ファズマの仲間
悪漢を退けるとファズマは茫然としているディオスを引いてスラム街の奥へと進んだ。
「ず、随分奥に来たんじゃ……」
「ああ、奥だ」
「どうしてここに訪れる理由があるんだ?」
「情報収集に決まってんだろ」
スラム街の奥で慌てるディオスにファズマは何事もなく目的を言ってしまう。
「さっきみたいな馬鹿もいるが、ここにはそれ以上に手が付けらんねえ馬鹿が裏世界の馬鹿話を聞いて売り買いしている奴がいやがる。いわゆる情報屋だ」
裏世界と聞いてディオスの表情が怖いものを見たような表情に変わった。
「そ、それって危険じゃ……」
「目を付けられると危ないな。特に、今みたいに叫んでいるとな」
その言葉にディオスの顔が青ざめる。恐る恐る周りを見て不審な人物がいないかと見ると、唐突にファズマが笑い出した。
「ハハハ!冗談に決まってんだろ!そこまでまだ遠い。ここにいるのは善良な住人だけだ。さらに奥に行かねえと付けらんねえよ」
冗談だけど冗談ではない。
「んな所行くのは俺一人の時だ。ディオスを危険にさらす訳ねえだろ」
しかも危険な場所が存在していると断言している。
「もしかして、ファズマは情報を得る為にいつも……」
「それは時と場合だ。必要としている情報が入んねえ時なんかに行くだけだ。誰が喧嘩万歳の無法者の住処に行くんだ」
言い方はあまりよろしくないがむしろそんなところに近寄りたくないイメージを植え付けさせる。
「だがな、無法者の住処でも真偽を見極めれば情報はかなり信憑性が高い。あの時は急いでいたとは言え、ディオスの情報なんかもそこから入手したんだ」
危険を犯してまで自身に関する情報をファズマが仕入れたことにディオスは驚いた。
あの時は何故自分のフルネームだけでなく身元、借金取り、その背後にいたとされるガッロの存在が分かったのか分からなかったのだが今分かった。
ファズマが大半の情報を収集したのである。時間的に余裕はないはずなのにモルテの言葉も踏まえるならスラム街だけでなく様々な場所を訪れて情報を集めていたことになる。素人のディオスにやれと言われても出来ないことをファズマはやってみせたのである。
実際はファズマ一人が全てを調べたのをディオスは知らない。
ファズマのすごさに驚いているディオスであるが当の本人は何ともない表情で話していたが実際はとんでもなく困難であった。
情報を欲する為に無法者が集うスラム街奥地へ足を踏み入れると予想通りスリや喧嘩を吹っかけられた。スリに至っては簡単に未然に防ぐことが出来るが喧嘩を吹っかけられた方が多い。もしかしたら情報を聞いているよりも喧嘩の方が長かったのではと思いたくなる時間の経過を感じていた。
そこは暗黒街に近かったスラム街の元住人であったファズマからしてみればあしらう方法がある為に何ともなかった。それに、耐え切れずに手を出してきた相手には返り討ちにあわせるだけ。
そんな対処をして情報屋から高額の情報料を対価に高い情報の信憑性を要求したのである。
「今回はそこまで急ぐことはねえからそこには行かねえ。必要なのは手だ」
「手?」
「情報を集める人手だ」
そんな話をしていると目的地にたどり着いたのかファズマが足を止めた。そこは周りと比べると少しだけ大きな建物であった。
「誰かいるといいんだがな」
ファズマは建物を見て一言つぶやくと扉代わりの板をスライドさせた。
「おーい!誰かいるか?」
開けるやいなや中へと叫んだ。すると、
「あれ?ファズマ!」
ファズマの声にすぐに奥からファズマよりも少しだけ歳が上と思われる男が出てきて驚いた表情を浮かべた。
「何だファズマ久しぶりだな、おい!」
「久しぶりだなヒース」
ファズマの来訪に喜んだヒース・エルフェドは奥へと叫んだ。
「おーい、全員来いよ!ファズマが来たぞ!」
「は?全員?」
豪快に叫ぶヒースの言葉にファズマが目を丸くした。そして、
「おい、ファズマが来たって本当か!?」
「ファズマ久しぶり。一ヶ月、ぶり?」
「正確には一ヶ月半だけど」
「私は結構会ってないけど」
奥からザック、ギベロック、リチア、そして初めて見るリアナ・シャーベットが出てきた。
知っている顔の登場に驚くディオスだが、ファズマは白い目をして尋ねた。
「なあ、何で全員いんだ?」
「休みだからに決まってんだろ」
「せっかくだから全員一緒に休みもらって過ごさないかってことになったの」
「あとはこれからの予定だな。統治議会に要望とか色々あるからそれも踏まえて相談しないかってことになって休みをもらったんだ」
ヒース達の説明にファズマはまさかの出来事にうれしいと感じるも何故か頭を抱えたくなった。
あまりにもタイミングが良すぎる。いつも尋ねれば一人いるくらいだ。それなのに全員そろっているとはどういうことか。誰かが仕組んでいるのではと思いたくなる。
「だからファズマが来たことにビックリしているんだ。久々に全員そろったな」
ファズマの気持ちに気づかずヒースが素直な感想を笑みを浮かべて言った。
ファズマとヒース達の会話に口を挟まず聞いていたディオスは何かに気づいて尋ねた。
「ファズマ、もしかして前に言ってた仲間って……」
「そういえばファズマ、そいつは?」
ディオスはファズマに質問途中であったがヒースが今までファズマの少し後ろにいたディオスについて尋ねた。
「ヒースは相変わらずだな……」
ディオスが聞いてきているのに話に割って入り質問をしてきた。ある種の空気の読めなさにため息を漏らす。
「こいつはディオスだ。店の方でめんどくせえことになったから連れてきた」
ディオスの自己紹介をものすごく短めにして挨拶などをかけないように早々に切り上げた。自己紹介なんかは落ち着いてから改めて出来るからだ。
そして、今までの呆れた表情から一変、真剣な顔つきになった。その表情に連れれるかのようにヒース達の表情も変わった。
「めんどくせえって何があったファズマ?」
ヒースの言葉にファズマは今朝あったことを全て話始めた。




