閑話 変わる年月、変わらぬ心
執筆データが消えてしまったことで更新遅くなってすみません。
14章開始です。
全て京言葉です。
あたしが十二才の時、じいさまの突然やったな。
「つらら、新しい家族連れてきたぞ」
「え?」
仕事から帰って来たじいさまの手にはあたしよりも年下の六、七才位の女の子、身なってが汚れとった子やったな。
その女の子があたしを見た瞬間、じいさまの手を握ったまんま体を寄せたのが分かった。
「じいさま、その子どうしたん?」
「ん?仕事帰りに拾っただけだが?」
「そないな猫みたいな話せいでしょ!」
何その可愛い猫見たら飼いたくなったみたいなのは!?何で連れてきたのか詳しく言うてよ!
「いや、これがほんまなんだよな。……口減らし言うたら分かるか?」
「……そう言うこと」
つまり、捨てられたってことな。
今年は不作で農村は冬を越えられへんんやないかって不安が耳に入っとったな。そやし生きる為に子供や年老いた老人を切り捨とった。
じいさまから昔はあったって聞いたことがあるけど、今でもやっとる所があって目の前の口減らしで捨てられた子を見ると怒りが沸いてくる。
じいさまが猫みたいに言うたのには癪そやけども、言わんと遠回しにしたことは……やっぱり癪。
「じいさま、そういうのはあたしに相談してから言うてよ。いきなって言われても心の準備が出来てへんね」
「帰り際に決めたことそやし無理やろ。それに、そう言うってことは構へんってことだろ?」
じいさまが言う通りで言い返す気がないから頷いておこう。
こらあたしの勝手な解釈そやけども、この子捨とった親もほんまは捨とったくなかったんやないかな?
そやし見つけたじいさまは引き取ることにしたと思う。じいさまに見つけてもろたことが運がええのか悪いのかは分かれへんけどね……
「決まりだな。ええか、今日からここがお前はんの家でわしの孫娘のつららが義姉になる。挨拶しな」
そう言うて前に出された女の子はあたしの顔色を伺っとった。
あたしって怖い?て思っとるとちいさな声で語り始めた。
「こ、はるってい、いうの。よろしう、お姉ちゃん……」
それがあたしの義妹となった氷室小春との出会いになったな。
* * *
「妹出来たんだ」
「そうなのよ。むちゃ可愛いんそやし!」
小春が妹になったことを宗頼に教えた。
宗頼はねぎの野村商家の次男で店によく依頼しては運んでもらっとるからその度に顔を合わせることがある。
それに、宗頼とは年も近いし、その、話すことも多かったから気軽に、話せる……
「嬉しそうだな」
「そりゃ嬉しいよ。だって、妹よ妹!下は無理だって思っとったけど出来たら嬉しくて。そりゃ最初はえらいやったけど……」
なんせ、家に来た時は汚れとったからすぐに銭湯行って体洗って、着とるものもあたしが小さかった頃のを着せて、ほんで、ほんで……
「これから色々えらいになるけどね」
氷室葬儀屋の秘密を知ったら小春はどう思うかと今から不安に思うな。あたしは生まれてからここにいたから何とも思わなかったけど。
「えらいになるっていうけど、そろそろそのえらいってのおせてくれへんか?」
「あかん」
「何でだよ?」
「じいさまから止められとるし、知りたいなら嫁いであたしの夫になってよ!」
「なっ!?何でそうなるんだよ!?」
「だって、次男でしょ?お兄はんが店次ぐんそやし、宗頼が嫁いでくれるなら、あたしとしては、嬉しいんそやけどもな……」
自分で言うて恥ずかしい!そやけども、宗頼ならええっていうのはほんまだし、そうなってくれたら……
「あー、ウチそろそろ戻れへんとな。またなー」
ちょっ、白々しい逃げ方するな!
もう、恥ずかしく言うたこっちがさらに恥ずかしくなるではおまへんの阿呆!
「つら姉?」
そこに追い討ちをかけるように小春が小走りで近寄ってきた。
もそやけどもて、聞いとったの今の話し!?恥ずかしいから言わいでくれるかな?
