見である。

 そんなことに気が付きながらも、けれどもどうすることも出来ずに、結界に背中を預けてしまう。

「まだ行くぞ!」

 二発は背後からの鋭い結界、三発目は目の前から顔面目掛けてと、クレメンスに向けて同時に結界を突き付ける。

守りの盾(シールド)!」

 今度は避けることが出来ないと、クレメンスは自分の体の周りを包む様にして結界を張る。

 強度の割合は、背後が8、顔面が2である。

 咄嗟の判断であったとは言え、背後から突き刺そうとしていた結界はクレメンスの結界に阻まれ、顔面への結界は防ぐことが出来ずに直撃するも、血肉の破片が散らばるという結果にはならなかった。

「防ぐかよ」

 今のを防がれると思っていなかったムリエルは悔しそうに言う。

(それにあの固さ、さっきまでよりも固いな。少し本気出したか?)

 先程はクレメンスの攻撃力を上回った防御力で撃退したムリエルだが、今度はクレメンスの防御力がムリエルの攻撃力を上回った。

 最も、お互い、まだ本気を出していないのだが。


 顔面に結界が直撃したにも関わらず、クレメンスは顔をムリエル達に向ける。

氷結槍(アイスランス)!」

 クレメンスはムリエルの足元、加えて少し後で控えるアムブリエルとマルキダエル目掛けて放つ。

 例え球体結界(シーリング)に閉じ込められたとしても、外側に攻撃が出来ないわけではない。

守りの盾(シールド)!」

 飛んできた氷の槍を避けて、後ろにいる2人を結界で守るムリエル。

「瞬時に攻撃するって、痛みとかないのか?」

 クレメンスの反撃にアムブリエルが呟く。いくらか予想出来ていたことと、ムリエルの守があるから危機は少なかったが、それでも、いざ放たれれば冷や汗ものである。

「あ!」

 直後、そんな考えが吹き飛ぶ。

 ムリエルの結界で砕かれた氷の槍が再び形を形成してムリエルの背後から放たれる。

氷結槍(アイスランス)!」

「ムリエル避けろ!」

「は?」

「間に合え!氷結槍(アイスランス)!」

 アムブリエルがムリエルに慌てて叫び、マルキダエルが結界ではなく氷の槍で相殺する為に放つ。

 だが、相殺する為に放った氷の槍は強度が足りずに砕け散る。

 ムリエルも攻撃がないと思ったことで反応に遅れて防ぐ術が使えない。

 これが決まれば、確実にムリエルは倒れてクレメンスを閉じ込めている球体結界(シーリング)は解除されることとなり……アムブリエルがムリエルの背後に滑り込んで、身を呈して守る。

「アムブリエル!」

 ムリエルが振り返って叫ぶ。

 身を呈したとは言え、それは仲間の犠牲で助かったこと。

「へへっ、ムリエルが倒されたら、クレメンスの、攻撃を防げるのが、いなく、なる、から、ね」

 自分とマルキダエルでは防げない。だからこそ身を呈したのだと言うだけ言って、アムブリエルは光の粒となって消えた。



 その様子を見ながらクレメンスは眉を寄せる。

(仕留められんかったか)

 ムリエルを倒す気でいた攻撃はアムブリエルを倒す結果となった。

 だが、アムブリエルは倒したところで分体を生み出し、それが本体の様に振る舞うのだから、今倒しても意味がない。

 それに、アムブリエルが最初に生み出した2人の内の1人の分体は、突っ張りで弾き飛ばした後から須賀田を現さない。

 これが隠れて機会を伺っているのか、もしくは別の場所へ移動したかは分からないが、どちらにしてもよろしくない展開だ。

(世としては、アムブリエルが現れんことだが)

 それでも、無限増殖の如く増えるアムブリエルと戦い続けるのは嫌であると思う。


 そんなことを思いながらも、体を纏う結界が、徐々に突き破られようとする気配にクレメンスは思考する。

(いかんな)

 先程の結果も相まって事態は急を要した。

 球体結界(シーリング)はムリエルのものであり、クレメンスの命は手のひらで握られ、しかしながら消されようとしている。

 結界を自由自在に操るムリエルの土俵に放り込まれたクレメンスにとって、それは回避したくても出来ないのが現状だ。

 無理をしなければ。

球体結界(シーリング)!」

 クレメンスは一か八かの脱出にかけて、自分の周りに結界を張って、ムリエルが放つ結界のトゲを防ぐ。

 直後、クレメンスは自分の球体結界(シーリング)の外側、ムリエルの球体結界(シーリング)の内側に水を満水させる。

 結界が耐えられないほどの水を貯めて圧力で破壊することにしたのだ。

「無理矢理突破する気か!」

 クレメンスの狙いに気が付いたムリエルが結界の強度を上げる。

熱嵐(フレア)!」

 水の体積を減らすために間接的に熱で蒸発させるマルキダエル。

 だが、ムリエルの結界の強度の方が高いからか、目に見えて減っている気配はなく、もしかしたら、あったとしてもクレメンスの生み出す水の方が上回っているのかもしれない。

「どれだけ力があるんだよ!」

 衰えないどころか上がり続けるクレメンスの力にムリエルは苦しそうに呟く。

 エーギルのお陰でムリエルの力は増幅、余裕はあれど、このまま使い続ければすぐにでも力が尽きてしまう。

 「違う……まさか!」

 その異常性にマルキダエルが気付くも、その瞬間にムリエルの球体結界(シーリング)が水圧で破壊する。

「なっ!?」

 信じられないと驚嘆するムリエルの後でマルキダエルは冷静でいた。

「ムリエル、クレメンスは元から力が多いが、それだけでお前の結界を壊せるわけではない」

「それじゃ何で……?」

「可能とするものがあるだろ?」

「は?……まさか、そう言うこと!?」

「そうだ」

 マルキダエルの言葉で気が付いたムリエルは徐々に冷静さを取り戻す。

「いつからなのかは分からない。もしかしたら、この戦いの初めから出していたのかもしれない」

 それを証明する様に、穂先が三つに別れた槍が現れる。

天声讃歌(クアルテット)、トリアイナ」

 そう言うことマルキダエルの目の前で、クレメンスは三叉槍を一振りしてから構えた。

近い内に投稿リズム戻します。

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