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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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閑話 ホメロンの苦労

少しだけ12章の状況もあります。

 桜花の夜。馬小屋の中でホメロンは周囲を見回した。

(どうやら付けられてもいなければ周辺におかしな気配もありませんね)

 この場が安心であると感じて地面に座り込んだ。

 モルテから急に呼ばれ行き先を告げられた時には長距離移動することになると思っていなかった。だが、事情を聞かされ納得、同時にその目的の為に呼ばれたことが嬉しく思えた。

(昔は常に頼まれていたのでしょう)

 今では異渡り扉で簡単に行来出来る様になってしまった為に出番が少なくなっていたのだが、まだ必要とされていると先祖達に報告する。


(さて、そろそろ休みたいところですが……)

 これから何かが起こるかもしれないから今の内にと思うホメロンだが、馬小屋に入ってからずっと感じられる視線に顔を向けた。

 そこには地面に座り熱い眼差しを向けている雌馬がいた。

 その雌馬はホメロンが見たことで鼻を鳴らした。

『申し訳ありませんがお断りさせてもらいます』

 雌馬が何を言っているのか分かるホメロンは無視と地面に座ると寝る体勢に入った。

 その間も雌馬は自分に気を引かせたいが為にアプローチをかけるがことごとく無視されてこの時は諦めた。


  * * *


 翌朝。起きたホメロンに雌馬のアプローチが再開された。

『ですからお断りすると言っているではありませんか!』

 しつこく口説かれればホメロンでも雌馬がどの様な状態であるのか分かる。

(……疲れる)

 移動していた時よりも雌馬の対処に疲れを感じていると主が現れた。

「よく休めたかホメロン」

『はい。ただ、一つだけ問題が……』

 モルテの登場にホメロンは雌馬に対する苦情を言った。

 この馬小屋にいる住人であれど疲れているであろう客人を常に口説くのはやめてもらいたいという気持ちを込めて。

「確かに、ホメロンにしたら居心地が悪いだろうな。向こうに妻がいるだけでなく子もいるのだからな」

 つい口からとわざとらしくホメロンに妻子がいることを雌馬に教えるが、雌馬は気にしていなかった。

 むしろ、こちらの方が相応しいからとホメロンを奪う気満々でいる。

(何ですかそれは!)

 態度というよりは持ち構えにホメロンは心の中で突っ込んだ。

「かなり惚れられた様だな。襲われない様に気を付けろ」

『その様に仰らないでください!』

「だが、事実だ。こちらのことが終わるまで帰ることが出来ないのだからな」

『それまでここにですか?』

「そうだ。場合によってはホメロンにも動いてもらうことになる。故に、帰ることは許さん」

 最後の言葉は分かるがせめて別々に移すくらいの対処をしてもらいたいと目で助けを乞うホメロンだが、つららがモルテを探しに来たことでこの話しは中断となった。



 それからというもの、隙あれば詰め寄ろうとする雌馬にホメロンは限界を感じた。

(仕方ありませんね)

 こうなれば最終手段とホメロンは壁抜けを決行。

 馬小屋から少し離れ、雌馬の鼻息が聞こえない場所に着くとホメロンは座り込んで寝る体勢に入った。

(これでゆっくり休めますね)

 雌馬がアプローチし続けているが無視してホメロンは寝息を立てた。

 その後、早めに帰って来た小春がホメロンが馬小屋から脱走しているのに気が付き懸命に戻そうとしてあきらめるのだった。



  ◆



 鞄に頼まれていた白神鋼鉄を入れてホメロンは天を駆けた。

『必要なこととは分かりますが馬使いが荒いものです。お使い程度ならまだよろしいのですが……』

 何しろ、つらら達が無事に豆庵堂に逃げ込んだのを見届けてから悪魔を翻弄する為に囮君設置型(フェイク・スタンドタイプ)を都中に設置したり見張りをしたりと移動すること以外を押し付けすぎるのではと愚痴る。

 そんな愚痴を何度も呟いているとまだ碧に色づいている山、そこにいる主を見た。

『あそこですか』

 どうりで都にいなかったわけだと急降下して付近に着地した。

「ホメロンか。例の物は?」

 モルテの方もホメロンが着地したことに気づいて歩み寄ってくる。

 鞍から鞄を取り外したのに合わせてふみが尋ねる。

「それが?」

「そうだ。後は作ってもらうだけ。ホメロンは休んでいろ」

 モルテとふみが平屋の前で一悶着終えたのを見届けてからホメロンは周囲から感じられる気配に警戒を示した。

(ずっと感じるこの気配は……なるほど、先程の男達は此岸人ですか)

