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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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見える恐ろしさ

 悲鳴は幾人もの声が混ざり重なったもの。その中には悲鳴とは違う叫び声も聞こえているが、総じてどれもがフレイアの聞き覚えのある声であった。

「うわぁぁぁぁ!」

「や、止めるんだ!」

「どうしたんだ!おい!」

「チッ!」

 部下達の混乱の声を聞いてフレイアが舌打ちをする。

(あの馬鹿共が!)

 悲鳴と気配から状況を読み取ると瞬時に光弾(ライトバレット)を複数発動させ、背後にいる部下目掛けて放つ。

 光弾(ライトバレット)は混乱に陥った部下達をすり抜けて特定の部下全てに命中させて気絶と言う力業で終わらせる。


 部下達に振り向きもせずに光弾(ライトバレット)を全弾命中させたフレイアにハナエルが感心する。

「へぇ」

 数はけして多くなかったはずである。混乱の出だしは上手くいったがフレイアの対応力が高くてあっという間に治められたことは少し悔しいところである。

「流石に動揺して目を開けると思ってたんだが。それか振り返るか」

「あの程度のことでハナエルの手に乗るか」

 期待していたのにと残念がるハナエルに甘く見すぎだと怒鳴る。

 とは言え、心の中ではハナエルがやらかしたことに怒っていた。あのままであれば狙い通りになっていた。戦いにおける感情のコントロールがフレイアの命を救った。

「私が無駄なら部下をと思ったのではないか?全く汚い手を使う。最も、それがハナエルが使う手なのだから仕方がないかのう」

 その言葉にハナエルの表情が僅かに動く。

「仕方がないって、随分な言い様だな」

「言いたくもなる。お前とは目を合わせるだけで操られるのじゃからな」

 フレイアの言葉に武神の天族達が、だから仲間が突然襲い掛かってきたのだと納得と驚愕を露にする。



 ハナエルの力が見ることに長けていると言ったが、ハナエルの見るは自分の目で見るだけに留まらず、他者の目を通じて見ることも可能である。

 本来、見る行為は自分の目で見た物しか見ることが出来ないのだが、ハナエルは目を合わせた相手であれば、その存在が見ている物も見ることが出来る。更に、目が合えたなら洗脳も施せられる。

 これは目から見た情報を読み取りどの様に動くべきか判断する隙に施しているのだ。

 その時間は一瞬であり、目を見て洗脳となれば、2つ同時は元よりどちらか1つであっても困難は格段に羽上がる。

 それを一瞬でやってのけるハナエルは力の応用と合わさりとにかく凶悪の一言に尽きる。



 ここまでの情報をフレイアは部下に念話(テレパシー)で伝えると、本当は危険な奴であったのだと悟っる声が何故か上がる。

(気づくのが遅いぞ)

 殆どはフレイアが操られた部下を気絶させたことで気がついたのに、今の解説を聞いて気付けた奴は誰かと把握、この件が終わったら再訓練を行うことを決定した。

 とは言え、この件は今の状況で考えるべきでとなければ怒鳴ることでもない為に横に置いておく。

「それに、あ奴等に身内を襲わせたのは私の視線を反らす為だけではないであろう?あわよくば、私も殺そうとしたな?」

 自分も標的になっていたことを答えの合否など気にしていないが言い、最後に残念であったな、と言う。


 今まで言った言葉にハナエルが何も反応を示さなかったことで、フレイアは部下に新たな指示を出す。

「聞いた通りだ!ハナエルとは目を合わせるな。戦いを見るな。ムスペルヘイムを守るのじゃ!」

 そう言うと部下はすぐに陣形を変えてフレイアとハナエルの戦いを無視、それ以外からムスペルヘイムを守る形へと変わる。

「……あぁ、やっぱりこうなるか」

 見た通りの陣形になり、フレイアも操られた部下への腹いせか光弾(ライトバレット)炎弾(フレイムバレット)を大量に出現させていつでも放てる様に待機していた。

(本当だったらさっきので上手く行くはずだっただが……)

 ハナエルが見た未来では、武神の天族が悲鳴を上げた時にフレイムが何事かと振り返り、そのをハナエルが攻撃を淹れてしばらく優位に立つはずであった。

 だが、その未来は残念ながら訪れることなく、フレイアによって変わってしまった。

 だが、未来が変わってしまっても変わって(・ ・ ・ ・)いない未来(・ ・ ・ ・ ・)もある。

(……結果は変わらず。いいか別に)

 どのみち、どうにでもなるからとハナエルもフレイアに攻撃を準備、仕掛ける。

水弾(アクアバレット)!」

 光弾(ライトバレット)炎弾(フレイムバレット)と同数を出し、フレイアも放ったことで均衡、打ち消し合う。

 それによって水蒸気が発生するも、フレイアが突き抜けてきてハナエルに腕を振り下ろそうとする。

石の巨柱(ロックウォール)!」

 そこにフレイアの足元目掛けて石柱が現れて上空へとはね飛ばす。

 先程まで迫られたら防ぐしかなかったハナエルが、どう見ても防御向きの術でカウンターを仕掛けたのだ。

「……くっ!」

 だが、フレイアは怯むことなく石柱を破壊、その勢いでハナエルに向けて降り下ろすが避けられる。

「追尾しろ!」

 着地後、フレイアは両手に纏わせていた光弾(ライトバレット)を外してハナエルへと向ける。

 その動きは1つがまっすぐに、もう1つが回り込んでと意思があるような動きでハナエルを挟みかかる。

光弾(ライトバレット)!」

 しかし、ハナエルも光の弾を複数出すとその2つを消滅させ、残りをフレイアへと放つとすぐに移動する。

 何故なら、打ち消した光の中からフレイアが扱う天声讃歌(クアルテット)の一つレーヴァテインが隠されていたからだ。

(気付かれた!)

 とっさに思い付き、それでもしっかり隠したはずなのに見破られた。その理由は未来を見たものであることは十中八九と考えるも、まだ攻撃が継続している為に光の弾を掻い潜りレーヴァテインを握り取る。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 剣先を向けてそのまま落下の勢いでハナエルの胸元を貫いた。

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