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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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向かれた牙

 天族を含めたシエラに存在する生命全ては自分達を創り出した神を崇めている。

 それは何故か。神がこの世界に自分達を生んでくれたから。それは父であり母であり親であるから。親を害する理由などない。それだけで神を冒涜しない理由は十分であり、当たり前のことと思っていた。

 しかし、シエラの生命全てが思う意に反して神に牙を向けたのがアムブリエル。

 自身の出世を知ってか、もしくは出世事態を否定された様な行いに怒りを抱いたのか。アムブリエルは親である神に歯向かう決意を示したのだ。



「あり得ない!何故天族でもあるアムブリエルが主に歯向かう様なことを……!」

「だが、事実であり、理由はこれしかない」

 アムブリエルが反乱を企てた理由に反発するダグザをモルテは厳しい口調で黙らせる。

 セラフィナとフレイアも信じられないと思うも、今までの話からそうとしか考えられず顔を青ざめたり黙り混んでいる。

 そもそも、天族が頑なに天族は裏切らないと言ったのは、シエラに暮らす者達の中で特に神に必要とされて付き添っているからだ。

 親である神に必要とされるのは何物に変えることなく幸福なことなのだ。それが例えその為に創り出されたとしてもだ。

「神の座を狙っているって、そもそも奪うことって可能なのですか?」

 重たくなった雰囲気の中でディオスがアムブリエルがやろうとしている行いが本当に出来ることなのかと尋ねる。

「不可能だ。今まで前例がないということもあるが、あいつから神の座もろとも奪うことは出来ん」

 その質問にショックを受けている四大天族の3人に変わってモルテが説明する。

(あいつって、神様のこと?そう言っていいんですか?)

 一つだけ耳を疑う言葉にディオスは心の中で突っ込みを入れる。

 ちなみに、その言葉にハイエントが目を反らすとヴァビルカ前教皇も言葉には出していないが同じことを思って顔に浮かんでいた。


「モルティアナ様はまた……」

 だが、これが切っ掛けとなってか、ショックを受けていた四大天族の3人に血の気が戻り。次の瞬間には恐れ多いと別の意味で顔を青ざめた。

「気を抜かせばまたその様な言い方……」

「何がだ?」

「何がではございません!何故主に対してその様な言い方を……」

 神に対する言い方を改めてほしいとモルテに訴えるセラフィナ。だが、その表情は血の気が引いたままだ。

「だが、気が逸れただろ?」

「逸らしすぎです!」

 しかし、モルテとしても神を除け者にする様な言い方にはセラフィナ、フレイア、ダグザの気持ちをいくらか和らげる主旨があったようで、結果的に効果がありすぎた模様だ。

「ねえ、師匠は神様に何やったの?」

「ミク、その質問は今はなし。話が進まないから!」

 ミクの言葉にディオスはすぐに遮って話の論点からずれようとするのを防いだ。


 話の論点へ戻す為にディオスは会話の中で気になったことを聞く。

「それで店長。気になったんですが、どうしてあえて捕まったことが反乱の理由を掴んだ理由になるんですか?」

 モルテは神ではない。天体を統治しているに過ぎず理由にしては不適切な立場だ。精々が邪魔で閉じ込められたのなら分かるが、これで神であるのだから理由が不透明である。

「それか。それはだな……」

 ディオスに言われてモルテは僅かに目を反らし、その様子は初めてとディオスとミクは思う。

 だが、モルテは諦めたように溜め息を吐いた。

「……代理だ」

「……はい?」

「……ん?」

「あいつの、神の代理をしているからだ」

「……え?」

「……んん?」

 モルテの告白に沈黙。そして、

「だっ、神の代理!?」

 ディオスの驚愕する声が響き、それに驚いて今まで静かにのんびりしていた宝玉獣(カーバンクル)が驚いて何事かと一斉にディオスを見る。

「ちょっ、ちょちょちょちょちょっと待って下さい!だって、えっ!?」

「事実じゃ。モルティアナ様は主の仕事を代わりに受け持っておる」

「何でですか!?」

「それは、その……」

 予想していた質問とはいえ答えにくいと四大天族の3人は視線を反らし、何も教えてくれないからとヴァビルカ前教皇とハイエントにも向けるとあからさまに視線を反らされた。

「出来ることならすぐにでも返したいくらいだ!」

「……」

 これだけで神には何らかの理由があるのが分かるが、さすがに天体を統治して神の代理を兼任するモルテの規格外が改めて恐ろしいと思える。

「つまり、店長が神の代理をしているから捕らえられたってことですか?」

「そうだ。それと捕らえられたのではない。あえて捕まったのだ」

 消え入りそうに確認するディオスの声にモルテは普段通りに返した。


「ねえ、それだったら師匠じゃなくて神様が直接出て止めろって言ったら終わるんじゃないのかな?」

 そこにミクが早期終結の案を上げるが、それにディオスがダメ出しを入れる。

「それは駄目だ。アムブリエルが神の座を狙っているってことは神も狙っているはずだよ。どれだけの力かは分からないけど場合によっては混乱する状況になるから神は出てこれないよ。それに、出てくることこそがアムブリエルにとっては都合がいいから余計に出られない」

「そっか」

 話を聞いてそれなら今も神が出られない理由なのかと納得するミク。

 その話を聞いて人知れず安堵する四大天族の3人。

 どうやらそれ以外にも理由があるようだがここでは口に出すことがない。


 しかし、次の瞬間にディオスはモルテに厳しい言葉を投げ掛けた。

「ですが、店長は早い時点で目的が分かっていたんですよね?それならどうして動かなかったんですか?」

 企みはモルテがあえて捕まった時点で把握していた。だが、その後の対処が遅いこととなかなか乗り出さない怒りをぶつける。

「動かなかったのではなく動けなかったのですよ」

 そこに助け船を出したのはヴァビルカ前教皇だ。

「ディオスさんは輪廻転生の仕組みは知っておりますかの?それと、それを行っておるのが誰か?」

「はい」

 輪廻転生は現界(エーラ)の人間が来世で生まれる為に必要なものであり、それが上手く動いているのか監視するのが天体である。

「発覚した時点では天体をその任から外すことが出来なかったのです」

「つまり、それをどうにかしない限りは何も出来なかったってことですか?」

「はい」

「それともう一つ。神の座はアムブリエルの目的の一つにしか過ぎない。手に入れてようやく出来ることがある。それを調べる為にもモルテは天体の解体を後回しにしたんだ」

 ハイエントも助け船に加わりモルテがこの件で疎かにしていないことを伝える。

「だが、時間をかけ過ぎたのは確かだ」

 本当ならディオス達が訪れる前に片付けるつもりだったのだがとぼやく。

 それだけでいかにモルテが大変なことをしていたのか分かってしまう。


「それで、どうされますか?」

 今回の反乱の件が概ね分かったとセラフィナはこれからの方針を尋ねる。

 今まで何もしていなかった分やる気である。

「アムブリエルの全て粛清とする。分体もろとも逃がすな。それと、ヴァルハラ城の守護。絶対に入れさせるな」

「分かりました」

「承った」

「かしこまりました」

 モルテの指示を受けてセラフィナ、フレイア、ダグザは瞬時に動き出してこの場から姿を消した。

 天体反乱阻止の為に改めて動き始めたのだ。

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