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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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絶界のクレメンス

 クレメンスの戦いは最初から全力であった。

津波(ウェイブ)!」

 当然、最初に仕掛けたのはクレメンス。大津波を出現させてアムブリエル、ムリエル、マルキダエルに放つ。

「広いね」

「いきなりそれか!」

「これはヤバイな」

 自分達を飲み込む以上に範囲が広い大津波に飲み込まれない様にと3人は各々で津波(ウェイブ)を回避する。


 本来、津波(ウェイブ)は豊富な水場がなければ、いくら天族といえど現象出来ない。

 だが、クレメンスは空気中に漂う水蒸気から水を集めて放ったのだ。それだけの力と実力がクレメンスにはあったのだ。

 元々、ニヴルヘイム周辺の水量が豊富であるから津波(ウェイブ)を放つには何も縛りはなかったのだ。

 ただ、水蒸気から水を集めたのは、何もない(・ ・ ・ ・)場所(・ ・)で人工的に水を作って津波を発生させる力が無駄であったからだ。


 無駄を切り捨てたお陰で3人を飲み込む様に襲う津波はアムブリエルとムリエルを飲み込んだ。

「くっ、逃げ切れたのは俺だけか」

 居た場所が良かったことで辛うじて津波(ウェイブ)から難を逃れたマルキダエルは津波が通り過ぎた跡を見る。

 そこにはクレメンスの津波(ウェイブ)を食らってもなおびくともせず立っているムリエルと……

「あれは痛いよ……」

 背後からアムブリエルがやれやれと言った表情で現れる。

「アムブリエル、お前、津波(ウェイブ)に飲み込まれて死んだはずだが?」

「あれ、気付いてないと思ったんだけど?」

「あれも分身か」

 そう言うとアムブリエルは隠しもせず首肯く。

 分身を使い捨て出来るのは複製のアムブリエルであるから出来ること。これがいい気がするものかどうかと聞かれると、そう言うものだからと納得出来る。そもそも、それがアムブリエルの力であるのだから否定するのがおかしいのだ。


 津波(ウェイブ)を放った結果にクレメンスは顔をしかめる。

「効果が薄いか」

 ヴァルハラ城と4本の塔を守るために張っていた渦を破壊された腹いせに放った結果はムリエルを飲み込む程度とアムブリエルの分身1つの消滅だけ。大技を放ったにも関わらず割りに合わない成果となった。

「だがまあ、予想はしてなくもなかったがな」

 あまり気に留めることなくクレメンスは次の準備へと入る。



 ところで、知恵の天族、クレメンスの部下はというと……

「退避!」

 津波(ウェイブ)が放たれた直後から大急ぎでニヴルヘイムの中へ避難。誰も入らない様に湖の水が流れ入る穴全てに柵格子を下ろして侵入不可として守りに徹する。

 誰一人クレメンスの攻撃で被害がなかったのはそうした理由であり、誰一人としてクレメンスからの指示なく自主的に動いており、誰一人として3人を相手するクレメンスに手を貸そうとする部下がいない。

 なかなかにシビアである。



大津波(タイダルウェーブ)!」

 今度は津波(ウェイブ)よりよ高く広く、その上威力が高い攻撃をクレメンスは放つ。

 大津波(タイダルウェーブ)津波(ウェイブ)以上に水量を使う為に水蒸気だけでは足りず、自身が管理するニヴルヘイム周辺を流れる川と湖の水を少し(・ ・)集めて放ったのだ。

 先程ので効かないのであればその上である。


「あ、無理」

 さっそく回避が不可能と諦めるアムブリエル。

 自分なら分身があるから倒されてもあらかじめ控えさせている分身が後を引き継いでくれるから、アムブリエルにはあまり意味をなさない。だが、ムリエルとマルキダエルはそうはいかない。

「ムリエル、頼めるか?」

「カバーするよ。壁は任せた」

 そう言ってサポートに入るムリエルに背を向けてマルキダエルは大津波(タイダルウェーブ)へと歩んで両手を前に出す。

大津波(タイダルウェーブ)!」

 マルキダエルも大津波(タイダルウェーブ)を放つ。高さ、広さ、威力とどれもクレメンスには劣るが、それはしばらく拮抗し、飲まれて形をなくして3人を飲み込み、被害は森にまで及んだ。


 大津波(タイダルウェーブ)が去った後、そこにはムリエルとマルキダエルが立っていた。

「がっ!ごほっ!……やはり固いな……」

「絶界のクレメンスだから当たり前さ」

「守りの類いはお手のものか。ムリエルの守りがなかったら今ので死んでたな」

 守る術を応用した攻撃は大津波(タイダルウェーブ)を防いだら感覚で十分掴んだとマルキダエルが両手を振る。

「いや~、参ったね」

 そこに再び背後からアムブリエルが現れる。

「控えていた分身がさっきのでいくつも殺られたよ」

 クレメンスの大津波(タイダルウェーブ)が森にまで及び、奇襲にと控えていたアムブリエルの分身を葬っていた。

 お陰で森を徘徊する死神達を監視している分身をこっちに招くこととなってしまった。

「困ったな……」

「どうするんだ?地の利はクレメンスが有利だが?」

 周りにあるものを最大限に使うクレメンス相手にどうするのかとムリエルが尋ね、少し考えたアムブリエルが口を開く。

「うん。最初に考えた数押しは止めよう。増やしても殺られるし痛いから」

 当初はアムブリエルが自身の分身を増やして気を引き付けている内にムリエルとマルキダエルが倒す手筈であったが、広範囲の攻撃はどう見てもクレメンスの味方で効率が悪く、アムブリエルとしても分身を増やす力がクレメンスの力が尽きるまで持つ気がしない。

 ならばと大幅に方針を変える。

「正攻法で行こう」

「ざっくり行ったな」

 正面から殴る方針に突っ込みを入れるマルキダエル。

 だが、クレメンスを相手に回避で力を使うのだから大量消費は抑えられない。無闇に数押しや広範囲の攻撃で仕掛けるよりも少数で挑んだ方が勝てる見込みがある。

「攻撃の要はマルキダエル。防御はムリエルだから。僕は撹乱といくから」

 そのまま大雑把に、けれども各々の要所をしっかり把握して活かす役割に文句などない。

「クレメンスを倒そう」

 今度はこちらの番とアムブリエルが切り出した。

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