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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
20章 天体反乱(後編)
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天体の真実

 正直、数なんてものは関係ないものと思っていた。それも、説明する度に変わる数なんて最も。

 しかし、変わる理由を聞かされ、事情をよく知るセラフィナ、フレイア、ダグザは真っ先に声を上げた。

「分体ですって!?」

「天体の殆んどが分体じゃったと言うのですか?それもアムブリエルからの!?」

「そうだ」

 セラフィナ、フレイアの言葉にモルテは頷く。

「だけどそんなこと。確かにアムブリエルは複製で自分の分体は作れますが見本(モデル)なくしては作れないはずです」

 ダグザはモルテの言うことはおかしいと訴える。

 既に事情を飲み込んでいる四大天族の3人に遅れてヴァビルカ前教皇とハイエントも意味を飲み込んでいる話しに加わる。

「それだけではないはずだのう。アムブリエルは複製した者の力も使いこなせるはずです。存在しない力をどうやって複製出来るのか」

「例え出来たとしても複数の人格を常に演じるようなものだ。とても出来るものとは思えないな」

 2人もダグザの意見に賛同する。

 その意見にディオスは少し困った表情を浮かべた。

「あれ?俺の考えがおかしいのかな?俺はアムブリエルから別れたものと思ったんですが?」

「うん。あたしもそう思った」

 ディオスとミクは大多数が思っていることとは全く違うことを言う。

 そう言われて大多数が驚いた表情を浮かべて2人を凝視する。

 言われてみれば、モルテは分体と言ったが複製したものとは言っていない。

 アムブリエルの力がどういうものなのか知る者にとっては力で作り出して数合わせにしたものと考えたのだが、少しだけ知るディオスとミクでは捉え方が違うのか直接的なものと考えたのだ。

「いや、別れたって……そんな物を分ける様な言い方……」

「ミクとディオスが正しい」

 違うだろうと言うダグザをモルテが止めるようにして入る。

 その言葉に全員が、ただしいと言われたディオスとミクでさえ驚いている。


「本当なのですかな?」

「一体何の為にじゃ?」

「何を分けるかまでは想像でしか今は出来ませんが、それはアムブリエル本人がやったことなのですか?」

 ヴァビルカ前教皇、フレイア、セラフィナの順で追求され、モルテは一つづつ答えていく。

「まず、何が別けられたのかと言うと、アムブリエルの力だ。そして、それを行ったのが神だ」

 神と言われて一瞬沈黙する。神の捉え方は多種多様でありどの様に反応するべきか困ったからだ。

 だが、モルテは話を進める。

死神(デス)の死後、新たな死神(デス)が動き出すまでの間とその後の働きを助ける為に天体の数を増やすこととなった。だが、何を間違えたのか、神は今までとは比較にならない程の力を持った天族を創りだした。それがアムブリエルだ」

 語られたのはアムブリエルがシエラで生まれた話し。全てはこの時が切っ掛けであったのだ。

「その力の巨大さに危惧した神はアムブリエルに自我がないことをいいことに11に力を別け、力を納める器としてアムブリエルの力を用いて新たな天族を創り出した。それが今の天体だ」

 何故アムブリエルから天族を創り出したのかと言うと、力と親和性が良く、力を納める器を神が準備出来なかったからだ。

「だが、それならいずれ気付かれるだろ?いや、知っていることになるんじゃないか?」

 同じということは本体であるアムブリエルが自覚している、もしくは自覚して何らかの行動を起こすのではないかとハイエントは推測した。

「神もそれを危惧し何十にもなる制限を施している。だが、それでも防げない可能性もあるとし、アドナキエルとアスクレピオスに監視を言い渡した。アドナキエルには天体を纏め内部から、アスクレピオスは正体を隠し外からの監視とした」

「だからか!急にアスクレピオスがアルカディア図書館に移動されたのは!」

「あの時の命令は疑問に思いましたが、今になればそれは納得します」

 神が行った策に当時を知るセラフィナとダグザが長年抱いていた疑問に納得したと叫ぶ。

 一方で初めて聞くことだらけの人間側は色々なことを思い浮かばせていた。

「つまり、天体の全てはアムブリエルで構成されているということですか」

 「それなら店長が言った数の意味の半分が分かります」

「だが、今回は安全策が破られたことに気が付かず反乱に発展したということか」


 ハイエントの容赦ない言い様に沈黙が再び起こる。

「でも、何でそんなに危険だったら神様はアムブリエルを消さなかったの?」

 ミクの疑問に一部は恐ろしいことを言うなと思ったが確かにと思ってしまう。

 神は天地創造を行ったのなら、自分に不利なことは行わない。結果的になってしまったのなら消すことくらいは簡単なはず。

 しかし、この疑問に四大天族の3人が何とも言えない表情を浮かべる。

「不可能です。主にその様なことは出来ません」

「どうして?」

「主は創ることは出来るが壊すことは出来んのじゃ」

「え?」

 セラフィナとフレイアの説明にディオスとミクが驚いた表情を浮かべた。

「なるほど。だからですか」

「何だ?何がだからだ?」

 ヴァビルカ前教皇の呟きにハイエントが尋ねる。

「失楽園。何故罪を犯した人間が何故シエラを追い出されたのかです。お嬢さんの言う通り神は気に入らないものに対して無関心、もしくは消してしまうと考えられています。ロード教を含む他の宗教も神に見捨てられない為に必死です。しかし、それは間違いであった。神は慈悲で追放したのではなく、何も出来ないから追い出したのです」

 次第に消えていくヴァビルカ前教皇の言葉に人間側の雰囲気が重くなる。

「しかし、再び振り向かせてくれたのが初代ロード。あの方がいなければ私達は見捨てられたままでここにはいなかったのです」

 事実は残酷ではあるが紡がれてきた願いが今も繋がっているのが自分達がシエラにいることであると絞める。


「話を戻す。制限とアドナキエルとアスクレピオスの監視を掻い潜ったアムブリエルは力を戻す為に動き出した。既に幾人かは戻され、気付かれないように姿を型どっている。今まで気づかれなかったのはそれが理由だ」

 気付かれる前に動き出していた為に既に手遅れの範囲に達していた様だ。

「もしかして、アムブリエルの目的は自分の力を全て取り戻す為に?」

「待って下さい!それなら何で反乱なんて言ったんですか?反乱って誰かか何処かに対しての言葉ですよね?これじゃ、自分の力を別けた神に復讐する様なものじゃないですか!」

 セラフィナの推測にディオスが今回の目的が本当にそれだけであるのかと追求する。

「その通りだ」

 その瞬間、モルテが間髪いれたことで部屋にいた全員に緊張が走る。

「私を捕らえたことからはっきりした。アムブリエルは神の座を狙っている!」

 それはシエラを巻き込んだ神への復讐劇であった。

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