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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
3章 店長は死神
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嫌な類似

 電話越しでガイウスは話を続けた。

「シュメライット山にぃ様子を見に行ったアンナ嬢かっらの情報なんだけれどぉ、渓谷で人がぁ引っきずり込まれ~るように荒れた河にぃ入り込んでえ、死んだって聞いたとぉ」

 引きずり込まれるようにと聞かされディオスは背筋に寒気を感じた。

 それは愚者(ピエロ)を見た時と同じ感覚。どうしてかは分からないが何故か話に愚者と同じ何かを感じてしまった。

(何を考えているんだ?)

 その様に考えてしまったディオスは愚者と今回の話には全く接点はないだろうと自分に言い聞かせる。

「しっか~も、喰われてたとよぉ~」

(喰われた?)

 一体何を喰われたのかディオスには分からない。

「こりゃ~俺らが考えているよりもぉ~奴さん相当早くこっこにぃ降りて来るかもしれんとぉ伝えておいてくれぇ~」

「……はい」

 伝えるようにと言われて電話越しのガイウスに承諾したことを伝える。

「それじゃ頼むぞぉ~」

 そう言って電話は切れた。

「ガイウスおじさんどうしたの?」

 ミクは電話での話が終わり静かに受話器を置いたディオスに話が一体何だったのか尋ねた。

 ディオスはしばらくミクに答えず受話器から手を離さなかった。

 最初は関係ないと思っていた。けれど、もし関係、類似していたらどうだろうか。

 モルテは言っていた。『本来なら結び付かないはずのものが結び付いてしまうものもある』と。

 確かにこの前の愚者と今回の荒れた河に入り込んだというのに接点はない。けれどもいくつか類似している。

 一つは仮定ではあるが望んでいない死であること。

 ディオスの学友カリーナは望んで死んだわけではなかった。それが今回亡くなった人も同じだったら。

 二つ目は「喰われた」という言葉だ。ガイウスは喰われていたと言っていた。今思い出せば愚者を見た時も近くにいたミクが食べられると言っていた。

 何を食べるのかは全く分からないが考えれば考えるほど死の予感しかない。

「ディオ?」

 ミクが考え込んでいるディオスの顔を覗き込んだが全く気づかない。

(店長に聞かないと!)

 ディオスはこの内容がどうゆう意味か知るために結局ミクに気づかないままモルテの元へと駆け出した。


 その頃、モルテはファズマと共に二階の補強作業を終えた所だった。

「何とか修理できましたけど、店長、正直に言います。そろそろ限界です」

 ファズマがモルテに店の状況を告白した。

「分かっている」

 その言葉はモルテも知っていることでファズマに言われて頭を抱えた。

「それで、どうなんですか?」

 どうなのかと言われてモルテは言おうとして、

「店長!」

 ファズマの大声で口が止まった。

「何だよディオス?」

 大声でモルテを呼び階段を勢いよく駆け上がって来たディオスにファズマは何事かと尋ねるが、ディオスはモルテに問い詰めた。

「店長、一体何が起こっているのか説明してください!」

「何だいきなり?」

 何かに追い詰められたような様子で尋ねるディオスにモルテは全く気にせず、むしろいつもの様子で尋ねた。

「シュメライット山で一体何が起きているんですか!」

 その言葉にモルテが待ったをかけた。

「話が見えん。説明をしろと言われても何があったのかでは何も出来ん。そもそも、何故今になって聞く?」

 モルテの言葉にディオスは早く真実を知りたくて急いでいたことに気がつき一度口を閉じた。

 そして、ガイウスから電話があり伝言を言うとモルテの目が僅かに怖くなったのを感じた。

「なるほど」

 そう言って一言聞いたディオスは一瞬だけ視線をそらした。そして、モルテだけでなくファズマも怖い顔をしていた。

「そう言えば言い忘れていた」

 モルテが急に何かを言い始めた。ディオスは話をそらすのではと疑いの目を向けた。

「河に落ちたのは、女性だ」

 何故今これを話すのかとディオスは問い詰めようとした。

「店長、まさか……」

 だが、ファズマは違ったようだ。何かに納得した様子でモルテを見ていた。

「そうだ。今夜は忙しいぞ」

 今夜と言われてディオスは驚いて問い詰めるのを止めた。

「ファズマはいつも通り頼む」

「はい」

「ミクは夜の間は店に居ることだ」

「えぇぇぇ!!」

 突然モルテが指示を出し始め、その指示にディオスの後を付いて来て話を聞いていたミクが不満そうに叫んだ。

「なんで?」

「今回は危険たからだ」

 危険と言われて何故かディオスは背筋が震えたのを感じた。

「いやだぁ!」

「嫌ならオスローに預けるが?」

「店にいる!」

 駄々をこねたミクだがモルテからオスローの名が言われて一変して店にいると言い出した。

「ミクはオスローが苦手なんだ」

 一体どうゆうことか分からないディオスにファズマが小声で説明をした。

「ディオス。何が起きているのか知りたいのだろう?」

 そして、モルテがディオスに向けて言葉を発した。

「はい」

 その言葉にディオスは頷いた。

 正直に言えば色々と怖い。けれど、何が起きているのなら確かめなければならない。それに、モルテは何か隠し事をしていると考えている。

「ならば、今夜出かけるぞ」

「え?」

 危険とか言っている夜に出かけると言い出したモルテにディオスは目を丸くした。

「知りたいのだろう?ならばちょうどいいことだ。今夜出かけ、何が起こるのか見せよう」

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