制するは
ダグザとバキエルの戦いは白熱さを増していた。
「水弾!」
「風弾!」
水と風の玉が放った両者の間で衝突して相打ちする。
「同化するは水!針となって突き刺して!」
「接続!」
間髪入れず舞い散った水全てに同化して形状を針の形にして放つバキエル。その多さと細かさにダグザは地面を上げて防御する。
強固な土壁は水を吸収したことで軟らかくなる。
「同化!」
「接続!」
「っ!?土は無理でも……」
「そう来たか!」
土壁に同化しようと先手を仕掛けるバキエルであったがダグザによって阻まれる。しかし、土壁が吸収している水まではダグザの手が及んでいないと見越して同化。見事に賭けに勝ったことで至近距離から無数の水の針を再び放つ。
それを目前で見たダグザは左右に回避することが出来ないと判断。距離を取るとアイギスを構えて正面の水針を遣り過ごす。
しかし、バキエルが同化している水針は当たらなかった分を方向転換してダグザの背後へと迫る。
「二重接続!水と土、混ぜて成るは泥!」
バキエルの足元に泥を作って沈むのとダグザが背後からの水針を回避するのはほぼ同じ。回避する際に少し遅れて右腕を数ヶ所裂けてしまうも気にすることなく足止めしたバキエルへと迫る。
さすがにバキエルでも二重接続で作り出した泥をどうにかすることは出来ない。先程の様な抜け道も使えない。
「なっ!?」
そのはずであったが、ダグザの足に木の根が絡み付き、そのまま吊るされてしまう。
「この根、バキエルか!」
「二重接続の対処くらい考えているよ!」
なにも水針全てをダグザに向けたわけではない。内数本は木々へと放って同化していたのだ。後はダグザの隙を付いてご覧の通り。
(これは見誤ってたな)
逆さまに吊るされたダグザは歯噛みする。
バキエルなら同化の侵食具合によって全く違う物質を複数同じに操ることが出来る。
同化するには直接触れていることが重要。触れていないものに同化するには違う物質を中継しなければならない。
ダグザの二重接続はバキエルの同化条件を確実に封じるに値する。だが、前もって手を打たれれば危険度は低くなる。
「ヤバイなこれ……」
バキエルが木々に同化していることはダグザにとって避けたいことであった。
何故なら、同化の侵食具合で木々がバキエルの武器になるからだ。
そして、証明するかの様に木々の枝がダグザへと伸びる。
「転移!」
枝が突き刺さる直前でダグザは瞬間転移で脱出すると地面に足を捕らえて動けないバキエルの背後に転移してアイギスを振るう。
「くっ!」
明らかな不意討ち。だが、バキエルの森羅万象のスヴェルが受け止める。
「放て!」
地面と同化して形状を変えた土の玉を放つバキエルだが、不意討ちを防がれて早々に離脱体制に入っていたダグザに当たることなく反撃を許す。
「風の乱暴!」
瞬間、辺りの木々が根元ごと強風で飛ばされてしまう。
「接続。お返しだ!」
「きぁぁぁぁ!?」
そのまま風を操り、宙に舞う巨木をバキエルに叩き付けた。
暴風が収まり辺りの木々がなくなるも、まだ生きているバキエルを見てダグザは呟く。
「今のは効いたな」
予定していなかった力の消費もそうだが、あのままでは完全に詰んでいた。
「接続!今度は重さを付けた風の刃だ!」
宣言通りに風圧と言う名の重みが加えられた風の刃がバキエルへと迫る。
巨木に叩き付けられたダメージが大きく未だに起き上がれないバキエルにヨケルコトナド不可能。だが、やはりスヴェルが塞いでしまう。
「やっぱり邪魔だな」
自動防衛を兼ねるスヴェルが有る限りバキエルに攻撃が通じない。
剥がせればいいのだが、そんな簡単な話ではない。
(スヴェルをどうにかするには……上手くいく気はしないがこれしかないか)
それはフレイアやクレメンスであれば容易に出来るがダグザでは少し難しい。明らかに正攻法でダグザが苦手としているものだからだ。
だが、スヴェルにも弱点はあり、それにはどうしても正攻法が手っ取り早い。
「行くぞ」
ダグザの目付きが変わる、瞬間に駆け出した。
それに気が付いたバキエルが大急ぎで同化にかかる。
「大地に……」
「接続!」
「っ……」
ダグザによって阻止される。
「負けるかぁぁぁぁぁ!」
しかし、多めに力を込めて跳ね返す。
「マジかよ!?」
予想外の反撃。これはピンチになった故の火事場の馬鹿力によるものかと思ってしまう。
「貫いて!」
大地が針となってダグザを真下から貫こうとする。
回避するにはバキエルから近いことと、ここで避けたくないという思いからダグザはアイギスを地面に落として上り、そのまま土の槍に押し上げられながら回避。
「接続!」
回避に成功したダグザは一度に2つの接続を行う。
1つは風の足場を作り、アイギスを持って飛び上がる。これでアイギスを置いて飛び上がることをしなくて済む。
もう1つは、予想外の回避に衝撃を受けながらも追撃を放とうとするバキエルの目の前で強力な光を放って目眩ましにする。
これでバキエルの攻撃手段は封じたこととなり、ダグザはアイギスを抱え上げると思い切り振り下ろした。
勝敗はしばらくお預けです。




