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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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硬化のムリエル

 長期戦と言ったが、その実態は攻城戦の様に大きな物に対して物量と数で攻める様なものではない。

 相手は3人。各々が厄介な力を持つ実力者であるのに対して、クレメンスは1人。それはまるで、あらゆるサポートなく1人で鉄壁の城を3つ攻め落とせと言うもの。

 そんなもの、真正面からでは到底不可能と言えるのだが、クレメンスならやってしまえるのではないかという思いさえある。

 そもそも、クレメンスが得意としている戦いは、大きな力で多くの敵を倒す殲滅戦。力の大きさ次第では3つの城を落とせてしまう程だ。

 だが、今回の相手は城は城であっても鉄壁の城。大きな力を無計画であろうが計画的であろうが、サポートがない現状では限りある自分の力はすぐにでも尽きてしまう。尽きてしまえば自分で自分の首を絞めかねない。


 しかし、限りある力でも戦うことを可能にさせるのが戦術であり、作戦だ。作戦次第では少しの力で城を3つ落とせる可能性があるのだ。

 そして、必ず3つの城を落とす必要がなければ、絶対に勝たなければならない理由もない。

 長期戦とはつまり、戦力よりも戦術。いかに相手の気力を削ぎ落とせるかが勝負である。



 ムリエルはクレメンスの顔を見て嫌そうに眉を寄せる。

「あれ、戦いを長引かせる気だな」

 クレメンスの構えと感じられる気配から読み取って、はぁ、と息を吐く。

「仕方がないんじゃないかな?得意の大技を連続で放てばすぐにでも尽きるし、そうじゃなくても僕達を甘く見てないってことだよ」

「つまり、そう言うことか」

 アムブリエルの言葉にマルキダエルが要領を得たと頷く。

「僕達相手に勝たなくてもいい。時間を延ばして他の四大天族が来るまで戦えば、クレメンスが僕達に勝つ必要なんてないからね」

 散々攻めて、こちらの力が尽きるのを待つ。クレメンスは防御と言う、動きは酷使するが力は少なく抑えられる術を取ったのだと読み取る。

 それに、時間をかければかけるほど応援が駆けつけてしまえば、3人は不利に陥る。

「クレメンスらしくない戦い方だな」

「だけど、力と体力なら四大天族で一番だよ」

「ただの筋肉なんじゃないのか?」

 厄介な戦法を取ったものだと呟くマルキダエル。しかし、それをするには可能だと言うアムブリエル。そんな2人に皮肉を込めるムリエル。三者三様ではあるが、これはこれで3人にとっては厳しい事となった。


「だけど、少し困ったよ。マルキダエル、攻撃方法変えられる?」

「変なことを聞くな」

 今までクレメンスが放った大技を模していたマルキダエルは可能であることを伝える。

 そもそも、模さなくてもマルキダエルの攻撃は多彩であるのだから、攻撃できないと言う心配は無縁だ。

「良かった。どうやら、応援が来る前には何とかなりそうだ」

 勝利の道筋とまではいかないが、それでもクレメンスに対して手段が詰んだわけではない。

「わざわざ付き合うつもりはないからね。捕まらないように気を付けようか」

 アムブリエルが再開を宣言するとムリエルがさっそく駆け出した。



 クレメンスは駆け出してきたムリエルを逃さないように見ると、そのまま待ち構える。

守りの盾(シールド)変形(トランス)!」

 攻めて来ないクレメンスに、ムリエルは結界を出現させ、形を変えて突き付ける。

 迫る結界にクレメンスは横に動いて回避。

変形(トランス)!」

 避けられた結界に再び変形(トランス)をかけて、今度は至近距離から結界を突き付ける。

 だが、当たる直前でクレメンスはムリエルへと駆け出すと張り手を突き付ける。が、ムリエルは微動だにしない。

氷結槍(アイスランス)!」

 追撃と氷で出来た槍を張り手で突き付けている手のひらからムリエルの胸へと放つ。

 氷結槍(アイスランス)の威力でムリエルが後方へと下がろのだが、威力に負けて飛ばされるということがなく、地面に足を付けたままだ。

 そして、氷結槍(アイスランス)が終わった時、ムリエルの体には傷一つ付いていない。

「固いな。かなりの鋭さにしたのだが」

 氷は状況下によって、とてつもない硬度を持つ。ヘタをすれば割れない、溶けないと、氷にありがちな現象が起こらない。

 そんな氷をクレメンスは先を尖らせて放ったのだが、ムリエルは正面から承けたにも関わらず無傷であり、更には幾つかの氷にヒビが入っていたり砕けたりしている。

 氷よりもムリエルの方が固い証だ。

「それじゃ、固いついでにもう一発」

 宣言と同時にムリエルは、地面に向けて別で発動していた結界をクレメンス目掛けて突き上げて弾き上げた。

「ぐはっ!?」

 真下という悟られにくい場所からの攻撃はクレメンスの胴体に命中するも、受け身を取りながら立ち直る。

「……さすがわ、硬化のムリエルと言った所か」

「当たり前じゃないか。守ることが得意なのはクレメンスだけじゃない。俺だってそうなんだから、負けるつもりはないからな」

 手段は違えど得意とする分野。これは、ムリエルの誇りもかかった戦いであったのだ。


「だけど、それが次にもあるのか分からないけどな」

 一体何を言うのかと疑問が浮かんだ時、その答えが現れた。

昨日……


「眠い」

「いつも眠そうだよね、早く寝たら?」

「眠い」

「寝るの遅いからだよ。早く寝なさい」

「眠い」

「うん、寝たら?」

「じゃあ、寝る」

「お休みなさい!」


日頃の睡眠不足が溜まって倒れてました……

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