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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
1章 新従業員採用
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葬儀屋への被害

 四人は食卓でファズマが買ってきた昼食で遅い食事をしていた。

 四人分あるのはもちろん採用希望者であるディオスも含まれているからであり、昼食が遅くなったのはモルテが朝に運び込まれた遺体の遺族と葬儀についての話をしていた為に遅くなったからだ。

「なるほど。だから窓ガラスが割れていたんですか」

 その席で窓が割られた時にその場にいなかったファズマがモルテから経緯を聞いていた。

「朝から石を投げ入れるとはどうかしている。裏通りとはいえ人目というものがあるだろう」

「むしろ勇気ありますね」

「ファズマが言うと説得力があるな」

「あ、あははは……」

 変に関心するファズマだが、次に言われたモルテの言葉に苦笑いをした。昔の出来事をえぐり出されそうで怖い。

「警察には?」

「少し前に連絡した」

 割られてすぐに警察に連絡をしなかったモルテ。

 その理由は信頼出来る警察官アドルフがいなかったからだ。アドルフ以外の警察官はあまり信用していないモルテ。だから連絡が遅くなったのだ。

「心当たりないよね?」

 ミクの言葉にファズマは少し考えてから頷いた。


 そんな話をしている間、ディオスの表情は暗かった。

「嫌いなものありました?」

「い、いいえ」

 唐突にファズマに声をかけられてディオスは慌てて首を横に振った。

 出された食事に嫌いな食べ物はない。不味くはなく美味しい。けれど、顔が傷だらけの遺体を見たら食欲が湧かない。それだけならよかった。

(多分、俺がここにいるから……)

 ディオスには窓に石が投げ入れられた理由を知っている。知っているのにそれを教えず申し訳なく思いなおさら食欲が湧かない。


 モルテはコーヒーが入っているカップをテーブルに置くと職業案内所からの手紙に目を通し始めた。

 手紙の中身は案内状とディオスの経歴書である。実践させたから店長としてそれを見る。

 案内状に目を通し、経歴書を見たモルテの目が細くなる。

 その時、ガシャーンという音が再び店内から響いた。その音にディオスの鼓動が高鳴った。

 妙におかしい音を聞いてファズマとミクは慌てて席を立つと店内へと駆け出した。

「チッ」

 モルテは舌打ちをすると見ていた経歴書を乱暴にテーブルに置いて早足で店内へと向かい、その後をディオスは再び恐怖心を抱きながら後を着いて行った。


 ファズマは頭を抱えていた。

「これは……」

 窓ガラスが二ヶ所割られていた。店内には石が二つ。どうりで窓ガラスが割れた時の音がおかしかったと頭の隅で考えた。

「見つけ次第弁償させる」

 モルテは計三ヶ所割られた窓ガラスを見て悪態をついた。

(やっぱり、俺がここにいるから……)

 その一方でディオスの表情は真っ青であった。何となく分かっていた。自分がこの店にいるという事が店側にどういった被害がかかるかを。

 重たい空気の中、ミクの声が響いた。

「ほうきとちりとり持ってきたよ」

「あ、俺がやるよ」

 ミクの言葉にディオスは他の二人よりも早く声をかけるとほうきとちりとりを受け取った。

「それはこっちでやるから……」

「やらせてください。食事までいただいたんです」

 ファズマの対応にディオスは笑みを浮かべて言った。

 嘘ではない。久々にまともな食事を食べたのだ。それに、窓ガラスが割られたのは自分に原因がある。

「ファズマ、ミク、こっちに」

 ディオスの行動を静かに見ていたモルテが食卓へと通じる扉に二人を誘う。

 ファズマとミクは顔を見合わせるとディオスに一声かけた。

「すみませんがお願いします」

 そう言ってたった今出てきた廊下へと駆け込み扉を閉めた。


「はぁー……」

 扉が閉められたのを見てディオスは息を吐いた。

(あの様子、店長さんは気づいているかもしれない……)

 ディオスはモルテの行動が窓ガラスが割られた原因に気づいているのてはと考えていた。

(また、探さないとダメだな……)

 あまり期待はしていなかった。なるべく人がやりたくなさそうな仕事を探して、労働力がきつくても給料が安かろうと続けられそうなら続けようと思っていた。けれど、こうも早く事が起こるとは思わなかった。それに、ここの店長はあまり人を雇いたがらないのが最初の時点で確認している。

 どのように転がろうが就職は絶望的であった。だから諦めろと自分に言い聞かせた。


 割れた窓ガラスを全て片付けた頃、扉が開く音が聞こえた。

「それじゃ行ってきます」

 そう言うとファズマは店の外へと出ていった。

 恐らく仕事なのだろう。深く考えない事にした。

「ガラスは片付いたみたいだな」

「あ、はい!」

 ディオスの言葉を聞いたモルテの片目が妙に輝き、表情は笑みを浮かべていた。

「ついでだ。久々に店を掃除するぞ」

「は~い」

「はぁぁ!?」

 モルテの爆弾発言に明るく返事をしたミクと予想外の事に叫び出すディオス。

「何がはぁだ?やると言ったらやるぞ」

「え、いや……え!?」

 葬儀屋関係ない!と突っ込めないディオスはたじたじである。

 結局、店内と遺体が置かれている仕事場をこれでもかと掃除をさせられ、ディオスが解放されたのは夕方であった。

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