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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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真相の朝

 死神。

 それは死という現象を体現した死を司る伝説の神。

 大鎌を持ち黒いローブを身にまとった骸骨が死ぬ者の元に現れてその大鎌で魂を刈る。刈られた者は文字通り死ぬ。

 故に死は恐ろしいもの。そして、死を与える死神はもっと恐ろしい存在である。



 暗闇の中、モルテは大鎌を持ったまま立っていた。

「残念だがお前はもうじき死ぬ」

「え……」

 突然ディオスに死の宣告を告げたモルテは大鎌を向けた。

「え?ちょ、て、店長……!」

「お前の魂、刈らせてもらう!」

 次の瞬間、大鎌が振るわれた。


  * * *


「俺まだ死にたくないです店長ーー!……あれ?」

 ベッドから勢いよく起き上がったディオスは周りが寝室であるのに気が付いて安堵して息を吐いた。

(ゆ、夢か……)

 モルテが大鎌を自分目がけて振ってきたのが夢であったと気づいたディオスは再び息を吐くとベッドに倒れ込んだ。

「だけど、あれは夢じゃない……」

 そう呟くとディオスは昨晩起きた出来事、モルテが、葬儀業責任者三人が死神であると明かしたことを思い出していた。

 あれが夢であったらと何度思ったことか。

 自分の気持ちが全く追いつかなかった。そもそもどうして店にいるのか、どうやって店に戻ったのか覚えていない。

 あの後、三人に色々と尋ねたかったはずなのに聞かなかった。いや、違う。一つ二つ程聞いただけであとは聞くことができなかった。しかも、帰ってきた回答を覚えていない。

 常識外れと言えば聞こえがいいかもしれない。そもそも死神なんて馬鹿げている。死神は死と言う現象を具現化した伝説の存在である。そんな存在が近くに、それも目の前にいるなんて信じられないことである。何よりも伝説というのにそれを信じろというのが馬鹿馬鹿しい。

 それなのにどこからともなく現れた伝承通りの大鎌。そして生霊リッチとかいう幽霊ゴーストをあっさりと切り裂いた。

 刈られる側がもし人間なら死神は存在することになる。いや、骸骨ではないがあれは伝承で聞く死神そのものである。

「もしかして店長は……」

 ディオスは小さく呟くとベッドから起き上がると着替えをして一階のリビングへと向かった。

 今は朝である。この時間に全員が揃う場所は決まっている。

「おはようディオお兄ーさん」

 リビングに入るなりミクが挨拶をして腰に手を当てた。

「今日はあたしが早かったよ!」

 いつも起きるのが遅いミクが今回はディオスよりも早く起きれたことが嬉しくはしゃいでいる。

「ファズ、今日はディオお兄ーさんより早く起きれたよ!」

「そうか。そりゃよかったな」

 嬉しそうなミクの様子をスルーしてファズマがキッチンから朝食を運んでくる。相変わらず量が多く朝食に食べるような品でないのも置かれる。

 そんな中でディオスは椅子に座り新聞を読んでいるモルテを真剣な表情で見ていた。

「全員揃ったか」

 ディオスがリビングに来たのと朝食がテーブルに並んだのに気が付いたモルテは新聞を畳んだ。

「朝食にする」

 モルテの言葉を合図に今まで立っていたファズマとミクが席に座った。ただ一人、ディオスを除いて。

「どうした。座らんのか?」

 まだ立っているディオスにモルテは声をかけた。ファズマとミクは座らないディオスに不思議そうな顔をしていた。

「店長……」

 ディオスは意を決して口を開いた。

 もしかしたらモルテだけではない。ファズマとミクも死神なのではないのか。あり得ないかもしれない。けれどもあり得るかもしれない。答えなんて分からない。けれど聞きたい。その気持ちがディオスに次の言葉を発せる。

「店長は……店長達は人ではないんですか?」

 ディオスの質問にモルテは呆けた表情、ファズマとミクはさらに不思議そうな表情を浮かべた。

 沈黙が流れた。そしてモルテの口元が僅かに綻んだ。

「くっ……あぁははは!あぁははははは!」

 突然の笑い声にこの場にいた三人が驚いてモルテを見た。

「あぁぁはははは!面白い!実に、面白い!あはははっ!」

 未だに笑い続けるモルテ。と言うか大笑いである。

「うっわ……店長が笑ってる……」

「久しぶりに見たね」

 モルテの笑いっぷりに驚くファズマとミク。一方でディオスは今の発言のどこに笑ったのか分からず、予想外の反応に茫然としていた。

「あははっ!ファズマとミク以上に面白いな!はははっ!」

「あれは誰だって聞いても驚くことです!ディオスも驚いたよな?」

「え、あ、はい……」

 笑続けるモルテにファズマが突っ込んだ。突然話を振られたディオスは戸惑いながら頷く。どうやらファズマもモルテから死神と聞かされて驚いたらしい。

「それにミクは小さかったから死神について知らなかっただけです!」

 そしてミクにも話を振るファズマ。

 ミクは何?という様子で首を傾げる。どういう経緯かは分からないがミクには死神を知らない段階で教えていたらしい。

 まあそれはいい。いいのだが何故自分の質問にこれだけ大笑いをするのか分からないディオスは理不尽に感じていた。

 そしてしばらくして、

「笑ったな……久しぶりに笑ったな……ははっ」

 所々まだ笑っているが先程よりも落ち着いた様子でまだ立っているディオスを見た。

「さて、私達が人間ではないのかと言ったな。答えは間違いだ」

「え?」

 モルテから語られた言葉にディオスは驚いて小さく呟いた。

 もしかしたら死神と言ったから人間ではないと思っていたのだ。それを知ったところでどうしたいかは決めていなかったが。

「それじゃ死神って……」

「何なのかと考えているな?」

 そんなディオスの様子を読み取ったモルテは次に言うであろう言葉を先に言った。

 昨晩にディオスからいくつか質問をされ答えたのだがこの際どうでもいい。この場でまた聞かれると思っており改めて説明をするつもりであった。

 そして、最初に聞かれた質問の答えを口にした。

「死神とは肉体と魂の繋がりを切ることが出来る人間のことだ」

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