それに、小春はあたしのことをつら姉って言うの。お姉ちゃんって言うてくれへんかな?
「顔、赤いよ?どうしたん?」
「ちょい、色々ね……」
もそやけどもて聞いてなかった?やったら、ええかな?
「もそやけどもて、さいぜんのおにいちゃんすきなん?」
直球過ぎるよ小春!そりゃ好きそやけども……あれ?
「……」
じいさまいつの間にそこにいたの!?顔が怖いんそやけども!?
「つら姉?」
小春、この話しはしまいにしよう。じいさまいる所じゃ怖くて言えへんから。ほんまに。
……でも、どうやって宗頼をあたしの夫にしようかな?
◆
ほんで四年後、じいさまが死んや。
ほんま突然に。いつもいつも突然やったけど、死ぬまで突然で前置きなんてなかった。
「秋人はんらしいな」
「ほんまなんも言わんと逝ってしまって」
じいさまの葬式には死神だけじゃなく、昔のじいさまと桜花で起きた事件を解決しとった元死神の人達が訪れた。
それよりも、じいさまって昔から突然何やする人やったんだな。
「おじいちゃん……」
小春はじいさまの屍の前でずっと泣いとった。
無理ないか。じいさまが拾わなかったらのたれ死んでるか何処か悪い人に捕まっとるか、手を汚して生きていくしかなかったんそやし。
「大丈夫かつらら?」
「大丈夫どすな」
忠信のおやっはんが心配になって声をかけてきた。
「そうか?ほして、繋りは?」
「切ってます。なんぼ身内でもやれへん理由はないどすから」
死神でも死んでしまえば生霊か不死者になってしまう。ここで切らなければじいさまに叱られてしまうな。
「大丈夫だ親父。ウチらが支えて手伝っていくから心配いらん」
「つららは秋人はんから全部叩き込まれとるからな」
「栄一郎はん、佐助はんの言う通りどす。そやし心配せいでください」
栄一郎はんと佐助はんは同じ同業者で頼りになる。困った時は頼ってもええって言うてくれたから心配ない。
やれる。うん、やっていける。
* * *
「なあ、葬式の時に来とったん誰だ?」
「え?」
宗頼が怖い顔して意味分かれへんことを尋ねてきた。
「誰って、沢山来とったから誰って言われても分かれへんけど?」
「話しとったやないか、今まで見たことない人と話しとったやないか!」
「じいさまの知り合い一杯いて話しかけられとったのよ!」
じいさまはどうやら桜花にいる元死神だけじゃなく顔を知られとったの。しかも、ほんまに大陸の人とも顔見知りやったのには驚いたな。
「何で分かれへんんだよ!」
「分かれへんって、どんな人か特徴も言うてへんのに分かるわけへんでしょ!」
何で宗頼が怒るのか分かれへん。
「気づけよ!何で気づかないんだよ!」
「ちょい、何怒ってるのよ宗頼!」
「うるせえ!ほんまのこと言えよつらら!」
「ほんまのことって何よ!」
もう意味分かれへん!ほんで知っとるとか思い出せとか……もう頭に来た!
「阿呆!宗頼の阿呆!もう知れへん!二度と顔見せるな阿呆!」
何聞きたいのか知れへんけど詳しく教えへん人なんか知りませんよ。頭冷やしてこい!
* * *
宗頼を追い出して、部屋で泣いた。
「宗頼の阿呆!阿呆!大阿呆!」
宗頼が何であんなに怒ったのか分かれへんけど、それ以上に信じてもらえなかったことが酷く悲しくて辛い。
「つら姉……」
小春もその場にいたから一連の出来事を知っていて心配になって声をかけてきたけど、気にする暇なんてなかった。
「うあぁぁぁぁぁぁ!」
涙なんて止まれへん。宗頼のいる桜花になんて居たくない!
そういえば、大陸から来たって人がいたはずな。じいさまの話で聞かされとった死神。その人の所にしばらく居ようかな。




