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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
3章 店長は死神
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アシュミスト

3章です。章の題名に今更感を感じている……orz


 西大陸内陸部に国を構えるシュミランには五つの都市がある。

 一つ目はシュミランの中心部で国の中枢が存在する首都ランバン。

 二つ目はかつての首都で現在は第二都市の古都クシュランエラ。

 三つ目は鉱石が採れる鉱山が近くにあり工業が盛んな工業都市ギベリアン。

 四つ目は海に隣接する隣国の玄関口及び貿易場として置かれた貿易都市カイシュラ。

 そして五つ目が水路橋と古城と周囲の自然、近代構築により観光を主体として栄えた観光都市アシュミスト。

 この五つをシュミランでは五大都市と呼んでいる。


 この日、五大都市の一つアシュミストは冬にしては珍しく雨が降っていた。

「雨かぁ~」

「ひ~まぁ~」

「憂鬱……」

 葬儀屋フネーラの店内ではディオス、ファズマ、ミクの三人が今日の天気にぼやいていた。

「何で冬に雨なんだ?」

「この時季にめずらしいよね」

「ひまぁ~」

 雨はどうしても気が滅入る。加えて客も来ないと溜め息をつく。


 内陸に存在するアシュミストには雨があまり降らず冬でも雪が降らない。加えて北と西にシュメライット山がそびえていることで雨雲は塞き止められており降水量が少ない。

 そのために昔のアシュミストはシュメライット山から流れる河から水を引き街全体と周囲の畑に水が広がるように水路と水路橋を設けて発展をしていったのである。


「ミク、暇暇言うなら勉強か本読んでろ」

「今日の分は終わったもん」

「だったら本でも読んでろ」

「読みたいのない」

「それじゃ暇って言うよな……」

「うん。ひま~」

「だから言うなって……」

「もういいよ……」

 そうして、もう何度目になるか分からない溜め息を三人一緒に吐いた。


 葬儀屋フネーラにディオスが訪れて一ヶ月半が経とうとしていた。

 その間にディオスの敬語は抜けきりファズマとミクに普通に接するようになっていた。

 まあ、変わったことはそれくらいで後は仕事で遺体を保管したり葬式の打ち合わせや準備をしたり動き回っているだけである。


 三人が雨に滅入っていると後ろから声が響いた。

「だらしないぞ!」

 その声、葬儀屋フネーラの店長であるモルテの声に三人は驚いて背筋を伸ばした。

「て、て、て、店長!?」

「雨の日こそやることがあるであろう!」

 そう言うとモルテは指示を出した。

「ミクは勉強!今日の分をやったからと終わりするな。やることがない時ほどやるものだ」

「うぅ~……」

「ディオスはここの掃除!」

「……はい」

「ファズマは私の手伝いをしろ!」

「はい……」

 三人は突っ込む隙間などない高速の指示に頷くしかしかなかった。

「そういえば店長、シュメライット山は大丈夫でしょうか?」

 ふと、何かを思い出したファズマがモルテに尋ねた。

「整備はされているから問題ないと思うが、今回は厳しいだろう」

 二人の会話を聞いたディオスはシュメライット山が何なのか気になった。

「季節外れの雨ですか?」

「そうだ」

 二人の会話に気になりすぎたディオスはたってもいられずに尋ねた。

「すみません。シュメライット山がどうかしたんですか?」

 ディオスの質問にモルテは難しい表情を、ファズマは心配そうな顔をしていた。

「この雨で死者が出ないかってことを話してたんだ」

 死者と聞いて背中にゾクリと寒気を感じた。一方でどうして雨と死者が絡むのか不思議に思う。

 そんな表情をするディオスの意を感じてモルテが説明をした。

「今のシュメライット山は整備され登るのが随分と楽になっている。だが、渓谷や河の近くはあまり整備されていない。加えてこの雨だ。ここよりもシュメライット山の方が降っている。そうなると氾濫しているはずだ」

 ここまでの説明でディオスは何となく話の意味を察した。

「そんなことを知りつつも近づいて巻き込まれ命を落とす者がいるのだ」

 やっぱりとディオスは肩を落とした。

「そうなると葬儀屋の仕事なのだが……そもそも、水の力というものを甘く見るからそうなるのだ。水は重いものを動かし壊す。危険なものだ」

 水が危険と聞いてディオスは息を飲んだ。雨が降った時はあまり水路に行くなと言われていたがこうゆうことだったのかと理解する。

「ねえねえ師匠ー!」

 モルテの解説に一区切りついたと見てミクが手を上げた。

「水が動かしたり壊したりって言ってたけど、例えばどんなものを動かすの?」

 ミクの質問に気をよくしたモルテがさらに解説を始めた。

「そうだな。例えば上流で……」

 そんな会話を外側から聞きながらディオスはファズマに尋ねた。

「あの……」

「言うな。とりあえず店長が言った通りのことをやっておけ」

「はい」

 そう言ってディオスが掃除道具を取りに行ったのを見届けながらファズマはモルテがやろうと思っていたことを実行し始めた。

(どこか雨漏りしてるな……)

 店の老朽化に不安を抱くのであった。

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