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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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2人の老人と少女

 対決(リベンジマッチ)が行われる少し前。

「いたよ」

 道なき道、木々を掻い潜っていたミクがピタリと足を止めて後を着いてくる2人の老人に振り返る。

「いたな」

「いましたのう」

 ハイエントは死神の目で、ヴァビルカ前教皇は天眷術で遠くにいるズリエルを認識する。

「しかしこの距離は……よく見えましたね」

「ん?そう?」

 天眷術でズリエルがいるのを見えているとはいえその距離は森の中にも関わらず距離が開いている。そのことを指摘するヴァビルカ前教皇だがミクは良く見えているのか不思議そうに首を傾げる。

 当然と言えば当然である。ミクの死神の目は見ることに関してモルテと匹敵する。ここにいる中で誰よりもズリエルの姿を鮮明に見ており認識している。

「でも、見付けたのは皆のお陰だよ」

 そう言うミクの足元には十数匹の宝玉獣(カーバンクル)がミクを見る為に見上げている。

 まだアムブリエルに戻っていない分体を探す為に動いた宝玉獣(カーバンクル)は数と他の幻獣を巻き込んで森全域を探し回り、ようやくズリエルを見つけたことをミクに知らせて連れて来たのだ。

 なお、ようやくというのは宝玉獣(カーバンクル)にとっての時間感覚で本当はそんなに時間をかけていない。加えて、連れて来たと言うが、実際は居場所を聞いたミクがハイエントに教えて領域で移動しただけのこと。

 その行動原理はミクに誉められたいからの一心であり、現状何が起きているのか気にしていない。


「ありがとうね」

 ミクにお礼を言われて照れる仕草をする宝玉獣(カーバンクル)達。

 そのあからさまに分かる行動にヴァビルカ前教皇がポツリと呟く。

「しかし、もう少し早く見つけていられたなら……」

 ピシリッとヒビが入った。

 瞬間、宝玉獣(カーバンクル)達はお互いの顔を見つめ合うと、乱闘を始めた。

 ミクが慌てて止める悲鳴を危機ながらハイエントが呆れた表情で言う。

「わざと言ったな?」

「少し発破をかけてみただけですの」

 悪戯っぽく笑って宝玉獣(カーバンクル)の様子を見ると、どうやらミクの一声で乱闘が終わり一列に座って耳を垂れながら説教されている。

「喧嘩をするからですの」

「お前が言うか……」

 原因が何を言っているんだとハイエントが睨むも、ヴァビルカ前教皇は宝玉獣(カーバンクル)達に言う。

「それでは、先程よりも早く残りを見つけてください」

 その言葉に宝玉獣(カーバンクル)はピシリッと気を付けをするといつもミクと共にいる宝玉獣(カーバンクル)含む数匹以外が散らばる。


 宝玉獣(カーバンクル)がいなくなるのを見届けて本題に入る。

「さて、ここまで騒いでも気付かないとなりますと、少しおかしいですの」

 ズリエルと距離が開いているとはいえ、ズリエルほどの天族であるならこの騒ぎに気が付いて何らかの行動(アクション)を起こすはず。

 しかし、ズリエルは起こさないどころか仕掛けてくる気配等もない。

「散々騒ぐ原因を作って言うのがそれか?」

「ハイエント、様子を見られますか?」

 バレて襲われることもあったのに反省の素振りを見せないヴァビルカ前教皇に嫌々になりながらもハイエントは改めてズリエルを見る。

「たく……ああ、あの顔は動揺してるな」

「そうですか」

 ズリエルの表情からそうよう見えたと言うハイエントにヴァビルカ前教皇が納得する。

 その理由は恐らくズリエルの目の前でバキエルがアムブリエルの中に戻された過程を目撃したからだ。何が起こり何が何だか分からないズリエルにとっては信じられないことと恐怖に違いないはず。

 そして、その理由を知っているズリエルが何故他の分体と行動をしていないのか知っているヴァビルカ前教皇とハイエントはその様に推測し、十中八九正解であろうと考える。

「このまま奇襲をかけて刈るのは簡単だが、力は厄介だな」

「力ってどんな力?」

 ハイエントの呟きにミクが反応する。その質問にヴァビルカ前教皇が答える。

「ズリエルは全ての力を均等にするのです」

「全部って、あのズリエルも?」

「はい。本人も例外ではありません」

「ふ~ん」


 一通り説明してヴァビルカ前教皇はハイエントと話を再開させる。

「奇襲をしかけ、それに気づかれるということもあります。私は反対です」

「そうだな。そうなると正攻法か」

「それが安全でしょう。しかし、難しいのう」

「難しいな」

「どんな風に難しいの?」

 2人の会話に再びミクが参戦する。

「私達は一度、ズリエルと戦っております」

 話によると、一月前に殺しに掛かってきたズリエル含む天体3人を退ける為に戦ったことがあるのだ。

 その時はモルテからわざと負ける様に、けれども殺すには元が合わないことを示せとなかなか難しい要求をされ、襲撃してきた天体もアドナキエルの念押しの命令とズリエルの反対もあって、互いに余力を残し、ヴァビルカ前教皇とハイエントが投降する形で終息したのだ。

「それじゃ、その時に本気で戦ったら勝ったの?それと、今ならあのズリエルと戦ったらどうなの?」

 ミクの無邪気な質問に2人の老人は真剣に言う。

「負けていたな。ズリエル1人ならば五分五分だ」

 微妙な所。それだけにズリエルの力は厄介であると2人の老人は考えていた。

 にも関わらず、ミクはう~んと唸る。

「ねえ、そこんなの出来ないかな?」

 ミクはそう言うとなかなか面白い提案をする。

 それはベテランと言える2人の老人が思い付いていたことであり、正しく対ズリエルの為に考えた作戦でもあった。

「えっ、そうなの!?」

 同じことを考えていたと言われて驚くミクだが、2人の老人の目には目の前の少女(ミク)が有望に見えた。

「それでは……」

 そうして作戦に関して各々の役割分担が決められた。

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