表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
19章 天体反乱(前編)
802/854

閑話 ミクの暴走

本編に組み込むとかなり話数が膨らむ恐れがあって没にした話し。

予定では別の閑話を書くつもりでしたが急に思い浮かんでしまったのでこっちになりました。


「あたしも行くー!」

「駄目だ」

 ディオスを助けに行くと暴れるミクをクレメンスが両脇から抱き抱えて阻止し、その様子を見守るセラフィナ、フレイア、ダグザ。

 そして、4人は全く気付いていなかった。

 ミクと共に来ていた宝玉獣(カーバンクル)が目を赤くして宝玉を輝かせて光線を発射させようとするのを。


 そして、その時は訪れた。

「何で行ったら駄目なの?」

「危険だからだ。分からないのか?」

「分かるけど助けに行きたいの!」

「ならば、尚更許せん」

 許可も何も許せないからと拒否するクレメンス。

 だが、

「おぉっ!?」

「クレメわあっ!?」

「ダグザなっ!?」

「これひゃっ!?」

 四大天族目掛けて約400匹の宝玉獣(カーバンクル)が光線を発射。しかも、前もって打合せしていたかの様に一定数集まった宝玉獣(カーバンクル)がタイミングをランダムにし発射している。

 纏まった光線が四大天族目掛けて避ける隙までもない勢いで四方八方から放っている。

 とはいえ、四大天族でも宝玉獣(カーバンクル)の攻撃は少し痛いくらいで問題がない。しかも、天族には敵の攻撃を防ぐ結界が有るために問題らしい問題はない。

 が、四大天族は絶賛、悲鳴を上げたり戸惑いなら宝玉獣(カーバンクル)から逃げていた。

「お、お前ら落ち着け!」

「ダグザ!クレメンス!どうにかせい!」

「どうにかって俺には無理だぞ!」

「そもそもが予想外だ」

「なら、クレメンス!貴方が何とかしてください!」

「不可能!」

「即答する前に考えろよ!」

 仲間内でどこからともなく増えた宝玉獣(カーバンクル)から逃げる四大天族の理由はどれも共通。

 宝玉獣(カーバンクル)が何故四大天族を翻弄出来ているかと言うと、宝玉獣(カーバンクル)が四大天族の超至近距離から光線を発射しているからだ。

 お陰で結界を張るには近すぎる。出来ても一部分。ならば体全体をとすると、宝玉獣(カーバンクル)が抱き付いてきて押し倒される為に結界の意味がない。

 それに、当たれば痛いことが分かるから当たりたくない気持ちもある。


 このままではジリ貧とセラフィナが叫ぶ。

「クレメンス!ミクさんを連れて逃げなさい!」

「待て!それは世に囮になれと……」

「行け!クレメンス!ミクをヘルヘイム城に行かせるな!」

「とにかく急いで逃げろ!」

 続けてダグザ、フレイアの順でクレメンスにこの場から逃げるように促すが、3人とも自分達が足止めをする主旨の言葉を発していない。

 クレメンスの予想通り、クレメンスが囮となって四大天族と宝玉獣(カーバンクル)を引き離さなければならないのだ。

 とは言え、クレメンスに選択の時間などない。

「くっ……後で助けろ!」

 クレメンスは猛ダッシュで逃げ、その後を宝玉獣(カーバンクル)が列を成して追い掛ける。

 そして、宝玉獣(カーバンクル)が完全にいなくなったことで3人は解放感で息を吐く。

「久し振りに生きた心地がしません……」

「そもそも、宝玉獣(カーバンクル)はあそこまで群れるものじゃったか?」

「森の母の影響を受けているからじゃないか?しかし……あれは、な?」

 この件で思い思いに呟く3人だが、突如として大爆発が起きた。

 そして、先程出て行ったはずのクレメンスが進行方向から戻って来て、さらに逆方向へと飛ばされて行ったのを見る。

「……え?」

 まさかの事態に3人は茫然となるが立ち直りは早い。

「誰か!ミクを外に出さずに捕まえろ!」

「クレメンスは……ここの留守をお願いします!」

「ああ!何故これ程まで慌ただしくなるんじゃ!」

 一息付く暇もなく四大天族は部下を巻き込んでミクの押さえ付けに取りかかる。

 しかし、どういうわけかミクはニヴルヘイムで一時迷子になる。それが項をなしたのか四大天族側の天族を翻弄。隙を付いて脱出に成功するのであった。





 宝玉獣(カーバンクル)御輿に載ってヘルヘイム城を目指すミクの目の前に見覚えのある集団が見えた。

『む?おお!我が花嫁!』

『本当?』

『本当?本当?』

『うわぁ!本当だ』

 大木牙獣(ラタトクス)とその他大勢の幻獣の群れである。

