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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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絶望はまだ先

 モルテ目掛けて火球や水球に土柱や鎌鼬などなど無数の多種多様な攻撃が周囲にお構い無く襲い掛かってきた。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 とてつもない質量にディオスが恐怖のあまり叫ぶ。

 だが、攻撃は全てモルテが展開した領域で防がれる。代わりに周囲は渦が崩壊した余波以上に崩壊して更地となる。

「……い、一体、どこから……」

 モルテのお陰で無事とはいえ目の前で起きた衝撃にディオスは体の力が一瞬入らなくなった。

 だが、モルテは気にしている暇がないと上空を見上げて叫ぶ。

「アムブリエル!マルキダエル!」

 そこには再びのアムブリエル、そして、攻撃を仕掛けたマルキダエルが2人を見下ろしていた。


 モルテが叫んだのを聞いてアムブリエルはめんどくさそうな表情を浮かべながらも目はマルキダエルを軽く睨んでいた。

「ほら、気が付いたじゃないか」

「引き付けるには丁度いいんだよ」

 ここで出来る限り足止めを狙いたかったアムブリエルと引き付けるだけで十分と言うマルキダエルの意見は対立し、結果としてマルキダエルに勝敗がいった。


 上空にアムブリエルがいるのを見てディオスが驚いたように目を開く。

「何で!?さっき倒したんじゃ……」

「倒したのは分身だ。そして、あれも分身。マルキダエルもだ」

 倒しても倒しても無尽蔵に沸き上がる如く襲い掛かり邪魔立てするアムブリエル。しかも、分体も分身で増やせるのだから質が悪いと言う言葉だけでは納まらない。

「このまま増え続けられたら埒が明かないですよ!」

「アムブリエルを倒すしか方法はない」

 これ以上増えるのは勘弁と根を上げるディオスにモルテが唯一の打開策を教えるが、それは今のままではとても妥当とは言えない。

「……店長、念の為に聞きますが他には?」

「ない」

 分身や分体の大本を叩かない限りはアムブリエルが増え続ける為にどうしてもこれしかない。

 自分よりも強い存在がうじゃうじゃと増える現状にディオスは目眩を起しかけた。


 しかし、ディオスが現状に嫌であろうが目眩を起こそうが、それを受け入れて治まるまでの時間を待ってくれるはずがない。

「ディオス、そこから動くな。今は気紛れな悪戯者(カプリース・ロキ)の声を聞け」

 そう言ってモルテはディオスに領域を展開して離れる。

 その際、ディオスはモルテから僅かな違和感を感じた。

(何だ?さっきよりも張り詰めたような……)

 詳しくは言いあらわせられない。けれど、大雑把に言うなら殺気とは違う何か。思ってはみてもやっぱり分からない。

 そう思っているとモルテの左手に新な鎌が握られた。

「2本!?」

 弟子となってから死神の最低限の知識を聞かされていたディオス。

 その内の一つに死神は死神の武器を1つしか具現化出来ない。両手に別々の武器を具現化して持つ際は何処かを鎖で繋がれて一つとされるのだが、モルテが握った新な鎌は元々持っていた鎌の何処にも鎖で繋がっていない。

 独立した別の死神の武器であり、死神の常識を覆すものであった。

 ディオスが驚きの並みで打たれている間にモルテは2本の鎌を駆使してアムブリエルとマルキダエルに向けて斬撃を放つ。

「アムブリエル、片方任せた!」

 そう言ってマルキダエルは果敢にも斬撃に飛び込むと、それを真っ二つに切り裂いた。

「えっ!?」

 それを見たディオスが驚愕している横でアムブリエルは斬撃を避け、けれども戻ってきた斬撃を受け止めて耐えきった。

(効いて、ない……)

 モルテが放った斬撃が呆気なく対処されたことにディオスは焦る。


 その時、再び聞こえてきた

『これはヤバイかもしれないな。店長が負けるな』

 気紛れな悪戯者(カプリース・ロキ)からだと囁かれる声に心臓が跳ね上がる。

(店長が、負ける……)

 モルテが負ける予想が頭を過り顔が青ざめる。

『やっぱり無理だったんだよ。俺じゃここにいても足手まといだし何も出来ないんだ。天国(シエラ)に来なければよかったんだ』

 確かに、気紛れな悪戯者(カプリース・ロキ)を抜けないディオスは今の状態はモルテのお荷物同然であり、しかもかなりの重さであるに違いない。

 それを指摘されて確かにと思い肯定しようとして……

「何を狼狽えている?」

 突如モルテから声をかけられた。

 その言葉はまるでディオスにしか聞こえていない声が何を言っているのか分かっているかのようだ。

「まだ始まったばかりだ。こんなところで絶望などするな」

 振り返ったモルテの表情は焦りも戸惑いも何一つない。想定内で対処出来る範囲であると言っているかの様だ。

「こんな簡単なものを絶望とは思うな。絶望とはな、簡単に訪れないものだ。その証拠を見せてやろうではないか」

 勝ち行く宣言をモルテは高らかに発した。

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