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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
15章 店長帰還
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運がない警官

「おぉぉい!!」

 店のドアが思いっきり開けられると間髪入れずにアドルフが叫びながら入って来た。

「何をしているんだモルテ!」

「アドルか。大声を上げてどうした?」

 血相を変えていると言ってもいいアドルフにモルテは平然と向き合う。

「どうしたじゃないだろ!マオクラフはいつものことだからいいが……」

「いつものことって酷くない!?あと、この体制けっこうキツイから!」

 よからぬことを言ってモルテから制裁を加えられるのは当たり前とアドルフに切り捨てられたマオクラフは壁の向うから抗議しながら必死になって壁から頭を抜こうとするも出られていない。

 何故なら、今のマオクラフの体制は仰向きで体を沿っている、いわゆるブリッジが中途半端なままで固定されているのだ。

 その体制から抜け出そうと壁に両手を当てるも抜け出せていない。

「少し黙ってろ。さすがにこれはねえだろ!一体何をしたんだ!」

「壁ドンです」

「壁ドンじゃねえだろ!壁を貫通して頭が外まで出ているぞ!これじゃ壁にドン(・ ・ ・ ・)だろ!」

「壁にドンと言うよりは、壁バン?」

「ドンでもバンでも何でもいいだろ」

 マオクラフがやられた行為に突っ込みとボケが一通り終わる。


「それで、アドルフは何故来た?」

「それは、文句を言いに来たからじゃないんですか?」

 そう言えば急に訪れた目的を聞いていないと言うモルテにディオスは今までの流れから察して言う。

「ああ……さすがにマオクラフの頭が急に壁から出てきたら驚くぞ。しかも、鳩の被り物をしているからこれじゃ壁掛け時計の鳩だろ!」

「あぁ……」

 ディオスの言葉に頷いたアドルフはちょうど葬儀屋フネーラの前を通っていた頃だった様だ。

 しかも、マオクラフの頭と出くわしたタイミングを特定の時間が指すと鳩がポッポーと鳴く壁掛け時計の例えに、あまりにも合っていることでディオスが遠い目をする。

「加えて仰向きで顔まで見ることになったぞ。お陰で俺の部下が気絶したぞ」

「え!?」

 続けざまに出たアドルフからの発言に遠い目をしていたディオスは我に返るとファズマと共にドアを開けて外を見た。


 そこには壁掛け時計から出たままの鳩の様なマオクラフの頭と、近くで気絶している警官を介護する警官がいた。

「あぁ……」

「本当に気絶してるな」

 再び遠い目をするディオスと2人の警官の様子が面白いと思ってしまうファズマ。

 そして、ディオスが遠い目をする理由がもう一つあった。

「気絶してる警官の人、俺が初めて店に来た時の人だ」

「ん?それって、店長に怒鳴られてた奴か?」

「ああ」

 気絶しているのが、当時は新人で葬儀屋フネーラの顔合わせの為にアドルフに連れて来られ、その時にあった出来事に驚かされた警官であったことがディオスの口から語られた。

 最初の頃はアドルフが部下である警官を連れて葬儀屋フネーラへ仕事として訪れたりしていたが、部署か上司が変わったのか顔を見ることがなく徐々に忘れて去られていた。

 そして、しばらくぶりに再会した警官は初めて葬儀屋フネーラへ訪れた時同様にマオクラフに驚かされて気絶してしまった。

「運ねえな……」

 葬儀屋フネーラに訪れる度にマオクラフにより巻き添えを食らっているのではと思うと一瞬だけ憐れに思ったファズマは呟いた。

「それよりも度胸が無さすぎる」

「ああ、それは言えるな……根性はあるんだが……」

 ファズマが呟いた言葉に釣られるようにして店内からモルテが気絶している警官に酷評をし、アドルフが同意してしまう。


「それで、どうするんですか?」

 部下が気絶してるのに何でモルテの言葉に同意しているんだとディオスは呆れながら2人に尋ねた。

「仕方ない。目を覚ますまでこちらで預かろう」

「すまないな」

「まったくだ」

 結果がどうあれこのままにしてはおけないと葬儀屋フネーラで預かることとなった。

「ファズマ、ディオス、外で気絶している奴を中へ」

「は、はい!」

「はい!」

 モルテの指示にディオスとファズマはすぐさま外へ出て行った。

「ところで、俺いつまでこうしてないといけないんだ?」

 2人が外へ出てしまったタイミングでそれまで存在を忘れられて空気となっていたマオクラフが忘れないでほしいとアピールし出し。

「知らん」

「知らんって!?」

「自力で抜けられるだろ?」

「いや、抜けられないから!ほら!」

 モルテとアドルフの放置にマオクラフは頭が嵌まって今も抜けられないことを伝えるが今一つである。

 そうしていると気絶した警官を運んできたディオス達が現れた。

「店長」

「仕事場にでも寝かせておけ」

 結局仕事場へ運ばれるのかとアドルフが思いながらも気絶している警官は無慈悲にも仕事場へ消えて行った。

「さて、こちらは仕事を始める」

「そうか。部下を頼むぞ」

「ああ」

 モルテとアドルフは短いやり取りを交わし、それぞれ仕事へと移った。


「だーかーら!抜けないんだから助けてくれよ!」

 いつまでこの格好をしていないといけないんだと叫ぶマオクラフ。

 しばらくしてから、仕方がないとディオスとファズマにより救出されるのであった。

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