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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
13章 桜花死神連続変死事件
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追う者、追いかける

「阿呆ぅぅぅぅぅ!!」

 桜花の暗闇の中をつららが叫んで全力逃走する。その後を佐助が追いかける

「阿呆って、何でそうなるんだ!」

「言うて何が悪いのよ!」

 つららが何に起こっているのか分からないと不満をぶつける佐助は時折振り返っては追ってくる悪魔を確認する。

「使え……使えぇぇぇぇ!」

「おっと!」

 追い付いて攻撃を仕掛けてきた悪魔の攻撃を避けた佐助は死神道具である付け紐であっという間に縛り上げると放置して先に走ってしまっているつららを追いかける。

「もそやけどもて、悪魔が追いかけてることか?」

「それ以外に何あるの!」

 どうやら悪魔が追いかけることとなった原因につららは怒っているのだと理解する。

「いや、あれ以外に何あるん?どのみち攻撃仕掛けへんと引けなかったぞ」

 悪魔の気を引き付けるにはあれくらいしなければならなかったと佐助は反省していなければ悪びれてもいない。


 佐助の言い分には一理あった。

 栄一郎と保彦が思っていた以上に悪魔の気を引いてくれたことで目的地までの距離が近くなっていた。

 だが、気を引きすぎたということは同時に目を逸らすこと、離脱がしにくくなっていることも意味している。

 死神なら目的地まで休憩なしに誘導することが出来るが、何らかの理由でそれが出来なくなった場合はどうにかして離脱をして他の死神と交代しなければならない。

 その為には最初に追いかけられていた死神と同じ程の興味を悪魔が抱かなければならない。

 その方法は多種あれど効果的なものはごく一部。その中で佐助が選んだ方法が不意討ちで急所に一撃入れること。しかも、ものすごく手っ取り早く死神が力を使わずとも出来る簡単な方法だ。

 結果、佐助の狙い通りに悪魔は標的をつららと佐助に変え、徐々に悪魔本来の戦い方を思い出して攻撃を仕掛けることとなった。


 付け紐の束縛を力任せで引きちぎった悪魔が力を込めた斬激を3本飛ばした。

 それを気配と目視で確認したつららと佐助は避けながら走り続ける。

「こっちの方がやりやすいな」

「そやしって、もっと穏便に出来なかったん?」

 悪魔本来の戦いかたが死神には慣れているとはいえ、これはあまりにも怒らせ過ぎであるとつららが抗議する。

「このまんまじゃ攻められへんよ!」

「攻めるのは近づかれた時でええだろ」

「それじゃ気づかれる!」

「大丈夫」

「何が大丈夫なのよ!」

「あいつ、頭に血が上っとるからだ」

「信用出来ないよ!」

 2人が言い争っている内に悪魔は徐々に近づいており、近くにいた佐助に力を込めて作った球体をいくつも放った。

「避けろつらら!」

 佐助の言葉につららは慌てて近くの細い通りへと隠れた。直後、球体は通りすぎ、隠れず回避していた佐助が霊剣を悪魔に振るった。

「ちびっとやり過ぎやないか?」

 悪魔の腕と霊剣がぶつかり合い均衡する中で佐助が睨み付ける。

 そこに片腕が空いている悪魔が佐助の首を狙い手を伸ばし、光の矢が肩に突き刺さる。

「ああぁぁぁぁ!!」

 光の矢が深々と突き刺さったことで痛みで悲鳴を上げる悪魔。その怯んだ隙を佐助は見逃さなかった。

 胴体に一線入れてすぐに離脱。つららと合流して走り去る。

「おおきになつらら」

「そやし安心出来ないって言うたのよ!」

 もう少しで絞め殺される所をつららが光槍(ライトニング)の性能を絞りに絞ったことで悪魔に痛手を与えることに成功した。

「安心出来ないって言うけど、元々無理して攻める必要ないんや。死神の剣で仕留める予定なんそやし積極的にする必要ないんだよな」

「そやしって、挑発し過ぎよ!」

 2人の考えは妙に合っていないのだが予定通りに進んでいることが不思議である。



 そんな2人が討論しながら走り去ってしまうのを忠信と幸が細い通りから見届ける。

「何やっとるんだ……」

 悪魔を見つけたという光槍(ライトニング)の光で予定していた交代場所にいた忠信と幸だが、つららと佐助が討論に夢中、もしくは追いかけて来る悪魔にそれどころではなかったのか、2人の存在に気づかず走り去ってしまった。

 その後を悪魔も通りすぎたことで忠信と幸は細い通りから出て、まだ聞こえる討論に呆れ顔を浮かべた。

「どうする?」

「いつまでも逃げ切れるわけやないからな」

 どうしようかと忠信は考え込む。


 忠信と幸が交代する理由は悪魔が構わず力を使うことが目に見えていたからだ。

 構わず力を使われては周囲に被害が出る恐れがあった。そうなればつららと佐助だけでは対処しきれなくなる可能性があったことで生き残っている桜花の死神で経験が長い忠信と幸が相手にする予定だった。

 だが、2人の存在に気づかなかったばかりかそのまま悪魔を引き連れてしまうのはどうかと思ってしまう。


 数秒程考え、忠信は一筆取った。

「仕方ない。わし達は後方で栄一郎と保彦に後を頼む」

 悪魔の様子からいつでも周囲を巻き込んでもおかしくないと考えた忠信は事後処理がいつでも出来るようにと逆に追いかける側となり、悪魔の対処を若い死神達に頼むことにした。

「ええの?」

「あいつらも引き際は考えとるはずや。無茶せんように栄一郎とつららがいる。何とかなるだろ」

 それに、仕留める方法も確立していると、手紙を書き終えると風呂敷袋から鳥が箱に乗っている死神道具を取り出した。

「これを栄一郎に頼むな」

 箱に手紙を入れると死神道具、鳩箱の鳥が羽を羽ばたかせて飛び、真っ直ぐ栄一郎がいるであろう方向へ飛んでいった。

「行くか」

 いつまでも見届けるわけにはいかないと忠信と幸は悪魔の後を追いかけた。

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