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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
14章 桜花の恋
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閑話 新たな関係構築

 今、むちゃ空気が重い。逃げ出したい。だって、目の前には……

「……」

 物凄く真剣な表情の宗頼がいるの!?そもそも、何で宗頼と正面向き合って座れへんといけへんの!?

 もう!話があるからって小春が呼んそやし来たら、何であたしの家に宗頼がいるの!?

「何でいるの?」

 小春には後で宗頼を通したわけを聞くけど、その前に宗頼よ。何で宗頼がここにいるん?

「話があって来たんや」

「話し、な」

 話って何やろう?

「奇遇な。あたしも話があったのよ」

 けどまあ、宗頼にはこの際そやし言いたいこと全部言うてしまおうかしら。


「……」

 あれ、話に来たのどすやろ?何で言いまへんん?

「どうしたん?早う言うて」

「いや、いざ言うってなるとな……言うことは決まってるんだが……」

「そないなら早う言うて」

 そうせんとあたしが言えへんではおまへん。

「そうやけど、つららも言いたいことがあるんだろ?言うことあるんなら先に言うてええから」

「あのね、何でそうなるん?宗頼が話したいことがあるから来たんでしょ?そないなら宗頼が先に言うべきでしょ!」

「そうだが……」

 何でほんで宗頼が口ごもるのよ。もう、焦れったい!

「それじゃ待つ」

「は?」

「ちびっとだけ待つから。あたしの気が切れる前に言うて」

「言えって言うけど、もう切れてるんやないか」

 ああ言えばこう言う!ほんまに……

「一言余計よ!言うん?言いまへんん?言いまへんのなら帰って!」

「言うにきまってるだろ!あと、一言余計やったのには謝る。ただ、つららが言うことあるって言うた時、何だと思ったんだよ」

 ああ、そう言うこと。そやけども……

「言うなら早う言うて。もう待てへん」

「あ、ああ……」

 そう言うて宗頼は頷いたけど、まだ言いまへん。


「……」

「……」

 時間だけが流れてる気がする。

 ……もう待てへん!

「すんまへん!」

「すんまへん!」

「……え?」

「……え?」

 今、何て言うたん?

「今、すんまへんって?」

「う、うん。宗頼は?」

「ウチもすんまへんって謝ったんだが……」

 え?どう言うこと!?

 そないなことを顔に浮かべとったからか宗頼が理由を明かしてくれた。

「……誤解やったとはいえ、長い間ずっと、つららに辛い思いさせとったからな」

 もそやけどもてあの時ん?モルテを男と誤解してあたしにしつこく聞いとった?

「謝るのがとろい!」

「はい……」

 ほんまにとろい!あたしがどれだけ傷付いたと思っとるの!早う言うて言うてればこんな思いせいなんだのに!

「……ほんまにすまん……」

 溜め込んでいた気持ち全部吐き出して、宗頼はしおれた。ホンマに……

「そやけども、あたしもワルかったわな。あれ聞かされてから宗頼のこと避けとったし、当たっとったんそやし。ほんまに、情けへん」

 あたしも勇気もって聞き出せばよかった……

「いや、悪いのはウチや」

「うん、そうやな」

「庇わないんだな」

 庇わないわよ。

 そやけども、このやり取りはちょいおもろいかもしれまへんな。

 何やろう。全部言うたからかな、宗頼と顔を会わせれば合わせても猪狩なんて湧いてこない。ただ、宗頼の表情が面白くて、間に耐えきれなくなって二人で笑っとった。

 宗頼と面向かって笑ったのは久し振りな。


「なあ、つらら。また、やり直さないか?」

「やり直すって何を?」

「……ほんまにそこは鈍感だな……」

 鈍感って何!?あたしのどこが鈍感なん?

「四年前に切れとった関係、もういっぺんやり直さないかってことや」

 四年前って……

「ほして、直ったら言いたいことがある」

 ああ、そう言うこと。ほんまにもう……

「宗頼はほんまに律儀なんそやし」

「律儀で悪いか?」

「悪くはないよ」

 そやけども、そのめんどくさいのが宗頼なんそやし。

「ただね、あたしは直さなくてもええかなって思ってるの」

「え?それって……」

「壊れた物は確かに直るわ。そやけどもね、あたしは直すんじゃなくて新しく作った方がええんやないかって想うのよ。そやし、宗頼が直す先を作っていかない?」

「つらら……」

 だって、あたしは宗頼に惚れた時からずっとそう思っとったんそやし。

「覚悟は決めてもらいますよ」

「つららに言われた……」

 何や宗頼が項垂れとるけど、何で?



「盛り上がってるトコ失礼しまーす」

「うおっ!?」

「ひゃっ!?小春!?」

 宗頼の言葉を待っとったら隣の部屋の戸が小春によって開けられた。しかも、小春の声が狙っとったみたいに。ただ……

「父はんに母はん!?兄はん!?」

 何で宗頼の家族もそこにいるの!?

「何で家に!?」

「そりゃ、宗頼がちゃんとつららはんに謝罪出来るか心配で来たのよ」

「えぇ……」

 宗頼のお母はんが見も蓋もないこと言うたけど、そら引きます。

「宗頼」

「はい、父はん」

「つららはんが長い間辛い思いしとったんや。これからそないな思いさせるな」

「はい」

 って、何や流れが……

「宗頼、幸せにしてやれよ」

「はい。……はい?」

 お兄はん、それ……

「待ってください!いまのトコどう言うことどすか!?」

 あたしが慌てて尋ねると、皆は、それこそ小春も当たり前の様子で、幸せそうな表情を浮かべとった。

「宗頼が男らしうけじめを付けられたならつららはん所に婿養子として出すつもりやったんや」

「えぇぇぇぇぇ!?」

 宗頼のお父はんの突然の言葉に驚いた声が出てしもた。突然もほんまに突然なのか呆然としてるし……

「昔から仲良かったからええんやないかってお父はんと話しとったのよ。早う孫の顔も見たいし」

「そうだな」

 昔から外堀が埋められとったのには気づいとったけど、ここまであからさまになると……気まずいのやら吹っ切れればええのか分かれへんわね……

「って、先に兄はんではおまへんのか!?」

「こいつは恋のこの字がないからな……」

 なるほど。宗頼のお兄はんは昔のこの手の話し聞いたことないものな。

「どすが、ええんどすか?宗頼も婿養子って……」

「ええんどすよ。いっぺん深く傷付けた息子やけど、ほんでもええのなら」

 あたしが確認の為に取ると宗頼のお父はんはもう決まっとることそやしと言うてくれた。

「つら姉、あたしは宗頼はんと幸せになってほしいな」

「小春……」

 すっかり宗頼の家族と話してて忘れかけとったけど、小春にとってもこの噺は重大なはず。それなのに小春は……

「小春、今までやくたいばかりでごめんな」

「ほんまよ。そやけども、それ忘れさせてくれるくらいではおまへんと許さないから」

 血は繋がってへんけど、あたしの唯一の家族である小春の笑みが眩しい。

「おおきに」


 改めて宗頼と向き直ると、宗頼も覚悟を決めたみたい。

「つらら」

「はい」

「よろしうお願いします」

「言う言葉がちゃうでしょ!」

 期待しとった言葉とちゃうことを突っ込んだら宗頼が何でって驚いた表情を浮かべた。

 ちゃうでしょ!しかも、周りまで呆れてるではおまへん!何でほんで……



 その後、宗頼に何度も言い直させてあたしと宗頼の婚約が決まった。

14章はこれで終わりです。

後ほど活動報告に裏話載せます。

次回更新は3月16日になります。

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