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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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負け戦の布石

「まあ、この戦いで負けることは分かっていたよ」

 胸元にレーヴァテインが突き刺さったままハナエルは言う。

「確かに、俺の強みは見ることだ。フレイアが俺の目を見ない時点で勝敗は決まっていた。最も、俺の実力じゃ勝てないことも理解していたから、な」

 ガハッと血を口から吐くとハナエルの呼吸が荒くなる。


「よく言う。その気になれば変えることも出来たはずではないか」

 未来を変える手段は多い。特にハナエルは未来が見えているのだから先手を打つことも可能であった。フレイアの部下を洗脳して身内の数を減らし、どさくさに紛れてフレイアを攻撃するのも、未来の一つに組み込むことだって出来たことである。

 それに、仕掛けてきたのが天体であるのだから布石を張り巡らせた自分の盤上に誘き寄せることも出来た。

 それらを纏めて嫌味たらしく言うと、ハナエルが不気味に笑う。

「知って、いるだろ?未来は変えることも出来るが、失敗だって、ある。見えているから必ず成功、するわけじゃ、ない」

 未来を変える失敗は大きく2つ。見ていた未来通りになるか、見ていたものでもなければ望んでいない未来になること。

「じゃが、お前なら確実に出来ようものだ」

「確実じゃ、ない。特に、俺が1人、で動けば、だ」

 未来を見ることが出来るはずのハナエルが何故失敗するのかとフレイアは疑問を抱く。

「未来を変えるって、ことは、やり方は多い、が、大変なこと、だ。起こる事象、以上の、力がないと、変えられ、ない。それ以下であれば、まず失敗となる。」

 そう言われてそんなものなのかと軽く思う。

 未来を見ることが出来ないフレイアにとって、変えることは言うほど大変なものなのかと実感がない。それに、ハナエルを含む天体が簡単にやってのけていることを知っていた為に認識の誤差がある。

 とは言え、ハナエルが見た未来を覆す為にフレイアは必死にあがいた。ハナエルの台詞から結果が分かっていたとはいえ、過程は変わっていたはず。そう信じたい。

「俺も、必死にあがいた、けど、無理、だった、な……」

 そう言ったハナエルの体の一部が光の粒子となって消えていく。

「妾から言わせれば、いくらでも変えられる所があったぞ」

「無理、だな。それをやったって、フレ、イアは、止まらない……」

「……ふん」

 最後に助言紛いのことを言ったがハナエルはこれで終わりだからとレーヴァテインを抜こうとする。

「だけど、これでい、い……」

 笑うハナエルにフレイアがレーヴァテインを抜くのを止める。

「何がだ?」

 最後の悪足掻きを警戒する。

「俺は、俺の目的を、果たし……た。役割も、果た、し……た。そして、俺は、死なない……死ぬことも……」

 そう言って話の途中でハナエルは光の粒子となって消えた。


 この場からハナエルが完全にいなくなったことを気配でしっかり感じとると、フレイアは閉じていた目を開けた。

「死なぬ、死ぬこともないか……やはり、アムブリエルを討たねば難度も復活するのか」

 ハナエルがアムブリエルの分体の1つであり、例え倒してもアムブリエルが生きてさえいれば何度でも分体として復活する。

 そのことを既に予想しており、ハナエルからも確実と言える言葉を聞いたフレイアは嫌そうな顔をする。

「厄介であるな」

 ただでさえ天体は面倒な力を持っているのに、倒しても倒しても復活(リターン)してくるのは切りがない。早くアムブリエルを倒しても反乱を終わらせたいものだ。

(しかし……)

 フレイアは自分の手を見、地面に落ちたハナエルが吐いた血を見る。

「分体とはいえ実体があるのか」

 ハリボテや幻の類いではなく生物と同じ構成。息をしていれば血も流れている。

(これが主によって別けられた分体の特徴か)

 本来の分体は生物の様な構造を持たない。人形に仮面を付けてそれとなく振る舞うものなのだが、神が直々に別けて生み出した分体は天族そのものと言っていい。

「まあ、数を埋める為であったみたいだからな」

 そうなった経緯をモルテから聞かされたて内容を思い返す。

「しかし、妙なことを言っておったな」

 ハナエルは消える間際に目的と役割を果たしたと言っていた。

(考えたくはないが、ハナエルにとって勝ち負けは重要ではなかったのか)

 では、何のためにかと思うが答えは出ない。

(ハナエルは自分が負ける未来通りにしたということは、未来を変える気がなかっのか)

 そもそも、そんな未来なら変えたいと思うのだが、ハナエルは自分が負ける結末を受け入れていた。負ける未来にするには何も手を打たなければいい。それだけでも異常なのにここから一つの事実が見えてくる。

 この戦い、ハナエルが負けることに意味があったのだと。


 ここまでは気が付けたが、やはり分からず保留にしてフレイアは部下達へと振り返る。

「何!?」

 しかし、目にした光景は信じがたいものであった。

 ムスペルヘイムを任せていた部下全員が傷を尾って倒れていた。

 何が起きたのか、フレイアには分からなかった。

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