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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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一致団結

 ファズマの話を聞いたヒース達はしばらく考えこんだ。

 そして、一番早く思考から抜け出したギベロックが尋ねた。

「もしかしてと思うけれど、店長狙い?」

「俺もそう考えている」

 ファズマの言葉に思考していたヒース達が一変、何かを睨み付けるかのように目つきが怖くなった。

「何やろうとしてんだそいつは!」

「店長は俺達の恩人だ。手を出してただで済むと思っているのか!」

「いや、その人達は俺たちのことを知らないから言うだけ無駄だ」

「んな細けえこといいんだ!店長に手を出してきたってことは俺らの敵だ!そうだろギベロック!」

「否定はしない。俺も怒っているんだから」

 ヒース、ザック、ギベロックの会話にディオスは息をのんだ。

 ものすごくモルテを慕っていると見た彼らの言動はあまりにも怖すぎるからだ。

「そんなことはどうでもいい」

 今にも喧嘩を売る為に暴走しそうな男共を置いといてリアナはファズマに尋ねた。

「それで、ファズマがここに来たってことは何か頼みがあるってことだよね?」

「何をすればいいの?」

 リアナの質問に付け足すようにリチアも尋ねた。

 説明の手間が省けて助かるとファズマはスラム街の仲間達に言った。

「ガッロ辺りを調べて欲しい」

 ガッロと聞いてディオスは驚いた。

 ガッロは人身売買に手を染めていた借金取りと手を組んで父親であるグランディオを死に追いやった人物である。

 モルテと警察の活躍により後日人身売買の手助けをした罪等で逮捕され財閥が傾いて連鎖的におこぼれに与かっていた財閥や店が潰れたと聞いている。

 それなのに何故ガッロの名前が出てくるのか。それも今。全く分からずディオスは頭を捻る。

「ガッロって確かいびり出すだけ出して跡形もなく潰れた財閥だよな?何でそんな奴を調べないといけないんだ?」

 もはや何もないと言い切るザックの言葉はガッロのなれの果てを映し出している。そしてディオスと同じようにガッロを調べることに疑問に感じていた。

「ガッロじゃなくガッロ辺りと言ったんだ」

 ザックの言葉にファズマよく聞いておけと訂正を入れてため息をついた。

「ガッロが何で潰れたか知ってるか?」

「確か人身売買に手を貸してたからだよね」

「確かにそうだがより正確には店長に手を出して警察に露見して逮捕だ」

 間接的であるが間違ってはいない。手を貸したイコール手を出したと同じこと。

 この説明にディオス以外はファズマが頼んできた理由を察した。

「つまり、グノシーとか言う詐欺葬儀屋とガッロの関係とガッロについて調べ直して欲しいってことか」

「ああ」

 ギベロックが代表してファズマが要求していたことを言ったことでディオスにも理解した。

 確かにそれなら情報を聞くよりも改めて収集した方がいい。

「だけど、集めたとしても詐欺葬儀屋がどうにかなるわけじゃないだろ?」

「そこは死体が運ばれれば嫌でも潰れる。後はアドルフ警部に頼んで二度と手出しさせないようにする。証拠はあるだけあった方がいい」

 また店が潰れると言ったファズマ。だが、今度は死体が運ばれればと言った。

 店が潰れることと死体が一体どんな関係があるのか分からないディオスは頭の隅に寄せておくことにした。

「それにしても、あきねえなそいつら」

「それは一人じゃないからだ。一人なら同じことを何度もしない。複数だから懲りずにやれるんで」

「それが馬鹿だっつてんだ!何で出来ないって分かっていながらやるんだ?」

「したいからじゃないのか?」

 一方でモルテに手を出す輩に呆れたように呟いたヒースにギベロックが訂正を加えているとザック達が話に介入してきた。

「あれは自業自得だろ。自分で悪いことやっておきながら状況が悪くなると相手のせいにする」

「今でも財閥の方が偉いって思ってる馬鹿がいるから」

「ああ、いたねそんなの。それで、何もなくなれば仕返しをしたくなる」

「なるべくしてなったっつうのに向ける相手が違うだろ!」

「いわゆる復讐」

「え!?」

 元財閥の出であるディオスの前で財閥意識の高い者はおかしいと話すヒース達にディオスが慌てて待ったをかけた。

「ちょっと待って!復讐ってどう言うこと!?」

 復讐と聞いて何故復讐、恐らく対象はモルテであると思い尋ねた。

「ああ、ディオスは知らないのか」

 ディオスの言葉にザックは何を言っているんだと思ったがすぐに知らなくて当たり前かと思い直した。

「店長がこの街の統治を根本から変えたからだ」

 それはここを訪れるまでファズマから聞いたから分かるとディオスは頷く。

「その過程で色々やらかしてんだ。だよなファズマ?」

「そこで俺に振んな」

 ザックから話を振られファズマはため息を付きながら嫌々に話し始めた。

「統治を変える為に議長と議員を何人か追放したんだ」

「え……え?」

 何かとんでもないことを聞いたような気がして一体どういうことかと目を丸くしてファズマを見る。

「その時の風潮があったからね。貧しいのは統治議会と財閥のせいだって暴動が起こったよね」

「貧しかったことに否定しねえが褒められたことじゃねえっつってたからな。善意があるなら自分から下りてくれればよかったが追放したのは仕方がねかったんだからな」

「自分から下りるのは無理でしょ。財閥有権者を後ろ盾にして悠々と無駄な統治をしてたんだから」

「だから追放してよかったんだよ。あの時の警察は躍起になってたし、そのおかげで今の財閥は強くものを言えないんだから」

 統治議員の追放はどうやらヒース達には大歓迎のようである。

 アシュミストの住人からしてみれば当時の統治議会は酷い統治をしていたと認識騒動後に認識している。だから暴動を起こし議長を含む議員何名かの追放を行い自分達の望む統治を手に入れたことを誇りに思っている。

 だが、その先駆けで中心となってしまったモルテからしてみればその時背負っていた事情から褒められたことではなかったのだ。

「それで、そのことに根を持った議員関係者と財閥が店長に仕返し、復讐を考えたってわけ」

 だからあんな物騒なことを言ったのかとディオスは血の気が僅かに引いた表情で納得する。

「殆どが未遂に終わって復讐者達は今頃牢屋の中だと思う」

 どうやらモルテに手を出すともれなく警察行き、牢屋送りである。

 この時ディオスは葬儀屋フネーラの従業員にも関わらず牢屋送りにされないようにしようと心に決めたのである。

 話に区切りが着いたと見てヒースがザック達に叫んだ。

「それじゃ、店長の為に調べに行くぞ!」

 その言葉にザック達に気合が入った。

「おう!」

「留守番は?」

「いらないよ。とにかく急ごう」

「それじゃ時間リミットは夕方。集合場所はフネーラにしよう。ファズマ、夕飯食べに行くから」

「確認しねえで勝手に決めんな!」

 意気揚々と外に出ていくヒース達だが最後にギベロックが宣言した言葉に更なる気合とファズマの突っ込みが飛び出した。

 ここで休日の予定をすっぽかしていいのかと言う輩は誰もいない。

 結局、ファズマは言うだけ言って出て行ったヒース達に頭を抱え、ディオスは颯爽と去って行ったヒース達に驚いて目を丸くしていた。


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