『探したぞ我が花嫁!用事はすんだのか?ならば……』

「邪魔!」

 歓迎を示す大木牙獣(ラタトクス)を無視してミクと宝玉獣(カーバンクル)は素通りする。

 あまりの態度に大木牙獣(ラタトクス)及びその他大勢の幻獣は己の足や翼で追いかけて、一部が平行して走る。

『待て花嫁!俺様を無視するな!』

「ごめん、急いでるの。何かあったら今度にして!」

 取り合っている暇がないのだとミクにしては乱暴な口調で拒絶する。

 だが、それが良かったのかは分からない。普段なら興味がないと切り捨てる大木牙獣(ラタトクス)が興味を示した。

『何故急ぐ?そこに何がある?』

「あなたには関係ないよ!」

『いいや、関係ある。お前は俺様の花嫁だ。花嫁の為に何かをするのが王として相応しいと言ったのはお前だ』

 大木牙獣(ラタトクス)はそう言うとミクを口で加えるとポーンと投げて自分の背に乗せた。

「きゃっ!?な、何するの!?」

『何に急いでいるのかは分からんが、方向からしてあそこに向かっているのだろ?ならば、俺様が連れてってやる』

「え?ほ、本当に?」

『本当だ』

 まさかの協力に驚くミク。

 何しろ、大木牙獣(ラタトクス)が協力をしてくれたことで宝玉獣(カーバンクル)に背負われている時よりも早く着けるようになったのだ。

 宝玉獣(カーバンクル)が馬力1の自動車であるなら、大木牙獣(ラタトクス)はその倍。体力的面も考えればからにうれしい。

『お前達!このままあそこへ向かうぞ!』

『おおーーーー!』

 大木牙獣(ラタトクス)の言葉に配下の幻獣が一斉に叫ぶと森の中を走って大行進を行うこととなった。

 なお、ここまでミクを背負っていた宝玉獣(カーバンクル)はというと、疲れていたのか他の幻獣の邪魔にならない様に木に登ると休憩の為に休み始めるのだった。


* * *


 更なる速度と数で進撃するミク。

 そして、森が開けてヘルヘイム城の城門が見えて来た。

『着いたぞ花嫁』

「このまま突っ込んで!」

『しょ、正気か!?』

「うん!」

 まさかの行動に大木牙獣(ラタトクス)が驚愕する。

「中に入ってそのまま暴れて!皆々迷惑かかったんだから中で暴れてもいいはずだよ!」

 ミクとは思えないほどの強気な口調と言葉。

 どうやらディオスが捕まったというのはミクにとって許せない部分に入っていたようだ。

『そうか。お前達!このまま突っ込むぞ!それで大暴れだ!』

『おおーーーー!おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 森の母であるミクと大木牙獣(ラタトクス)からの許可を受けた幻獣が雄叫びを上げながらヘルヘイム城の城門に突進。

 本来ならびくともすんともしない不動の扉が、幻獣の数押しと速度と様々な力の複合により、数度の衝突の末に打ち破られて幻獣の侵入を許すことになった。


* * *


 その後、天体は予期していなかった突撃、更にはミクを追い掛けて第2陣として侵入して来た四大天族達の相手に付きっきりとなってしまった。

 そんな最中でミクは途中で宝玉獣(カーバンクル)と合流をすると大木牙獣(ラタトクス)に跨がったままディオスを探す。

「……どこにいるの?」

 当てもなく走るがディオスがいそうな場所に検討が付かない。

 焦りが浮かぶにつれて、いつも一緒に入る宝玉獣(カーバンクル)の手がミクにこっちと促す。

「どうしたの?」

 尋ねると宝玉獣(カーバンクル)は手を前方に向けた。そして、そこには数匹の宝玉獣(カーバンクル)が扉の前で待機していた。

「もしかして、あそこに?」

 すると、宝玉獣(カーバンクル)はコクりと頷いた。

 その様子に信じる価値があると直感したミクは大木牙獣(ラタトクス)に指示を出す。

「ねえ、あそこの扉壊せない?」

『容易いごようだ!』

 ミクの頼みだからと大木牙獣(ラタトクス)は軽々と扉を壊した。

 中を見たいと頼んで屈んでもらい部屋を覗き込んだミクの目には、ディオスとモルテと他2人がいた。

「師匠とディオ見つけた!」

 ディオスと意図せずモルテを見つけたことにミクは今までの中で一番の喜びを感じ取った。

これで19章は終わりになります。

裏話は明日の活動報告に載せます。


現在、実家に帰省中の為にしばらくお休みになります。

次回更新は11月29日になります。

20章をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