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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
14章 桜花の恋
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見つけた記録

 その後は軽く話し合いをして夜に桜花にいる死神と忍の顔合わせ、誰が忍の死神の師になるのか決める為の集が決まり忠信は立て続けに怒った出来事に頭を抱えながら帰って行った。

 その時間までモルテ達は秋人が記録して隠した資料探しを始めた。

 とはいえ、営業時間の都合もあり店内は後回し。忍が加わったことでその視点からありそうな場所をもう一度調べ直すこととなった。


「そういえばあんたの名前聞いてへんんそやけども」

 探しているって途中で小春が思い出した様に忍に言った。

「名前か?今はええ。後で名乗る。」

 対して忍は探すことを優先してか、口で言えばすぐ終わるものを後回しにして目についた不審な場所を調べる。

「それに、名乗るなら自分からやろう」

「お爺ちゃんのこと知ってるならあたしとつら姉のことも知っとると思ったけど?」

「知らされてもいなければ聞かされてもおらん。それに、ウチは帝から死神になれと言われてここへ来ただけや。馴れ合うつもりはない」

 自分の身元を明かさないばかりか命令された任務優先と宣言する。

 そんな忍に小春がボソッと呟いた。

「……ふんどし」

「お前、それをここで言うか……!」

 小春の言葉に忍は物凄い勢いで食らい付いた。

 ふんどしにされてしまった時の状況と気持ちは未だに忘れていない。

 しかも、一晩放置され、羞恥心を捨てて寝ることにした諦めは未だに引いている。

 そんな忍の反応が手に取るように分かるように小春はニッコリと笑った。

「モルテはんにふんどしにされて何にも思ってなさそうそやしほしてええかなって。どうかな?」

 そして、教えなければこれからふんどし呼ばわりすると無言の圧力をかける。


 忍としてあれは仕方がないことと割り切って受け入れていた。

 捕まったのは相手が悪かったから。そうなった原因は自分が下調べをしなかったこと。基本的なことを疎かにした為の罰なのだ。

 だから忍頭から雷が落ち、帝からは死神になるようにと挽回の機会と捉えるべきか鍛え直す為の左遷と捉えていいのか命令を与えられた。


 とにかく、今の忍にとって現状を受け入れて食いついていくしかない。そこにふんどし呼ばわりされれば今の気持ちが崩れてしまうと、忍は怖い表情を浮かべた。

「……しぐれや。川壁しぐれ」

「しぐれな」

 ようやく忍が名前を教えてくれたことに小春は微笑み、手を止めた。

「しぐれは馴れ合うつもりがないって言うけど、その割にはこうして手伝ってくれるのはどうして?」

「手伝えと言われたからや。これから桜花の死神の世話になることは分かっとる。帝からの命令とはいえ、これから教えを乞うことになる者に仇を与えるつもりはない」

 意外にも礼儀正しいことに小春は驚いた。

「つまり、先行投資?」

「何故そうなる!」

 そんな小春の的外れな言葉に場がしぐれは突っ込んだ。


 するとそこにただならぬ気配が感じられ、2人は気配がする方を振り向いた。

「……」

 そこには戸の隙間から何とも言えない様子のつららが覗き込んでいた。

「つ、つら、姉……?」

 小春が気づいて声をかけるもつららの雰囲気は収まるどころかさらに膨れ上がる。

 忍という裏事業であるしぐれでさえも理由は分からずとも今すぐに逃げたい気持ちに押されていた。

「……ほんまにうら」

 次の瞬間、勢いよく戸が閉められ同時につららの恨めしい声も消えた。

 そして……

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 戸を越してつららの悲鳴が聞こえてきた。

 その悲鳴にどうやらモルテに絞められているのだと悟った小春は心の中でつららに向けて手を合わせて止まっていた手を動かし始めた。

「……ウチ、あの女の下にはいたくないな」

 そうして、しぐれはつららの弟子にはなりたくないと誓うのであった。


  * * *


 結局もう一度調べ直した部屋にはなく、夕方になり店じまいをしたことで店内に手を出せるようになった。

「……モルテのいけず……」

「うるさい」

 初めの頃はモルテに絞められていたつららがボソボソと呟いていたが、徐々に全員が気にならなくなった頃には収まっていた。


「ここにもない」

「ここも」

「……外れか」

「秋人、どこに隠した」

 店内を探し初めてからしばらく。目につく場所をくまなく探したが、出てきたものは昔につららと小春がなくした物や隠していた物ばかりであった。

「もそやけどもて、調べとったことまとめてなかったのかも?」

「じいさまならあり得る……」

 秋人なら調べていたことを最後にまとめて提出していても不思議ではないと孫娘の意見が一致する。

「ほんまになんもないな」

 しぐれも紙切れ一枚出てこないことに僅かにイラつき始めていた。

「……さすがにこの場所にはないか」

 最終手段とモルテが領域を使い店内の一角を見るが全く引っ掛からない。


 そんな時であった。

「これは!」

 棚を調べていたしぐれの様子が変わった。

「……そこか」

 そして、領域で見ていたモルテも棚のある部分に何かがあると気づいて近づく。

「どうしたん?」

「もそやけどもてあった?」

「こら、複雑だな……」

 つららと小春が2人の動きに気づいて近づくと、しぐれは難しい表情を浮かべた。

「出来るか?」

「ちびっと調べさせてくれ」

 さんざん調べて今は棚が怪しいと踏み、しぐれは棚を動かすと全体を見渡しては触れていく。

 そして、棚の引き出しも全て抜いてから結論を出した。

「複雑な仕掛けだが、いける」

 そう言って早速仕掛けを解きにかかった。

 引き出しを全て抜かれて仕切りだけが露出している板や橋良を動かしたと思ったら気の棒を抜いたりと複数の作業を行う。

 その間……

「そこ動くん?」

「おもろい」

「ふむ。強行の部屋にあったからな机と似た様なものか」

 後で傍観している3人が珍しいと見て声をだしているが、しぐれは頭にある知識と照らし合わせて作業している為に無視する。

 そして、最後の板を取り外すと下からは紐で結ばれた紙の束が出てきた。

「これか?」

 取り出した紙の束をめくるが、早々に何かを諦めてつららに渡した?

「どうしたの?」

 受け取ったつららも紙の束をめくると表情が強張った。

「何、これ?」

「秋人……」

 紙の束を覗きこんだモルテと小春も表情を強張らせた。

 何しろ、中身は暗号化されていたのだ

「解読する物が必要だが……」

 つららから奪うようにして取るとモルテはそれらしいものがないかとめくる。


 その時、店じまいしたはずの戸が開いた。

「邪魔するぞ」

 散らかった店内に入ってきたのは宗頼であった。それも、息が切れている様子で走って北野だと思われる。

「宗頼はん!?」

「ちょい!店閉めたのに何しに来たのよ!」

「お前に話が……あぁーー!」

 戸を閉めて理由を言おうとした宗頼であったが、瞬間、大声を上げた。

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