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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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術と武

今年最初の投稿です。

 セラフィナの頭を握り潰したアスモデル。その手からは血が流れるが、突如として血が、セラフィナの体が霧の様に粒子となって消える。

「危ないものです。もう少しで消えてしまうところでした」

 そして、消えたはずのセラフィナが何故かアスモデルから離れた場所に健在していた。

「仕留めたと思ったのだが」

 何も掴んでいない手を振りながら視線を離さないアスモデルにセラフィナは微笑む。

 何しろ、アスモデルと相性が悪いセラフィナにとってまともにやりあえば四大天族と言えど負けてしまう。だからこそ、得意としているものを最大限に発揮して生かすしか勝つ手段がない。

「これが取り柄ですから」

 セラフィナはそう言うと口早く言う。

泥濘の大地(マッドプール)水弾(アクアバレット)光の閃光(サンシャイン)!」

 三つの術が同時に放たれた。


 まずは泥濘の大地(マッドプール)によってアスモデルの足元が地面に沈む。

「足留めか!」

 そう判断したアスモデルは抜け出そうと力を入れ、飛んできた幾つもの水の弾が体を直撃する。

「ぐっ……」

 さすがは四大天族のセラフィナが放った為に威力が高いのか呻くアスモデルだが構わず沈む地面から抜け出そうとして、上空から光の柱が降り注ぐ。


 轟音と共に地面が揺れる中、セラフィナは上空を見上げてアスモデルを認識する。

 どうやら光の閃光(サンシャイン)が直撃する前に脱出出来ていたようだ。

「らぁぁぁぁぁ!」

 アスモデルは上空で一回転すると落下の勢いを伴ってセラフィナ目掛けて蹴りを突き出し、それに合わせてセラフィナは離れて回避。

 直後、アスモデルが着地した場所がクレーターとなり、そこから地面が隆起して亀裂が走る。あそこにいたらただでは済まないことが目に見えて分かってしまう。

 だが、アスモデルの攻撃はそこで終わらなかった。

 着地してすぐにアスモデルはセラフィナへと瞬時に詰め寄った。

「!?」

 あまりの早さと着地時のロスタイムの無さにセラフィナが驚いていると、腹に衝撃が走り、痛み、そして、体を貫く感覚を感じた。

 そう、セラフィナの体は再びアスモデルによって致命傷を負わされたのだ。

「……チッ」

 しかし、この結果に満足しないアスモデル。舌打ちした途端にまたしてもセラフィナの体は霧となって消えた。


 手が霧を掴もうとするも捕まえられず、アスモデルは新たな気配を感じ取る。

泥濘の大地(マッドプール)石の巨柱(ロックウォール)!」

 再び足元が地面に沈み、それと逆に石の柱がアスモデル目掛けて突き上がる。

「ぬう!」

 だが、アスモデルは石の巨柱(ロックウォール)が突き刺さる直前でそれら全てを左腕で素早く振るってへし折ると、右手で術の効果範囲外である地面に手を乗せ、力任せで沈んだ地面から抜け出した。

 そして、先程へし折った石の柱をセラフィナに向けて投げ飛ばした。

 鋭く尖った先を前にして音速とも思えるような早さで飛ばされたそれはまっすぐにセラフィナに向い、

迷いの霧(ミスティック)

 左胸に刺さるも、セラフィナの体が霧となって消えてしまう。


 セラフィナがアスモデルの攻撃を回避出来ていたのは迷いの霧(ミスティック)と呼ばれる霧を発生する術によるもの。

 本来は霧の中に迷い込んだ相手を惑わせる物なのだが、それをセラフィナは独自に応用して体を霧化して回避していたのだ。



 その様子をただ見るアスモデル。三度仕留め損ない、それを可能としている厄介さを感じながら離れた場所にいるセラフィナを見る。

「厄介なものを」

「言ったはずです。これが取り柄ですからと」

 忌々しいと睨むアスモデルにセラフィナは何食わぬ顔で言う。

「最も、私からしたらアスモデルの怪力の方が厄介です」

 近付いたら殴る蹴る等がされ放題であり、セラフィナにはその類いが不得意であるからアスモデルに対する恐怖は人一倍である。

 そんなセラフィナに何を言っているんだとアスモデルが怪訝な表情を浮かべる。

「それは光栄なことだが構築のセラフィナが言うことか?その気になれば出来るであろう?」

「出来なくはないですが私には扱うことはできません。そういうのには不得意ですので。アスモデル、貴方が術を使うのを不得意としているように」

 肉弾戦は無理とセラフィナは早々に捨て去る。それに、例え得意であったとしてもアスモデルと同じ土俵に立つのは得策ではないのだ。

「天術か。確かに俺は不得意だ」

 セラフィナの言葉にアスモデルは同意する。

 これまで散々セラフィナに接近戦を挑む様に言ってきたのは自分の土俵に上がらせたい為だ。とは言え、やはりセラフィナはその狙いに気が付いており上がる来など毛頭なかった。

 土俵に踏み込む踏み込まないはこの際関係ない。自分が得意としているもので打ち勝てばいいのだ。


 その事を認識していなかったアスモデルの目付きが変わる。

「ならば、本気を出すとしよう!」

 アスモデルが叫び周りの空気が震える。それは声だけで震えているのではなく、体から漏れる力までもが空気を振動している。

 その溢れ出る力にセラフィナの顔が青ざめる。

「こんな力どこに……」

 まるで森羅万象(ユニバース)、四大天族で言う天声讃歌(クアルテット)を使うのと同じくらいの力に驚嘆する。

 だが、そこに留まらなかった。

 アスモデルの体が帯電を始めたのか雷光を発し、腰には獅子を象ったベルトが巻かれて更に力が膨れ上がった。

「メギンギョルズがなくてもあれだけの力であったのに……」

 アスモデルが持つ森羅万象(ユニバース)、メギンギョルズの効果で倍増した力にセラフィナは戦慄する。

(これではまるで……)

 命を削っているかの様だと思った矢先にアスモデルが動き出した。

「迷……」

「遅い!」

 目では負えず止まった瞬間に認識してすぐさま迷いの霧(ミスティック)を使おうとするも、それよりも早くアスモデルの蹴りがセラフィナを吹き飛ばした。

 悲鳴を上げる暇などなくセラフィナは地面に打ち付けられる様にして転がされてしまい、ようやく止まった時には瀕死の重症を負ってしまっていた。

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