表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
823/854

望まぬ未来の回避

真夜中でなければ書けなくなってきている……

 フレイアは右手に纏わせた光弾(ライトバレット)をハナエルに向けて突き出すが、余裕を持って避けられる。

 だが、それは予想内であり、突き出した右手をそのままに方向転換。顔面目掛けてストレートを入れる様に振り上げるが、ハナエルは顔を少し動かしただけで避けてしまう。

(ああ、見えた通りだけど厄介だ)

 フレイアの攻撃を避けたハナエルであるが、攻撃を避けるのが大変と思っていると左手に纏わせれた光弾(ライトバレット)が腹へと食い込んで吹き飛ばされた。

 このまま吹き飛ばされると追撃を受けてしまうことが未来を見て分かっていたハナエルは一度だけリバウンドを取ってから着地、ストレートに入った腹の痛みを手触りで確認する。


 先程、光弾(ライトバレット)の速度を落とした様にフレイアの動きも落とせばいいのだが、条件が異なっており、フレイアが条件を満たさせてくれないのだ。

「痛いの入ったな……」

 いくら未来を見て、先程の攻撃を食らうことが分かっていても、やはり痛いものは痛いとぼやく。

 その間にも、フレイアが隙を与えない為に瞬時に迫ってきて光弾(ライトバレット)を振るう。

「仕方ない!」

 フレイアの攻撃のダメージが重いからとハナエルは守りの盾(シールド)を張って攻撃から見を守る。

 だが、守りの盾(シールド)で守られたと見や否や、次の攻撃を守りの盾(シールド)で守られていない場所へと攻撃を入れ、それを防ぐ為に新たな守りの盾(シールド)が張られたりと、フレイアが攻め、ハナエルが防御する互いに一方的な戦いをする。


(ああ、やっぱりな)

 防御しながらフレイアを見ていたハナエルは、フレイアが何故自分が仕掛けたいことに乗ってくれなかったのか、その予想が確信へと変わった。

(目、閉じてる)

 フレイアは戦いの中で目を開けることなくハナエルと対峙していたのだ。これでは通じない訳だと、本当なら落胆するところだが、やっているのがフレイアであるからそんな気持ち一切なく代わりに驚きたくなる。

 目を閉じるということは視覚から入る情報の殆どが入らないことと等しい。

 情報を得るだけなら音や臭いに感覚でも分かるのだが、目を持つ生き物は目から見た情報が全てを占めている。つまり、目から見る見ないとでは情報の量と確実さが極端に違う。

 にも関わらずフレイアはハナエルとの対決で対抗策の為に目を閉じて戦っている。それはまるでハナエル相手にハンデを与えている様にも見られる。

 だが、フレイアにとって見えないハンデは苦渋ではない。そもそも戦いを得意としているフレイアにとって目が見えなくても戦うことが出来るのだ。

 五感に優れており、今回は音と気配、更には動作で僅かに伝わる振動でハナエルの位置や動きが把握出来ている。しかも、フレイアの部下達も入っているのだから把握能力と処理能力も高い。


 防御からフレイアの様子を読み取ったハナエルは攻撃に転じた。

水弾(アクアバレット)!」

 守りの盾(シールド)越しから水の塊を至近距離でフレイアに向けて放つ。

 だが、攻撃を仕掛けてくるのが分かっていたフレイアは目を閉じたまま瞬時にハナエルから離れて水弾(アクアバレット)を回避、再び光弾(ライトバレット)を纏わせた拳で攻めかかる。

「っ……守りの盾(シールド)!」

光の閃光(サンシャイン)!」

 攻撃を防いだ直後にフレイアが大技を放った。

 光の柱がハナエルに直撃する直前に離れたフレイアであるが、目を閉じたままでも状況が分かっていた。

「やはり、防いだか」

 フレイアが言うと、その場から動いていないハナエルが何事もない様に立っていた。

「危ない危ない。危うく殺られる所だった」

 危機一髪と安堵するハナエルにフレイアが呆れた口調で言う。

「殺られるはずがないではないか。これも見えていたのだろう?」

「見えていても回避する術がなければ意味ないだろ?まあ、それはお互いに言えることだが」

 挑発する口調で語るハナエルにフレイアが減らず口をと吐き捨てる。



 未来で起こる最悪の出来事を回避する方法は実は多かったりするが、殆どが共通して未来での出来事を知ってからの行いだ。

 例えるなら、この日にこの場所でこの様な最悪の出来事に見舞われるとする。回避するには出来事が起こる場所に行かなければいい。それだけで最悪の出来事は回避出来るのだ。

 また、場所ではなく人間であるなら会わない様に手を尽くしたり、その人間が気を変えるように誘導してもいい。更には過去の出来事を変えることだって未来を変えることとも言える。

 未来を変える手段は手段があるなら何をやっても問題がない。ただし、それがいい結果になるか悪い結果になるかまでは分からない。

 では、未来が分からない者が未来を変えるにはどうするのか。

 そもそも、未来が分からないのに変えるというのは矛盾しているとも言える。出来ることは望む未来通りに動くこと。それが未来を知らない者が未来を変える手段の一つ。

 そして、もう一つ。未来を知らない者が未来を知る者の未来を変えること。

 未来を知っている者はその通りに動くなり変えたりするが、知っている為に知らず知らずの内に身動きを制限してしまい、一方で未来を知らない者は知っている者に横槍を入れ放題であるから未来の結末が不確定となる。

 それが今のフレイアとハナエルの現状。フレイアは戦いで培った予測を駆使し、ハナエルは幾つもある未来を選んで、2人が望む未来を引き寄せようとしているのだ。



 ハナエルはもう一度腹の痛みを確認してからフレイアを見る。

 今はまだハナエルが見た未来通りであるが、ここから先でフレイアが未来から逸脱した方法をとってもおかしくない現状にきていた。

(それでも、結果は分かっている)

 だから自分が引き寄せたい未来を得る為に手を出す。

「ところで、俺だけを相手していいのか?」

「何を言う……」

 急にハナエルは何を言うのかと訝しく思った直後に、背後から数多の悲鳴が響いてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