 この山がどういった山であるのか理解したホメロンだが心休まることはない。

(邪魔が入らぬよう見張る必要がありますね)

 馬使いが荒いと言いながらも結局は進んでやっていることに気づかず、ホメロンは周囲の見回りを自主的に始めた。



  ◆



「ホメロン乗せてーー!」

 夜のアシュミストの通り、背後からミクが頑張って追って来るをホメロンはずっと感じていた。

(ですから、何故追って来るのですか!)

 こっちは急いでいるのにどうしてこの少女は背に乗りたがるのか不思議で仕方がなく、足を止めて追い払おうとするが、それがまずかった。

「ホメロン捕まえた!」

 止まるわけでもなくそのまま突進する勢いで抱きつかれたことでホメロンはしまったと気づいた。

(話してはいけませんでしたね)

 モルテから空飛ぶだけの馬でいろとキツく言われていたのだが、話す気で止まってしまったことを悔やむ。

「ミクさん、ようやく止まりましたか」

 そこにミクを追いかけてきたレオナルドが追い付いた。

「いけませんよ外に出ては」

「でも~……」

「モルテの馬ならディオスさんに霊剣を届けに来たのでしょうから邪魔をしてはいけません」

 レオナルドに捕まえられホメロンに乗れないことを不満に思うミク。

 ホメロンはこれで一安心と先を急ぐ。

「ねえ、ディオ探してるの?場所知ってる?」

 ミクの鋭い言葉に足を止めた。

 確かにモルテから霊剣をディオスに渡すように言われていたが当の本人は居らずこうして探すことになったのだ。

「あたし知ってるよ。だから乗せてー!」

「ミクさん」

 まだ乗ることを諦めていないミクにレオナルドが呆れる。

(……仕方ありませんね)

 時間短縮でミクを乗せることにしたホメロンは戻ると近くで座る。

「いいの?やったー!」

 ホメロンが乗せてくれることが嬉しくミクはレオナルドの拘束をあっという間に抜けると背に股がった。

「やれやれ。ミクさんだけでは落ちてしまいそうですね」

 こうなっては仕方ないとミクを支える為にレオナルドも股がる。


 少し重いと思いながらもホメロンは2人を乗せて飛ぶ。その際にレオナルドかま驚いた声を出したが大抵の人間は最初に驚くことだからと気にしない。

「あそこだよ」

 ミクが背後から指さす所にディオスがいた。だが、悪魔に襲われかけている。

「まずい!」

(いけませんね!)

 レオナルドが叫んだ時にはホメロンはディオスから悪魔を離さなければ急降下する。

「いっけーホメロン!」

 ミクが攻撃指示を楽しんで出す。それに乗ったわけではないがホメロンの前足が今まさにディオスを襲おうとしていた悪魔を蹴り飛ばした。



  ◆



 桜花に戻るとこちらは激戦と化していた。

『何故これほどまでに!?』

 少ししか離れていなかったのにどうしたら激戦となるのかと驚愕する。

 この状況にモルテと大急ぎで合流したホメロンだが……

「遅いぞ!」

 モルテも状況がよろしくないと知っている為にイラついていた。

「剣は?」

 ここにとホメロンは走るモルテを僅かに通りすぎて鞍につけている剣箱を示す。

 モルテは剣箱を引ったくると自分で持って走る。

「急ぐぞ!」

 その指示にホメロンは先行した。



  ◆



 桜花での一件が落ち着いたことでようやくホメロンに休息が訪れた。

(疲れました)

 何だかんだでモルテの指示に従ったホメロンは疲れが溜まっており地面に座り寝る体勢に入る。

 そんなホメロンに色仕掛けをかける雌馬の鳴き声が聞こえる。

(ですからうるさいです!休ませてください!)

 馬小屋からしつこくアプローチしてくる雌馬にホメロンは本気で怒鳴ろうかと思いながら眠りについた。

 モルテの用事が終わらない限り桜花から離れることが出来ず、苦労は続きそうと思いながら。

13章はこれで終わりです。

後ほど活動報告に裏話を載せます。

次回は2月24日更新になります。

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