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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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墓前に報告

 翌日。

 モルテと桜花の死神達は墓地へ訪れていた。

 墓地へ訪れた理由は悪魔の犠牲となった死神への報告。

「全部終わったぞ」

 1つの墓石を回る度に忠信が一番に口を開く。

 今回の件はあまりにも被害が出すぎた。18人いた桜花の死神は現在では7人。11人もの犠牲を出したこの件は終わっても誉められる所がなく後悔と屈辱しか見当たらない。

「終わってもええ気持ちはせんな」

「ああ。場合によっては全滅もあったな」

 栄一郎と佐助が気持ちを漏らす。

 どれだけ警戒をしようが対策を立てようが決定だに繋がることがなく無意味に犠牲を増やしていったのだ。

「そうや。こらわしの責任だ……」

 忠信の耳に2人の話が入っており、悪魔を倒すまでの流れであり得たことに重々しく口を開いた。

「わしは、こういったことに向いてへんのかもな」

 犠牲を出しすぎたことに桜花をまとめる死神を変えた方がいいのではと思い始めた忠信に幸が鋭い口調で語りかけた。

「何言うてるの!今まであんたが必要以上に危険を考えて警戒して策立とったから危ないことでも誰も欠けなかった。今回は相手が悪かっただけよ!」

「相手が悪かった言うがそれを言い訳にしてええことやないからな!それに、今回は言うが次にその言い訳は出来ないぞ!」

「なら次がないように努力しな!ここで変えたら誰がこの子達を守って引っ張るん?あんたしかおらんでしょ!」

 幸の言葉に忠信は今いる桜花の死神を見た。半分がまだまだ若い分類に入る死神。どうしても教えて引っ張り守らなければならない。そして、この件を教訓にして更に強くしていかなければならない。

 弱気になっている忠信に妻の一撃とも言える平手打ち、はなかったが口調だけで気持ちを変えさせた。

「そうだな」

 ここで乗りきらなければならないと忠信は気持ちを切り替えた。


 花立である竹筒に花を立てて保彦が呟いた。

「あんた殺した奴は死んや。そやし、もう寝てもええで。三輪先生」

 まるで師を慕う弟子が供養の為に今だけはトゲを引っ込めた様に大人しく語りかけた。

「……保彦は三輪祐玄の弟子だったのか」

「ええ。三輪はんは寺子屋の先生やったの。その教え子が保彦なんそやけども、ひょんなことから死神のこと知ってそのまんま弟子になったみたいなのよ」

「慕っていたということか」

 祐玄に対する保彦の姿勢が何となくそれであったのではと感じ取っていたモルテだが、つららの証言により確立された。

「本当なら自分で仇を討ちたかったのだろうな」

「人一倍そうやったはずそやけども、あたし達じゃあの悪魔を倒すことは無理やったよ。保彦も、多分そやけども分かっとるんやないかな?」

「……そうか」

 それならこの話しはしないと打ち切った。

「モルテ、おおきにね」

「何がだ?」

「あたし達を助けてくれて」

 モルテがいてくれたから桜花の死神は全滅を免れたとつららは感謝を口にした。


 最後に訪れた墓には多くの花が手向けられており、どれもごく最近の物で枯れている花はなかった。

「お前は阿呆や。大阿呆だ孝之介……!」

 最後の犠牲となった孝之介の墓の前で栄一郎が気持ちを前に出して怒鳴った。

「何で待つこと出来なかったんや。分からんから慎重になって、乗り切るつもりでいたのによ。行ってしまう奴がどこにいるんだよ……」

 意外にも栄一郎が気持ちを爆発させていることにモルテは驚いていた。

「孝之介はな、栄一郎の競争相手なんだよ。色々やっとったみたいそやし栄一郎としても思うとこあるんだ」

 栄一郎と孝之介の関係を佐助がモルテに教えた。

 恐らく孝之介が死んだ時、栄一郎は全てが終わるまで堪えていたのだろう。それが墓の前で爆発した。

 何故と思い気づけなかった関係をモルテは知り、栄一郎の反応に合致して納得した。

 そんな弟弟子に叱る栄一郎の横に保彦がしゃがんだ。

「……巻き込んどすまんな」

 元々は保彦が孝之介を誘ったから死んだ。原因は自分にあると謝罪を口にして、栄一郎を見た。

「悪かったな」

「いや、保彦を止められなかった孝之介も悪いんや。保彦に恨みを抱いてはないがこれから先のことは考えろ。ほんで、孝之介のことを忘れるな」

「……当たり前や。忘れることなんか出来るか。わしが殺したようなものなんそやしな」

 重たい空気が周囲を漂い始めた。

「ほして、まだ伝えてへんことがあるんではおまへんん?」

 重たくなった空気に切り口を入れるようにふみが栄一郎と保彦に言う。

 一体何かと戸惑う2人だが、すぐに目的を思い出して墓に語りかけた。

「殺した奴は倒したぞ」

 悪魔が倒されたことへの報告をした。


  ◆


 墓を全て回ったことで豆庵堂に戻って来たのは昼過ぎになってからだった。

「さて、モルテはん、この度はおおきにどした。原因を見つけただけでなく全滅も免れた。感謝しても仕切れへん」

「構わん。それに、私はつららから連絡を受けて訪れただけ。やったことはほんの少しだ」

「いやいや、思いっきりやってくれたやないか!」

 手を貸してくれたことに感謝する忠信だが、それほどやっていないと言うモルテにどこがと佐助が突っ込む。

「ほしてだな、こんなこと言うてええのか分かれへんがしばらくモルテはんが持ってきた道具を借りたいんだが……」

「元からそうした約束であっただろう。気づかう必要はない」

 モルテに貸した本人達に聞かず勝手に数日間貸すことが決定しているのに何故今になって気づかうのかと不思議に思う。

「それよりも、これからどうするつもりだ?」

 モルテの鋭い指摘に忠信は考え付いていることを口にした。

「移住する死神を募るつもりどす。流と他の町に住む死神で別の場所行きたい人優先でな」

「人手不足はそれで解消されるが、この件が起こった後だ。困難になると思った方がいい」

「承知の上だ」

 どうやら忠信も一筋縄ではいかないと覚悟を決めているようだ。


「そうか。それならこちらから2つほど頼みがある」

「頼みどすか?」

 モルテからの頼みに忠信が驚く。

「1つは今回の悪魔だが、あれほどの力を桜花だけで手に入れたとは考えられん。他の町から死神がいなくなっている可能性もある。被害を調べてほしい」

 深く考えれば行き着く最悪に全員が表情を強張らせた。

「2つ。死神の剣の行方を調べ見つけてもらいたい」

「剣をどすか?」

「そうだ」

 何故死神の剣を探してほしいのかと意味が分からない。

「モルテ、件は紛失したんじゃ……」

「死神の剣は壊れることがない。だが、ないとなると何者かが持ち出したと考えられる。最悪、悪魔と言うこともある」

「それって……」

「誰でも繋がりを切れる。しかも死神なら堕ちることもない」

「そう言うことだ」

 死神の剣が持つ特性ならあり得ることに重要案件であることが知れる。

「2つの剣について分かることはこちらで記す。頼めるか?」

「分かりました。引き受けましょう」

 今回の件で恩を感じている忠信は頼みを引き入れた。

 悪魔の方は何とかなるが剣の方は桜花の死神だけでは対処仕切れないことが分かるし物が物であるから芳藍の死神も巻き込もうと考える。


「それと、改めて礼を言わせてくれ。救ってくれておおきに」

 忠信はモルテに深く頭を下げた。

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